PLAY20 非道な戦いと救う力⑥
誰もがその紳士的な声に驚きながら辺りを見回す。
でも……、誰もいない。
そう思っていると、オグトの周りに突然――ブワリと黒い竜巻が発生した。
それを見て、強い風を受けて私達は目を瞑って腕で目を守りながら耐える。
しょーちゃんだけは「うぎゃああああ!」と言いながら受けていたみたいだけど……、それを見る余裕は私にはなかった。
風が止んだと同時に、私は目を守っていたそれをどかすと……、目を見開いてその光景を見た。
驚いたからだ。
なぜって? それは――
オグトとオーヴェンの前に現れた多種族四人がそこにいたのだ。
一人はキョウヤさんと同じような、でも人間よりではない蜥蜴の顔に尻尾。でも背中には大きな鱗の翼を生やしている鎧を着た蜥蜴……ドラゴン、なのかな? 逆立っている赤い髪も相まって、ドラゴン感がすごい。ハーフ? なのかな?
もう一人は女性だけど、金色のふわっとした長髪と目元には深い切り傷が残っている。目を閉じててもロフィーゼさん以上の妖艶な香りを放っているような、スゴイ露出の高い黒いワンピースを着ているララティラさんに負けないようなグラマラスの裸足の女性。背中には黒いカラスのような羽を生やしている……。
すごい……。
もう一人は爬虫類の片目に鉄でできたマスクと眼帯。黒い髪は伸ばしているけど肩まであるそれで、前髪も無造作に伸ばしている。そのせいか、その髪の隙間から見える目はすごく怖い気がする。服装は黒を基準としたカットシャツのような襟が立ったものに皮のズボンにロングブーツ。でも両手がなぜか機械のような両腕で、右手は壊れてるのかない。そんな人がいた。
最後にオグトの前に立った紺色のスーツに白い皮の靴、そして手には白い手袋、持っているのは中世の傘……。どこからどう見ても紳士のような人なのだけど、顔が異常だった。
異常なのかはわからないけど……、顔が豚のような顔だった。
少しだけ逆立っている黄色い髪に、少し伸びた牙。まるで紳士のような豚の人が、私達を見てすっと頭を下げて……。
「お初にお目にかかります。冒険者さん方々に、『12鬼士』そして道は違えど同じ力を持った同胞様方」
……何とも礼儀正しく、豚の人は言って、すっと顔を上げて言った。
「不躾なご挨拶となってしまいました。我々は『六芒星』です」
それを見た私は、ぶるりと震えてしまった。
その豚の人は微笑んでいたのだけど……、その人から、そのオレンジや明るい色は――全く感じられなかったのだ。あったもしゃもしゃは……。
黒。
それだけ。
それだけの色で、埋め尽くされていた……。
「オーク……ッ!? なんで……?」
「……?」
エレンさんが震える声で言った時、私やみんなが『はて?』と言った感じで首を傾げて……。
「おー、く?」
「なにそれ」
「オーガならさっき聞いたんやけど……」
みんながそれを聞いて、互いの顔を見ながらエレンさんの言葉に対して疑問を投げかけていると……、豚の人……、オークなのかな……? その人は顔を上げてにこやかに私達に対して――
「おやおや。どうやらあなた方冒険者の記憶には、私のような種族は記憶されていないようですね。やれやれ仕方がないことですが、黙示録に消された我が先祖が悲しみますね」
手にハンカチを持ちながら、演技交じりに悲しくいうけど、もしゃもしゃは黒のままの豚の人はしょうがないと言わんばかりの表情で「それでは、これから長いお付き合いとなりますが故、自己紹介でも」と言って、自分の胸に手を添えてこう言った。
「我は『六芒星』が一角にして懐刀――豚人族『豚冷帝』天気の魔女とも言われています。ザッドランフェルグル。ザッドと言う愛称で呼ばれておりますので、以後――よろしくお見知りおきを」
その言葉を聞いて、オグトは震える体で「お、おまえ……っ!」と唸っていたけど、その言葉を遮るように、黒い羽根の女性が前に出て、私達を見て……、見えているのかわからないけど、それでも私達を見て軽く会釈をしながら……。
「初めまして。『六芒星』が一角――堕天使にして『血涙天族』血の魔女とも言われています……ラージェンラ、です」
と言って、すっと私の方を見て低く言った気がしたけど、私はそれを見てどうしたのかと疑問に思った時……、大きな声によってそれはかき消されてしまった。
