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PLAY18 アストラと言うチーム⑤

 デスペンド。


 彼はゴーレスと一緒にいたシーフゥーであるが、泥炭窟(でいたんくつ)の出来事の所為で精神的に崩壊していた。


 彼の他にも数名……、精神的に壊れていた。


 ()()()()()があったのだ。壊れない方がおかしいのだ。


 その元凶は現在も行方不明であるが、その元凶を探すこともろくにできない壊れ方であった。


 モナはそのゴーレス達に励ましの言葉をかけてきた。


 その甲斐もあってか、それともハンナの言葉もあってなのか……、ゴーレス含めて数名が復帰した。


 簡単に復帰できたなと思う人もいるだろう。


 そうそう簡単に復帰などできないのが普通だろうと誰もが思うであろう。


 しかし、人の言葉とは恐ろしいもの。


 言葉には魂が込められている。そして言葉と言うものには魔法のような未知の何かが込められている。現代の科学では解明できない魔法と言った方がいいのかもしれない。


 その言葉通り、言葉一つで長く考えてしまうこともある。逆に言葉一つで人は変わることができる。ゴーレスもその一人で、言葉を放った人物――モナとハンナのお陰で彼はここまで回復することが、前に進むことができたのだ。


 それなのかはわからないが、最初に復帰したゴーレスはエストゥガから離れ、最初にいたギルドで細々と低クエストをこなしている。


 他にもぞろぞろとエストゥガを離れていく人もいたが……、ただ一人だけ復帰できずにいた人がいた。


 それが――デスペンドである。


「なんでデスペンドさんが……っ!?」


 モナは倒れている鉱石族(ドワーフ)の中心に立っているデスペンドともう一人の男を見て、驚いた表情と声色で言った。彼女の内部の感情は混乱の大嵐だ。


 何が一体どうなっている? そう思いながら聞くと……。


 デスペンドは、ギョロ目のそれでモナを捉えて、彼は言った。


「あぁ? ケケケ。何言ってんの? それはこっちのセリフだぜ? あの時サラマンダーの討伐に向かわなかった弱虫一号ちゃぁん」

「っ!?」


 その言葉を聞き、モナは急上昇した感情を表に出した。


 顔をカァッと赤くし、目を見開いて、彼女は「何言っているのっ? こっちの質問に」と言った瞬間だった。


 突然だった。


 シャイナはモナの前に出て、鎌をまるで盾のように前に出す。


 出した瞬間。


 ギィイインッ!


「!?」


 突然来た金属音。それはシャイナの鎌の腹とデスペンドが持っていた短剣が当たって出た音であり……、それは、不意打ちと言う名の――戦闘開始の合図だった。


 ぎりぎりと金属同士がかち合う中、シャイナは狂気の笑みで「ケケケケッ!」と笑いながら、どんどん押す力を入れて、ぐんぐん前に進もうとしているデスペンドを見て、何とか踏ん張って止めながら、彼女は聞いた。


 ヒールのところに溜まった土の山が、その現状を物語っている。


「あ、あんた! いきなり不意打ちとか失礼じゃないのっ!?」

「何言ってんだ? 俺は俺の好きなように生き、好きなように戦っては壊す! それが俺の生き方! もうあんな風になるくらいなら、俺の好きなようにして生き残ってやる!」

「はぁ!?」


 意味わかんない! そうシャイナは困惑しながら言って、無理やり鎌を前に押し出す。


「――うらぁ!」という掛け声と共に。


 しかしデスペンドはとんとんっとウサギのように後ろに飛び跳ねながら「ケケケ!」と笑い、彼はぐてんっと首を垂らした。すると、デスペンドは顔を上げながら、言った。


「いいのかなぁ? 俺は、()()()()()だ」


 そう言って、デスペンドは両手に持っている得物を掲げた。


 それを見て、シャイナははっとして、自分の手を見て愕然とした。


「うそ……っ!?」


 手に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


 彼の右手には血が付いたナイフと、左手にはシャイナが持っていた鎌。


 そう。彼はシーフゥー。


 ()()なのだ。


「盗賊の本質は……、盗むと素早い動き。俺はその盗むことに特化したスキルを持っている! スキル『窃盗(ザフト)』! 触れたものをすべて俺の手元に納めるっていう画期的なスキルだ」


「っ!」


 ――まずいっ! 武器を取られたら、()()()()()は丸腰っ!


