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荒地に咲いた一輪の  作者: 井波
錆色の空
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第1話 密談

「陛下が亡くなったってよ」

「『彼』から聞いたよ」

「なんだ。つまんねぇの」

 アレフはソファにどっかりと腰を下ろした。窓から差し込む月明かりだけが頼りとは言え、ここは長年住処としてきた場所。家具の配置は身体が覚えている。お気に入りのクッションを枕にして寝転がり、脚を肘掛けに乗せるのも、すっかり癖になっていた。

「じゃあ、コレは知ってるか? テート家の当主の秘密」

「当主?」

 壁際に置かれたベッドの上で、声の主が動く気配。

「ボルディアーの跡を継いだ男──確か、騎士だ。名前は、レオナ・ファル・テート」

「良く知っていたな」

「彼のお気に入りだからね。話だけは良く聞く」

「……なんだ、またあいつかよ」

 ふてくされているのが伝わったのか、アレフの耳にクスクスという笑い声が届く。

「で、アレフ。君の言う、そのテート家の当主の秘密って何?」

 興味を惹かれたように言うから、アレフはもったいぶって少しだけ間をおいた。そして、聞き耳を立てる者がいる訳もないのに声を潜めてその秘密を口にする。

「あいつはな、女だ」

「……え?」

「レオナ・ファル・テートは女だ」

「──まさか」

 一瞬の、息を飲むような間にアレフはにやりと笑った。

「さっき本人から聞き出したんだ。間違い無い」

 ベッドが微かに軋んだ。

 衣擦れの音が近づき、影がアレフに覆い被さる。

「それ……どういう事?」

 長い髪がアレフの頬を擽った。

「コレはあいつから聞いて無いみたいだな」

 心底嬉しそうに言い、アレフはその人を見上げた。

 元々の暗さと逆光とで表情を窺う事が出来ないのは残念だったが、それでもアレフは満足した。これを見る為だけに彼は毎夜ここを訪れているのだから。

 視界を覆うその人の、長い髪を透ける白い月の光はいつも優しく、そして冷たい。

 その姿はまさに月の女神レオナそのもの……


「教えてやるよ。レオナの秘密を」



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