「そしてぇ! 吾輩は『六芒星』が一角! 『六芒星』の攻撃の要にして竜族と蜥蜴族の血を引いた最強の種族! 蜥蜴竜族!『鉄鋼竜王』のガザドラとは、吾輩のことなりぃ!」
なんだか、すごく目立って大きな声で自己紹介をした竜のような、トカゲのような人。それを見た私達は、ぽかんっとしてそれを見ていると……。
「ほれ。お前もなんとか言えぃ」
と、ちらっとガザドラは後ろにいた機械の人を見て言うと……。
「……『六芒星』が一角……、機械人。『憎悪機動兵』憎悪の魔女……。型番N00」
「型番まで言っちまったっ!」
キョウヤさんがそれを聞いて突っ込むと、ガザドラはそれを聞いて、大袈裟に溜息を吐いて――
「そうではないだろうがロゼロよ! 名前まで言わんと行けないだろうがっ!」
「………………」
「無視に徹するとは! ユーモアがないと吾輩のように部下にも信頼が持てんぞっ!」
「その辺にしときなさい」
えっと……、ロゼロの言葉にガザドラは陽気に近付きながらロゼロの背中をバンバン叩いてなんだろう……、励ましていたのかな? わははっと笑いながら言うガザドラと、それを無視しているロゼロの会話を中断させたザッド。
ザッドの言葉に、二人はぴたっと口を閉ざした。すると……。
「――そこまでだ。『六芒星』」
「!」
声がした。
その声がしたのは、マティリーナさんが来た方向で、その方向を見ると……。そこにいたのは赤い鎧の……、槍を持って現れたアルテットミア王だった。
アルテットミア王はザッドを見て、冷たい音色でこう言った。
「……貴様ら、なぜアルテットミアに来た? 観光、ではなさそうだな」
「おやおや。アルテットミアの王にして『不動の盾王』が我々の前に現れるとは、今日は好き日なのでしょうかね……?」
ザッドは手を広げながら感動の声色で言うと、アルテットミア王はその言葉に対し、槍をザッドに突き出して、こう言い放った。
「今すぐ――この町から出て行け」
「っ!? しかしアルテットミア王」
その言葉に驚いたのか、マースさんはアルテットミア王を見て何かを言おうとしたのだけど、近くにいたヘルナイトさんがマースさんの肩を掴んだ。
それを見たマースさんは、ヘルナイトさんが首を横に振ったところを見たこともあって、ぐっと行き場のない感情を、一旦押し殺すように顔を歪めて、手に持っていた剣を下した……。
アルテットミア王はヘルナイトさんを見て、頭を少し下げた後……。ザッド達を見てこう言った。
「今は見逃すと言っただけだ。幸い……、『六芒星』の幹部以外の構成員は全員無傷で降伏した。そして国民の被害はない。建造物の破損は見られるが……、それだけだ。今回は民の被害はない故の私の独断だ。しかし今度民のみんなに手を出すのなら……、私は貴様等を切り捨てる。そのつもりだ」
その言葉に、アキにぃ達はぎくっと顔を引きつらせていたけど……、私はアルテットミア王の話を聞いて……、少しだけ、違和感を覚えた……。
それはザッドもなのだろうか、くすくすと笑いながらこう言った。
「いやはや。そんな慈悲のある言葉と決断を、我等『六芒星』に与えるなど、流石は『共和願望者』のアルテットミア王。どんな王よりも、あなたの方が扱いやすい」
ザッドはくるっと私達に背中を見せた。そしてロゼロの肩を叩いて……。
「ロゼロ。今回は撤退です。そのためにここに来たんですからね。ねぇ――」
と言いながら、ザッドはオグトを一瞥した。
その瞬間……ずあっと来た黒いもしゃもしゃ……。それはまるで……、すべての世界が黒く染まるような、底がない黒……。
それを感じて、私はすとんっと尻餅をついてしまった。怖いあまりに、尻餅をついてしまったのだ。
それを見てアキにぃは屈んで私の肩を掴みながら「は、ハンナっ!?」と慌てて私に聞く。
でも私はその言葉に対して返事すらできない状況だった……。ザッドのもしゃもしゃを見て、感じて……、私はこの時……。思ってしまった。
この人は――違うと。
「オグト。あなたは大きな損害を出しました」
「あぁっ!? 豚の癖にオデに指図するなっ!」
「あなたは二百人しかいない構成員を百十人も失ってしまった幹部の面汚しなのですよ? 少しは我らの悲願のために、そしてボスのために、体を張って償ってくれませんとね……?」
「な、なにを……っ!?」