 そうシャイナはたっと後ろに跳びながら後退して、何かないかと思いながら辺りを見回す。


 しかし、ここは鉱山、彼女が使える鎌はない。


 ここにあるものと言えば……、鉱石族(ドワーフ)しか使えない重くて大振りでしか使えない……、トンカチや大槌、そして石の剣しかない。


 つまり……。


 丸腰なのだ。


 ()()()()


 デスペンドはその両手に抱えた鎌とナイフを持って、ダッと姿勢を低くして、独特なギョロ目でシャイナを捉えながら駆け出す。


「ヒャハハハハッ! 丸腰でどう戦うんだぁ!?」

 無理あるんじゃね!? そうデスペンドは哄笑しながら駆け出す。


 それを見て、シャイナは――


 ――しゃーないっ!


「『無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』ッ!」


 背中から出る黒い何か。それは形を形成して一人の異形の牧師を出す。


『YEARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!』


 何とも耳障りなハイテンションの声を上げて、手に持っていた棺の中から己の武器の一部を出す。それを、背中に差していた十字架に組み込んでいき、一つの武器を作り上げる。


 それは、円状の刃。


 それを手に持った『無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』に、シャイナは見上げて言った。


「注意を引き付けて! あたしの武器を取り返したらあれ、やるよ!」

『ラジャ! デェス!』

「作戦内容が丸聞こえですけどねええええええええっっ!」


 駆け出して、デスペンドはシャイナから奪った鎌を左手で器用に振り回す。ぶんぶんっと、それを片手で回しながらそれを横に薙ぐように、時計回りの軸で一気に振るう!


 が。


 がぃぃんっと、それを難なく自分の得物で受け止めた『無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』。


 それを見て、デスペンドはもう片方の手に持っていたナイフを、一旦離してから逆手に持って、それを……。


「ひゃはぁっ!」

「うひぅ!」


 死角と言う名の懐に入り込んでいたシャイナの背中を突き刺すように、一気に下に振り降ろす。


 シャイナはぎょっと驚いて、なんとか紙一重で躱して逃げる。その際……、脇腹に切り傷が入ってしまったが、そんなの、関係ない。


『マスターッ!』


無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』の声が聞こえた。


 その声は、心配の音色が込められたそれであった。シャイナはゴロンっと横に転がりながら『無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』に言った。


「問題なし! 取り返すまで続けるから――無理しないでっ!」

『ラ、ラジャッ! デェス!』


 転がったまま彼女はくるんっと地面で体制を整えるように地面に手を付ける。


 そして再度、『無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』と共に駆け出す。


 その戦場を見て、モナは……。


「え、ちょっと……っ! ま」と言いかけた瞬間だった。


 ふっと来た黒い殺気。そして左頬を掠めるかもしれない……。刃。


「――っ!」


 モナはそれをいち早く察知し、そして……。


 ――やばい! そう思って彼女は後ろによろけながら、避ける。


 ずりっと、左頬に食い込んで、肉が裂けるような痛みが生じる。


「――痛っ!」


 痛みを感じて小さく声を上げるモナ。


 そのまま彼女はずたんっと尻餅をついて転んでしまう。


 その間にも、刀を持った男はモナの顔を狙って右手に持った刀をぐんっと、レイピアのように突こうとする。


 モナはそれを見て、右目を突こうとしたそれを左に避ける。が、目の横の皮膚も深く抉れた。


 ぱたたっと、地面に赤黒い液体が飛び散った。


 ――この人……。同じところ、顔を狙って……?


 そう思いながら、モナはすぐに立ち上がって拳を構える。


 起きてからすぐに装備している大きいナックルであるが……、それを見ても、男はくすっと黒い笑みを浮かべたままレイピアのように刀を構え、もう片方の手は後ろの腰に回して構えていた……。


 さながら西洋騎士の構え方であった……。


 ――この人の武器を叩き落とせば……、きっと勝機はある。


 そうモナは思った。


 相手の武器は刀だけ。


 それから見るに、彼は武士だろう。上級所属の。


 それを見て、モナはちらりとデスペンドを相手にしているシャイナを見る。


 ――デスペンドさんは……。窃盗スキルに特化したプレイヤーだ。


 ――シャイナちゃんはきっと、影のスキルに特化している気がするけど……。


 ちらっと男を見たモナは、ドロッと頬から零れ出てきた血を手の甲で拭う。鉄の冷たさが何となくだが、心地よく感じた……気がした。


 ――あの人は……、未知数だ。


 そう思いながら、モナは構えて思案する。ぐっと、顎を引いて、彼女は思った。


 ――ここは時間を稼いで、なんとかするしかない。そして、エレンさんが………………。


 と思ったところで、彼女は一旦思考を消す。消去である。そして新しく考えたことを思い浮かべる。


 ――違う。倒す。


 ぐっと、前に突き出した右手の握る力を込める。そしてモナは、刀を構えている男を睨んで、頬を伝った汗を拭わずに、彼女は決意した。


 ――ここで、こいつを、倒さないとっ!


