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PLAY19 アルテットミア③

「私達魔王族は種族が十二もあるんです。エルフやハイエルフ、ダークエルフと言う小分けされたものが十二もあると思ってください。伝説で聞きましたよね? その十二の種族で最も強いものを、天族を守る守護の者として選ばせる。それが『12鬼士』です。極端な力を有している私達ですが……、人間と交わるとその姿を隠すように血だけを残します。体は人間ですけど、魔王族の血も交じっている時……、その判別方法として、目を見るとわかるという説があるんです。私達の魔力は目に集まる特色がある。そしてその眼の印で何の魔王族なのかを識別するのです。あと顔を見せないのは魔王族の風習と言うものです。顔を見せる行為は違法にとられてしまうのですよ」


「あーなるほど……。だからか……。納得。そして確かに目が異様だったな……」


 そう言って思い出しながらアキにぃが言うと、アルテットミア王はそれに続くようにこう言った。


「さっきのモナの目は、天魔魔王族の目だった。あのマークはまさしく天魔の印だった」

「私はキクリと同じ魔王族なのかー……」


 そう言いながらモナさんは自分の目元を見ていると、アルテットミア王にふとした疑問を投げかけた。


「あの……、元に戻ったのはいいですけど……、これってもしかして、外すと……」

「ああ、元の魔王族の目に戻る。『封魔石』は目覚めていない時の人間の力に戻すことができるが、それをとると魔王族の力になり、潜在能力が格段に上がる。モルグも格段に上がる」

「よくあるパワーアップのようなそれだな……」


 エレンさんが言うとモナさんはそれを聞いて「ふんふん」と言いながら頷いて、そして自分の手を見ていた。


 するとモナさんは唐突に口を開いて……。


「使い勝手が悪そうだけど……、大丈夫、なんですね? 今は」

「……そうだ。その力の使い方は、自分で決めるべきだ」


 アルテットミア王が言うと、モナさんは「はい」と静かに頷いた。


 それを見て私は疑問に思った。


 モナさんの雰囲気が、変わっている気がしたからだ。


 前に会った時は明るさで何かを隠しているようなそれだったのに、今ではそれがない。むしろ……、これがモナさんなんだと、そう思ってしまった。


 するとそれを見ていたアムスノーム国王は……。


「これこれ。老王を無視して話を進めるんじゃないぞ。青二才」

「!」


 まるで嫌味のように言った。


 それを聞いてアルテットミア王ははっとしてアムスノーム国王の方を振り向いて……、申し訳なさそうに「すまない」と頭を下げた。


 ううむ。こうしてみると、本当にアルテットミア王が年下なのかな……?


 そう思って椅子に向かって戻るアルテットミア王を見ながら思った。


 アルテットミア王はすっと椅子の前に立って、私達を見て、そしてアムスノーム国王を見て聞いた。


「アムスノーム国王よ。うぬが言いたいことはわかっている。風の噂で聞いた。アクアロイアの手配はすでに済ませている」

「ふん……。言わなくてもわかっておったか」


 ああ。そうアルテットミア王は頷き――


「そこにいる天族の少女と、アズール最強の存在にして、『12鬼士』最強の鬼士。ヘルナイトが、『八神』の二体の『火のサラマンダー』と『雷のライジン』を浄化した。アルテットミアの民に代わり、私から礼をさせてくれ」


 それを聞いてエレンさん達は驚いて私を見た。シャイナさんはそれ以上に驚いて、私を見ている……。


 私はその視線に驚きながらも、みんなを見るだけだった。


 アルテットミア王は私を見て、じいやさんを見て手で何か合図をした。


 それを見て、じいやさんは『シュバッ!』と言う音を出しながら素早く動いて、また小さいクッションに置かれた何かを持ってきた。


「あのおっさん……、どんな体してんだ……?」


 キョウヤさんはそれを見て、汗をタラリと流しながら言うと、アルテットミア王はそのクッションを手に取るとそのままスタスタと私に近付いて、流れるようにすっと屈んで私にそれを見せた。