オグトが震えながら立つと、ザッドはオグトを無視してロゼロを見て、「はい」と言った瞬間、ロゼロは左手の機械の手を掲げると……。
「――『憎しみの異回路』」
と言った瞬間、彼らを覆うように出た黒い竜巻。それに呑まれながら、ザッドは私達を……ううん。アルテットミア王を見て言った。
「それでは、王のご厚意に甘えて、今回は退散します。それでは……。そして」と言って、私を見たザッドは、私を見て、にやりと、黒い笑みで、紳士的にこう言った。
「天族の御嬢さん。次に会ったときまたお話ししましょう……」
そう言って、竜巻が彼らを覆ってすぐにばしゅっと黒い竜巻が散布した時……『六芒星』はそこにいなくなっていた……。
結局だけど、アルテットミアでの戦いは、大きなしこりを残したまま、私達の勝利……? という結果で終わってしまった。
被害は……、建物の小さな破壊だけだった……。
□ □
その後、アルテットミアの復興をすぐに行ったアルテットミアの建築の人達。街の人達もいつものように賑わいを見せていたけど……、殆どの町の人達と、ギルド長と、そしてアルテットミア王、アムスノーム王は、私達を取り囲むようにそこにいた。
私達がいる場所は貿易船が止まっている港で、私達はこれからアクアロイアに向かって海路を通って行くことになった。空路と言う選択もあったのだけど、それは今できないらしい……。
その理由はわからいけど……。
エレンさん達もさっきまでいたのだけど、もうここにはいなかった。なぜならアルテットミア王はあの騒動の後、エレンさん達に言ったのだ。
「今回のような事態がアルテットミアであった。しかし今アルテットミアには有力な戦力がいない。冒険者も皆、駆け出しが多いのも事実だ。どうだろうか……? 虫のいい話かもしれないが……、君達アストラ五人と、トリッキーマジシャンよ……。我が国直属の冒険者……というよりも、専属冒険者となってみないか? やることは冒険者と一緒だが、たまに私直々のクエストが入るだけだ。衣食住の住はこちらで手配しよう」
ということを聞いて、エレンさんはうーんっと腕を組んで考えていたけど、ララティラさんは「それって! 結構な報酬とかはいるんかっ!?」と聞いて、ダンさんもそれを聞いて「強いやつとの戦闘とかあるのかっ!?」と聞いて、アルテットミア王はそんな二人の威圧に負けかけていたけど……「あ、ああ」と小さく言うと、二人はエレンさんに向かってずずいっと顔を近付けながら……。
「「やろう! というかやらないといけない! OKだそうっ!」」と詰め寄っていたけど、エレンさんはそれを聞いて手でガードしながら慌てて「だぁー! 待て待て!」と言い、モナさんとシャイナさんを指さしてこう言った。
「それだと、入っていないモナちゃんとシャイナちゃんを巻き込むことになるんだぞっ? 俺は二人の意見を聞きたいっ!」
そう言ってモナさん達を見るエレンさん。ララティラさんとダンさんは不安な顔をして二人を見ていたけど……。モナさんは頷きながら――
「私はアストラに入ろうと思っています」と言った。はっきりと。それを聞いて、私はお友達のことについてどうするのかと聞くと……。
えっと、その件に関して言えば……、最悪の結果だったらしく、モナさんは事実上、一人となってしまったらしい。どこでその話を聞いたのかは聞かなかったけど、モナさんはアルテットミアに来てから、その決意を固めていたらしい……。
それを聞いて、シャイナさんはうーんっと考えて……。
「まぁ、そろそろソロも飽きてきたし、そっちの方が報酬はが弾むなら……、あたしも入ってもいいよ。なんだか楽しそうだし、ね?」と言うと、シャイナさんの背中から出てきた牧師様はハイテンションで『イエスッ! ミーもそう思いマス!』とウキウキしながらそう言っていた。
それを聞いて、エレンさんは「えぇ……?」と、驚きながら言って、トリッキーマジシャンさんを見ると……。
「アルテットミア王のお願いでしたら……! まぁ、別に、なってあげなくもないですがねっ?」
「ツンデレかよ! 古っ!」
そっぽを向いて言うトリッキーマジシャンさん。それを見たキョウヤさんの突込みに、私はぎょっとしてしまった。しょーちゃんはうんうん頷いていたけど……。
ツンデレって……、昔流行っていたみたいだけど……。なんだっけ?