 そんな彼女の意志をバカにするかのように、男はにやっと邪悪に、微笑んだ……。



 ◆     ◆



 その頃……。騒ぎを察知したエレン達は……。


「なんだこれ! エストゥガがっ!」

「すぐに向かうぞ!」


 エレンの混乱を消すように冷静に言うグレグル。盾を持って行こうとした時、背後にいたブラドはエレンに聞いた。


「あれ!? ダンのおっさんは!? ララティラは?」

「ティラはまだだ! コウガとむぃちゃんが一緒についてくれるって! ダンは……」

「あ、エレンさんっ!」


 と、一人の鉱石族(ドワーフ)の男が、走りながらエレンたちに駆け寄って、息を切らしながラ彼は言った。


「ダンさんなら、ギルド長と一緒にどこかへ」

「見失ってんのかよっ! ダアアアアアアアッッ! 俺の大馬鹿ぁぁっ!」


 鉱石族(ドワーフ)の言いたいことを察知したエレンは、頭を抱えて膝をついて絶望してしまった。


 自分がしたことに対しての後悔も合わさり……、鉱石族(ドワーフ)の男はそれを聞いて、驚きながら「よくわかりましたねっ!」と感心してしまったが。そうであろう。


 ダンは――方向音痴なのだ。


「今は感心している暇はねえだろうがっ! 早く騒ぎがあるところに案内してくれっ!」


 グレグルの言葉を聞いた鉱石族(ドワーフ)は、残っているエレンとブラド、そしてグレグルを連れて、騒ぎがあるところに走って案内をした。


 エレンはこの時教訓した。


 ダンを一人にさせてはいけないと……。



 ◆     ◆



「――はぁ!」

「っ! くぅ!」


 それはまるで刺突。レイピアの攻撃なのだが……、男は刀でそれをしている。ゆえに細い剣ならば避けれるそれが、刀の幅がそれを大いに狂わせる。


 モナはそれを避けながら、ところどころに傷を作りながら、なんとか致命傷を避けていた。


 避けたとい思った時には、ずりっと斬れてて、これならと思ってもそれでも斬れた。


 それの繰り返し。


 モナはどんどん後ろに下がって、劣勢のまま追い詰められていく。


 なぜ追い詰められている? 簡単な話。


 ――ドンッ!


「っ!」


 後ろに感じた硬いもの。それをすぐに確認するために後ろを見た。それは――


 岩の壁。


 ――後ろに……、見てなかったっ!


 モナは目を見開いて愕然とし、前方から来た刀の刺突の気配を感じて、すぐに前を向いた瞬間……。


 どしゅっと――彼女の右肩に刀が突き刺さった。それも貫通して、岩壁に深く突き刺さるくらい……。


「あ、ああああっっ!」


 モナは叫んだ。と同時に聞こえるのは……。


 ――はしたないですよ茂菜さま――


 ――そんな情けない声を上げてはいけません。天道會をまとめる者として、威厳を保ってください――


「~~~~~~~っ!」


 ――なんで、今でもこんな声が、最近までこんな声聞こえなかった! 幻聴なんて聞こえなかった!


 そう思いながらモナは刀を掴み、引っこ抜こうとした。


 しかし……。


「はい残念! 引っこ抜けなぁーい」と言いながら、刀をずるっと引いて、引っこ抜かないようにしてからもう一度深く突き刺す。


「~~~~~~っっ!」


 モナは更に来た痛みに耐え、ぶるぶると震えながら顔を上に上げて痛みに耐える。


 それでも邪悪に身を浮かべている男は、モナの泣いているその顔を見て、にっとさらに笑みの堀を深くして……、言った。


「うんうん。そうだよ。その顔でいいんだよ」


 と言いながら突き刺した刀から手を離し……、そして彼は高揚とした笑みで、己を抱きしめるように肩に手を付けて、くるんくるんっと、その場で回りながら、高らかに彼は言った……。


「だって、ボクの顔は老若男女がメロメロになってしまうほどの美貌を持っている! ボクは美しい! ゆえにボク以上の美しさを持っているものなんて、必要ないんだ! ボクのような……、この(クロガネ)のボク以上の美しさなどない! それを知らしめ! ボクはボクの生き方を貫き通す!」


「く、くろがね……?」


 その名を聞いた瞬間、モナは思い出した。


 ――まさか……、五年前に問題を起こした元人気俳優の『虱崎鐡(しらみざきくろがね)』っ!?