 そのクッションに乗っていたのは……、黒い刀身と黒い柄。透明な鞘に収まった短剣があった。


「これは……?」


 私はそれを指さして聞くと、アルテットミア王は言った。


「『ボルツ・ナイフ』。異国で言うカーボナードと言う素材で作られた教硬度と切れ味を持つナイフだ。使ってくれ」


 私はそれを見て、誰も使える所属の人、いないのだけど、と思ったけど、受け取らないのも失礼と思って、それをそっと受け取った。


「ありがとう……、ございます」と、お礼も言って。


 それを聞いて、アルテットミア王はふっと笑った気がした。


「アルテットミア王」


 アムスノーム国王はアルテットミア王に向かって呼んだ。


 アルテットミア王は「どうしたんだ?」とアムスノーム国王を見て聞くと……、アムスノーム国王は私達を見て言った。


「武神卿達の要件である、アクアロイアへの手配は整った。そして魔王族の女の件も終わった。あとはギルド長と王同士で話がしたい。お前さん方はもう用済みじゃ。アルテットミアの観光なりなんなり、好きにせぃ」



 □     □



「結局! あたしやっぱり必要なかった気がする!」


 そう怒りながら、シャイナさんはむすっとした表情でそう言った。


 今現在、私達はアルテットミアの城の前で話をしている。お城から出た瞬間、シャイナさんは段々っと地団駄を踏みながら最初の言葉を怒鳴ったのである。


 それを聞いていたモナさんは、どうどうと宥めながら……。


「でも、私はいてくれて助かったよ。正直あれは一人だと怖かったし……、ダンゲルさんはそれを想定して、シャイナちゃんも連れて行こうとしたんだよ」と言った。


 それを聞いていたアキにぃは、腕を組んで、小さく……。


「……絶対に違う」と言ったことは……、みんなに言わないでおこう……。


「というか、今まで聞きたいと思っていたんだけど……」


 キョウヤさんが腕を組んで、シャイナさんを見て、エレンさんに向かって聞いた。


「なんでシャイナがエストゥガに?」

「え? 知り合いなのか?」

「え?」

「え?」

「「あ」」


 そう言えば私達はシャイナさんとの経緯を話していない……。エレンさんは驚きながら呆けた声を出して、キョウヤさんも呆けた声を出して、一旦考えて、思い出して……。


 トリッキーマジシャンさんが呆れるような溜息を出すような雰囲気を作ってしまった。


 それから、私達はシャイナさんと出会ったことを話した。


 エレンさんたちからも、シャイナさんのことを聞いて、そして昨日エストゥガであったことを聞いて、私はモナさんに慌てて聞いた……。


「だ、大丈夫だったんですか……っ?」

「まぁ、えっと、大丈夫だったけど……。まぁ。色々あったのですよ……たはは」


 と、モナさんは明後日の方向を向きながら言った。


 それを聞いて、アキにぃはうーんっと顎に手を当てて――


「あのさ、その人はスキルを使っていた。けど……、なんだが違和感が……」

「?」


 というと、ララティラさんがそれを聞いて首を傾げていた。


 それを聞いてか、モナさんはシャイナさんに向かって申し訳なさそうにしてこう言った。


「なんか巻き込んでごめんね……」

「いいけどさ……、ここまで来たんだ。せっかくだしここで」


 と言った時だった。



 ピンポーン!



「「「!」」」

「「「「「!」」」」」


 びくっと体が強張ってしまった。


 そして音がした右手首を上げて、その手首についたバングルを見る。


 久し振りのバングルのCALL画面……。


 今まで忘れかけているけど……、ここはゲームの世界なんだ……。異世界ではない。ただのゲームの世界……。


 それを忘れそうなくらい、この世界はリアルで、いろんな人たちがいろんな人生を持っているように見える。というか、生きているようにしか見えないのだ……。でも、このバングル音がそれを忘れさせた。