あ、そしてその続きとして、エレンさんはそれを聞いて、結果的に言うとしぶしぶ承諾した。なので今ここにはエレンさん達はいない。
今いるのは、私達としょーちゃん達だけ。
アルテットミア王は私を見て言った。
「浄化の旅をしている身でありながら、我らの国を救ってくれて感謝する」
そう言って頭を下げたアルテットミア王。それを見て私はわたわたしながら、「えっと、頭を上げてください……っ! 私はそんな」と言った時、アルテットミア王は頭を上げて、私を見て言った。
「しかし、構成員は皆無傷で、そして私が来たと同時に、頭を下げて一斉に『降伏します』と言った。それは、あの人食いの鬼のような非道な戦いで傷つけられたから、怖くなって降伏したのではない。助からない、殺されそうになった時、君のような癒しの力によって、救われ――そして感謝として、反省として降伏した。これは、普通の戦争ならあってはならないことだが……、私はその力の使い方……、憧れてしまう」
その救う力が。そう言ったアルテットミア王に、私はふと、疑問を投げかけた。
「あの……、アルテットミア王はなぜあそこで逃がしたんですか?」
「ん? あぁ……、やはり冒険者としては、倒した方がよかったのかな?」
「えっと……、違います……。アルテットミア王からは、その……、ピンクの……ちがう……っ。えっと、『六芒星』のことが」
と言った瞬間、そっと私の唇に添えられた人差し指。
それを見て、アキにぃとキョウヤさんだったけど、アルテットミア王はその添えられた指を、自分の口元に添えて、しぃーっと言う動作をして、こう言った。
「みなまでは言うな」と言って、続けてこう続けた。
「アルテットミアの街を見たか? この町は多種族や人間など、色んな種族が住めるようにしている。ルールはたった一つ。簡単に言うと仲良くしようというものでな。私は人間とは違うが、それでも私は色んな種族が分かり合えることを信じている。考えが違うだけで、みんな分かり合える心を持っている」
アルテットミア王はすっと甲冑を持って、流れるようにその甲冑を取ろうとしている。
そして、取りながらアルテットミア王は言った。
「私は実現したいのだ。異種と言う差別のない。とある異国のような、多種族が手を取り合って、平和な世界を作り上げる世界を、作り上げたい。それが。私の願いだ。悲願でもある」
ふわっと。取れた拍子に出てきた金髪の長髪に、長い耳。そして碧眼の目に、ふわっとした唇……。
その顔を見た瞬間、私達は、しょーちゃん達は、ぎょっとして凝視してしまった。
それを見ていたヘルナイトさんとデュランさんは、あっと思い出したかのように、声を出した。
それを聞いても、アルテットミア王はこう言った。
「私は諦めない。君達が見せてくれた――手を取り合うその姿を、これからの未来のために。私は努力する。争いのない、多種族のみんなと楽しく暮らせる世界を――」
アルテットミア王は言い終わると同時に、私達はぽかんっとしてしまった。でも、しょーちゃんは……。
「うっそだろ! 絶世の美女っっ!!」と、大声で張り裂けるような声を上げて驚いていた。
「む? あぁ、顔を見せたのは初めてか?」
アルテットミア王は頬に手を添えて、くすっと微笑む。
そう、アルテットミア王が女であることに、私達は絶句して驚いてしまったのだ。顔が隠れているせいでわからなかったけど……、声が高かったのは、そのせいなのか……。
というか、女だということ自体わからなかった……。
「なんじゃ? まだその夢物語を見ておったのか? 無理じゃて。ったく」
「いや、そのように諦めては始まらない。それにまだ私の目標は完遂されていませんからね」
「なんじゃその熱血は……?」