 何でこんなところに? それに何でこんな非道なことを!


 そうモナは言おうとした時だった。



 男――鐡は言った。モナから視線を外して……、彼は言った。


「あの人は言ったんだ! 『好きなように生きろ』って! それはボクの思うが儘に生きろ。ボクの好きなように、殺しても、生かしてもいいから、好きなように生きろって言ってくれた! まるで神様のような言葉! ボクに、ボクと言う存在を与えてくれた人! あの人のためなら、ボクはこの手を血に染めても、どんな罪に汚れてもいいっ! ボクを受け入れてくれたあの人のために! ボクは、ボク達は何でもする! 後先なんて、知ったこっちゃない!」


「っ!」


 狂っている。言っていることが、支離滅裂だ……。


 そう思いながら、モナは何とか話した得物を引き抜こうとした時……、鐡はモナにとって、思わぬことを口走った。



「なのにボクの美貌を見ても全然ときめかなかったあの()()()とか、()()()とか言うあの女ども……、ボクの美貌を見てもなんでときめかなかったのかわからなかった……っ! おかげで()()()()()()ちゃ()()()()……」



 うっかり? なにを?


 やっちゃった? なにを?


 今、なんて言った?


 そう思って、モナは、引き抜こうとしたそれから手を離して……、彼女は……、鐡に聞いた。


「ねぇ、今なんて言ったの?」


「はぁ?」と、振り向かずに、鐡はモナの言葉に耳を傾けた。


 モナはそれを見て、無表情で、彼女は聞いた。


「ノノコって、ねこんって……、その二人を、どうしたって……?」


「決まってんだろ? 僕の美貌を受け入れなかった。だから――」


 こ――


 ろ――


 し――


 た。



 ◆     ◆



 頭が真っ白になった。


 そのせいで、あの怖い声が消えて、一気に思考がクリアになって……、モナは、思い出した。


 自分の中にある……。優しい記憶を……。


 こんな状況で思い出すなんて、まるで走馬灯みたいだが――そんな気はさらさらない。


 むしろ……、思い出して、すっきりした。


 その時のモナは……中学校三年生。受験戦争の真っ只中の時だろう。そんな時、彼女は正座で座って、目の前にいる着物を着た壮年の男を見ていた。


 壮年の男は、くっと笑みを浮かべて言った。


『茂菜。お前は好きなように生きなさい』

「…………でも、家が」

『家のことは()()である俺に任せろ。それに、お前は女の子だろう? ただ性別が違うだけで蔑まれながら毎日を過ごすってのは……、女には酷なもんだ』

「…………棋道さんには、この家を継げって」

『茂菜。これはお前の物語だろう? お前の物語を、誰かの手によって書き換えられるのは、物語が滅茶苦茶になるのと同じなんだ。お前の生き方を決めるのは、お前なんだ。茂菜。お前に聞きたい』



 ――お前は、どうしたい? お前の意志を、聞きたい――



 そう思い、モナはぐっと口を閉じて、目の前にいる鐡を見て彼女は言った。否――


 怒鳴った。


「――ふざけんなああああああああああああああっっっ!!」


 怒鳴りながら、彼女は肩に突き刺さったそれを一気に引き抜いて、その刀をまるでやり投げのように構える。


 肩の痛みなど知ったこっちゃない。噴き出る血など知ったこっちゃない。


 だんっと前に出した左足を踏みつけて、ずずっと土を巻き込みながら、盛り上がった土など無視して、それを、一気に、腰の捻りを入れつつ、それを……。


「おおおおおおおおおおおおおおああああああっっっ!」


 あらん限り叫んで、鐡の注意をひきつける。


 鐡は五月蠅いと思いながら振り向いた瞬間、「え?」と呆けた声を出した。


 モナは叫びながら、鐡の得物を投げていた。


 投擲。


 その方が正しいのかもしれない。


 それを見て、左目に来た刀の先をみた鐡は避けようと右に傾ける。しかし――


 ずりりっと刀は彼の目元の皮膚を巻き込んで、そのまま一気に彼の横を通り過ぎる。


 鐡の顔に傷をつけて!