 嫌なくらいに……。


 私はちらりとヘルナイトさん達を見た。


 ヘルナイトさんはそれを見て……、首を傾げていた。


 さっきの音が聞こえていないかのように、トリッキーマジシャンさんと一緒に私達を見ていたのだ。


 私はバングルを見るけど、ここでヘルナイトさんにこのことが知られたら……と思ったとき……。


「あ、ちょっとごめん」


 エレンさんが私達の前に出て、ヘルナイトさん達を見てこう言った。


「ちょっと話し合いたいことがあってな……、悪いんだけどちょっと……離れてほしいんだ」


 冒険者なりの秘匿的なあれで。


 とエレンさんは困った笑みを浮かべて言うと、トリッキーマジシャンさんはそれを聞いて「はぁ?」と、素っ頓狂な声を上げて、エレンさんに詰め寄りながらこう言った。


「何言ってんですか? あなたそれがこの『12鬼士』である私に向かって言うセリフですか? あなたはこの私を誰だと」

「トリッキーマジシャン」


 ヘルナイトさんはトリッキーマジシャンさんのか肩を掴んで、宥めるように言った。


「これはきっと、異国の報告か何かだろう。私達アズールの者にとってすれば……、関係ないことだ。とやかく話に割り込んでしまっては……、こちらのメンツというものが立たないだろう」

「う、ぐぅ……」


 トリッキーマジシャンさんはそれを聞いて、ぐっと仮面越しでうなりながら、舌打ちをして――


「早めに済ませてくださいよ」と言って、そっぽを向いてしまった。


 それを見てエレンさんは「すまないな」と頭を下げる。


 それを見てヘルナイトさんは小さくエレンさんに耳打ちをして何かを言っていた。それを聞いてふむふむと頷いて、そしてすぐに私達のところにも戻ってきた。


「何話してたん?」と、ララティラさんが聞くと、エレンさんはこう言った。ニヤついた笑みで――


「トリッキーマジシャンはさびしんぼってことを聞いただけだ」

「…………?」


 エレンさんの言葉に首を傾げた私。どういうことなのだろうと思いながら……。


 そしてようやく、私達はバングルのCALLボタンを押した。


 すると……。



『BOOOOOOOOOOOOOOOOOッッッ!』



 突然――バングルから聞こえた大音量のブーイング。


 それを聞いて、私はびくっと肩を震わせた。みんな耳を塞いだり、ダンさんは「うるせぇ!」と唸ったぐらい、うるさかった。


 辺りを見ると、ヘルナイトさんとトリッキーマジシャンさんは聞こえていないかのように辺りを見回していた。


 ほ、本当に聞こえていないんだ……。 


 そう私は驚いてみていると……、バングルのブーイングは突然聞こえなくなった。


 私はバングルを見る。


 みんながバングルを見た時……、そこに写っていたのは……。


『ヘイボーイアンドガール! アタシのこと覚えているっ!? 監視AIのマイリィだよーん! アハハ!』


 私はその姿を見て、スポットライトに当たった監視AIマイリィを見て……、私は無意識に唇を噤んだ……。


 みんなが緊張した顔でそれを見ている。ダンさんは苛立った音色で「なんだよっ! お前かよ!」と、状況を呑んでいないのか、場違いなことを言っていたけど、マイリィの登場を機に、その表情に初めて怒りが見えた。


 マイリィは目元のカードを笑顔のそれにして、彼女は言った。


『みなさん順調にゲームクリアしようと頑張っているね! お姉さんは嬉しいし、今ティーブレイク中のレセお兄ちゃんも褒めてたよー!』

「ティーブレイクって……、なにしとんや」


 ララティラさんがそう毒を吐くと、マイリィはくすくすとしながら続ける。


『みんなこのゲームの世界を謳歌してて、あたしも嬉しいし、こう言うのって……、異世界転生って感じで、なんだかあたしゃ、わっくわっくすんぞ! 的なそんな感じだよねっ!? ねぇ! あはは! なんかテンションあがってくるよねー!」

「それ以上は何かに引っ掻かるからやめてくれ……」


 そうエレンさんが突っ込むと、マイリィはくるっと目元のカードを変えた。


 その眼は、黒い白目に赤い瞳孔が見えている狂気のそれで、彼女はさっきまでのテンションとは違った、低くて怒りを込めた音色のそれで、画面の外にいる私達を見るようにしてこう言った。



「でもね……。やっていいことと悪いことがあります」



 ぞっとする音色。


 それを聞いて、私はぐっと胸の位置に手を当てて、恐怖を紛らわそうとした時、マイリィはぐきんっと首が折れるような音が出そうな首の曲げ方をして、私達に向かってこう言った。