その言葉を聞いて、アルテットミア王から感じたピンクのもしゃもしゃがなんなのかということが分かった私は、ぽかんっとしていたけど、くすっと微笑んで、私はアルテットミア王に言った。
控えめに、微笑んで言った。
「――その願い。叶うといいですね」
私も、そのような世界の方が好きだから……。
その言葉に、アルテットミア王は頷いて「ああ」と言った。
「そろそろ出航します!」
「お?」
大きな船から顔を出す船長さんの声が聞こえ、キョウヤさんは上を見上げて――
「そろそろ行こうぜ」と言って、先に船に乗ってしまった。それを見て、アキにぃも船に向かって行き、二人はアルテットミア王に頭を下げながらお礼を述べて行った。それを見て、アルテットミア王は頷く。
私も頭を下げて船に乗って、ヘルナイトさんも頭を下げて行こうとした時……。
「ヘルナイトよ」とデュランさんが止めた。
ヘルナイトさんが足を止めてデュランさんを見る。私も見ると……、デュランさんはヘルナイトさんに向かって――
「お前、覚えているんだろう? サリアフィア様のことを」
それを聞いた私は、ちくりと、心に張りが突き刺さったかのように痛み出した。胸の辺りを手で押さえても、まだ痛みが引かない。そんな中ヘルナイトさんは頷いて「ああ」と言うと、デュランさんは私を一瞥し、そして、ヘルナイトさんを見て……。
「なら、今度はヘマをするな! 我らはそのせいでこうなってしまったんだ! ちゃんと責任をとれ! サリアフィア様を一刻も、助け出すためにも!」
その言葉に、ヘルナイトさんは一旦言葉を止めて……、そして凛とした声で。
「――ああ、今度こそ、浄化する。あのお方のために」
それだけ言って、前に足を進めて、私の背に手を添えながら船へと向かう。
私が乗ったと同時に……。
「錨を上げろぉ! 帆を下ろせぇ!」と船長の声を合図に、大きな帆が下りて、ばふんっと風に当たって膨らむ。それを見ていると、船が動いたと同時に、下から――
「「「「ありがとぉ!」」」」
「「「「ありがとうございますぅ!」」」」
「「「「旅のご無事を祈っていますぅー!」」」」
「「「「!」」」」
大きな声がしたからいくつも聞こえた。私は船からその光景を見るために覗くと、そこには私達が乗っている船に向かって笑顔で手を振っているアルテットミアの国の人達。兵士の皆さんも来ていて、私達を出迎えていた。
それを見たアキにぃは「照れる」と言って、そっぽを向いていたけど、キョウヤさんは笑顔で手を振って「おうよ!」と言って手を振っていた。ヘルナイトさんも手を振っていた。私はそれを見て、手を上げて……、声を張り上げて……。
「――行って、来ますっ」
――こうして、私達は一週間かけて次の目的地、アクアロイアに向かう。
次の『八神』リヴァイアサンを浄化するために。
◆ ◆
「いやー、はなっぺ行っちまったな」
「っていうか、なんでショーマここにいるの? 探しなんだけど」
「うぐ」
ハンナ達を笑顔で見送ったショーマとツグミ。
ショーマはあっけからんとしたゆるい笑顔で見送っていたが、隣にいたツグミはそれよりもと言う感じで詰め寄ってきた。ショーマはそれを聞いて唸ったが、ずんずんと近付いて来る首なし人馬のデュランが来て……。
「まったく……、 なぜ我がこの二人のお守りのようなことを……」と、腕を組みながらぶつぶつと言っていると……。
「おや、ショーマ様と言うのですね?」
「「?」」
「あ」
ショーマとツグミは何も考え素に振り向いた。そこにいた人物を見てデュランは今しがた思い出したことに顔を引き攣らせていた……。
目の前の男――マースクルーヴは黒い笑みでこう言う。
「少々、お時間をいただけますかな? 私が勤めているギルドで」
……これから話すことは……、ショーマ達と、もう一人のプレイヤーの物語……。