「うがああああああああああああっっっ! ボクの、ボクのカウォガアアアアアアアアッッッ!!」


 叫びながら愕然と、顔から出る血や傷を見て、この世の終わりでも見ているかのような目をして驚いて、泣いていた。


 そんな鐡だったが、背後から聞こえた「ウギャァ!」という声を聞いて、後ろを振り向くと、そこには……、デスペンドの右肩に深く突き刺さった刀。


 それを引き抜こうと左手を動かそうとした時、シャイナは隙をついて、彼の懐に入って、鉄棒にぶら下がるように下から潜り込んで、自分の得物を――


 奪った! 否――取り返した!


「っ!」


 デスペンドはそれを見て、シャイナを驚いた眼で見た。シャイナはそのまま鎌を持って構えて、彼女は言った。


「これで互角(フェア)! いんや!」

『逆転! デェス!』


 その言葉と行動を見て、鐡はモナを見た。


 モナはどろどろと流れる方の傷など気にしていないような素振りで、俯いたまま鐡に言った。


「あんたは許せない」

「っ!」


 その低い音色を聞いて、鐡はぞっと背筋を這う悪寒を感じて、後ろに一歩、後退してしまう。しかし、モナはその場から動かず……、彼女は鐡を見ないで、鐡に対して言葉を続ける。


「でも、感謝も同時にしている」

「?」


 モナは言った。


「あんたの言葉で、頭が真っ白になって、思い出したの。お父さんの……言葉」


 今まで、縛られた言葉しか思い出せなかったのは。


「好きなように生きろ」


 自分は、好きなように生きていなかった。簡単な話……、『家』という言葉に、縛られていただけ。


 よくもあり、悪くもある言葉。家のしきたり。


「私は、家の縛りに怯えていた。だから好きなように生きれなかった。だから、思い出すきっかけを作ってくれたあなたには、一度だけ感謝を述べようと思う」


 と言って、モナは顔を上げた。


 その顔は、笑みと怒りが混ざったような、そんな笑みで、目を閉じたその笑みで……彼女は言った。


「――思い出すきっかけを作ってくれて、ありがとう」


 と言って――


「だけど、あんたのしたことを許せるほど、私は優しくないから」


 モナはすっと――目を開けた。


 その眼は……、人とは違うそれになっていた。


 不覚にも、鐡はそれを見て……、美しいと思ってしまった。


 彼女の目は、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、まるで、人ではないそれを思わせた。


 そんな目で、モナは怒りを表しにした顔で言った。怒鳴る。


「あんただけは――ぶっ倒すっっっ!」


 それを聞いた鐡は、舌打ちをしてぐっと体に力を入れながら、彼は怒りを露にして言った。


「――なに、へんてこなことを言っているんだくそがきぃいいいいいいっ!」


 と言った瞬間だった。


 彼の目の前を通る、投擲物。


 それを見て、鐡は後ろに後退する。デスペンドも避けて、それは地面や壁に突き刺さった。


 それを見て、モナはぱぁっと明るくそれを見た。それは――矢。


「二人共! 大丈夫か!?」

「「!」」

「「っ!?」」


 互いが声がした方向を見る。その方向から来たのは、矢を携えて慌てて走ってきたエレン。


 それを見た二人は――


「エレンさんっ!」


 モナは歓喜の声を上げて。


「ラッキーッ!」


 シャイナはそれを見てぐっと握り拳を作ってガッツポーズをする。


 デスペンドと鐡は、それを見て苦虫を噛み潰した顔をした。


 ……、そんな風景を、エストゥガの岩壁の頂上から見物でもするようにそれを見ていた。


 その姿はまるで……、ピエロのような姿だった。


 それはさておいて……。


「デスペンドに……、えっと……。誰?」


 エレンは初対面の鐡に対して頭を捻って、モナとシャイナに聞く。


 モナは変わった目に気付かずエレンを見て言った。


「あの人……、人殺しですっ!」

「人……っ!? って、モナちゃん目がおかしいけど、大丈夫かっ!?」

「そんなことどうでもいいです! 今はあの人達をどうにかして懲らしめないと!」

「モナちゃんどうでもいいって……」


 そんなひと悶着をしていると鐡はぐっと背中に力を入れる。そしてごぽりと、黒い液体を吹き出した。


「っ! 警戒した方がいいよっ!」


 そうシャイナは鎌を構えて臨戦態勢になる。モナもエレンもそれを聞いて前を向くと、目を疑った。


 エレンは「嘘だろ……?」と初めて見るそれを見て、引き攣った表情でそれを見て。


 モナは「武士……、じゃなくて……」と言葉を零して……、それを見上げた。

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