「これ以上皆さんが変な行動をとらないように……、追加ルールを設けました」

「追加……、ルール……?」


 アキにぃがそれを聞いて、何をするんだという雰囲気で言うと、マイリィはそれでさえも見透かしているかのようにこう言った。


「実はですね。アルテットミアのアムスノームと言うところで、大きなテロがありました。それはテロっていうか……、大馬鹿なことをしたあれです。はい」

「!」


 私はそれを聞いて、エレンさん達も私達を見て、驚いた顔をして、エレンさんは私達に向かって声を荒げて――


「アムスノームって……、まさかっ!」


 その言葉に、私達は声を発さなかった。それを肯定とみなして、エレンさん達は青ざめて私達を見ていたけど……、マイリィが「それで」という声を聞いてみんながバングルに目を移すと……。マイリィは苛立った音色で……。


『実をいうとですね。あたし達は、このゲームではあんまりルールとか設けないようにしているんです。そうでもしたらつまらないから作らないようにしているんです。でも、アムスノームの件は異常でした。ゆえにここで、ルールを設けようと思った次第です。あ。なお、この放送は『八神』が倒されたと次の日に放送しますので』


 マイリィはどこからか出したホワイトボードを、バンッと叩いた。


 それと同時に、衝撃でグルンと回ったホワイトボード。裏面が表に切り替わったと同時に、私達はそのホワイトボードに書かれた内容を見て驚いてしまった。


 そこに書かれていたのは……。


『ルールはたった一つです。それは『NPCの殺害したものは強制退場』これを反した場合は、強制的にバングルを破壊します』


 それを聞いていたシャイナさんは、青ざめながらそれを聞いて……。


「マジか……」と言葉を零した。


 マイリィは続ける。


『NPCの殺害。いうなれば一般市民(ピーポウ)の殺害を意味します。これをしたものは即退場させます。現実でもある殺人はNGと言うことです。そしてRCで目を覚ました場合……、生きることは苦痛と思えるような耐え難い苦痛を味あわせる次第です。要は生き地獄を味あわせるってことです。なお、ENPCの殺害、そしてPKはノーカンです。従来のゲーム通り、倒してもそれは魔物を倒したということなので、カウントしません。そしてプレイヤー同士ならば異常ではない限り見るだけに留めておきます。心置きなく戦っちゃってくださいな』


 ENPCの殺害はなし……。


 それを聞いた私は、二重の不安に襲われた……。


 それは……。


『というわけで、みなさん!』と、くるっと目元を明るい笑みのそれに変えたマイリィは、声色も明るいそれに変えて私達に向かって、その笑顔を向けてこう言った。


『今回発足されたルールは、今日から始まるので、憂さ晴らしにイッパンピーポウを殺すとか考えないでねっ! それじゃ、より良いゲームライフを! ばっはは~いっ!』


 と、手を振りながら勢いよくぶつんっと切れた画面。


 バングルを見ていた私達は……、恐る恐る互いの顔を見回せた。


 みんな青ざめている。


 私はきっとそれ以上に青ざめていただろう……。


 すると……。


「終わったのか?」

「なんだか顔色が悪いですね。どうかしたんですか?」


 ヘルナイトさんとトリッキーマジシャンさんが来て、私達の顔を見て心配してくれた。


 しかし私はそれを聞いても不安は取り除けなくて、ヘルナイトさんを不安げに見上げてしまった。


 ヘルナイトさんはただ私の顔を見て、「どうした?」と言っていたけど……、安心する凛とした声だったけどそれだけでは足りなかった……。


 ENPCの殺害はいい。


 つまり……。


 ()()()()()()()()12()()()()()()()()()


 ヘルナイトさんがいないと、()()()()()()()


 ()()()……()()()()()()()()……。


 それもあるけど……、私は思わずヘルナイトさんの手を握ってしまった。


 ヘルナイトさんは驚いて私を見降ろしていたけど私は何も言えず、ただそのぬくもりを感じていた……。


 殺害。


 それは殺される。いなくなる。


 ヘルナイトさんが殺される。いなくなることに……、私は……。


 ()()()()()()()()()()()……。


 そんな私を見降ろしてヘルナイトさんはそっと私の頭に手を乗せて、ゆるゆると撫でていた。


 その時だった……。突然それは起きたのだ。




()()()()()()()()()!!」




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