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6話 帝国の分断統治

ある日、リヒトは久しぶりに父親の執務室に呼ばれていた。


「今日は監察官が来るらしい」


統一帝国には監察局と呼ばれる日本では警察に当たる組織がある。

日本の警察官と大きく違うのは、領主は監察官が法を犯した時にを告発できるところだろう。

お互いを見晴らせ警戒させ対立させる事で統治をしやすくするという皇帝の意図が透けて見えている。


「そんな、顔をするな。

向こうも訴えられるのだ下手な事はしてこないさ」


 不快感が表情に出たリヒトを怯えていると勘違いしたのかそんなことを言った。

リヒトが外面にしては大人びている事を知っているせいか、はたまた貴族の家とはこんなものなのか

どちらにしろ、普通なら父親が10歳の息子にする話ではなかった。


「はい」


リヒトは明るく振舞った。


「旦那様、監察官がいらっしゃいました」

「通せ」


 入ってきたのは初老に差し掛かると言う老人だ有った。

伸ばして整えられた口髭も紙も白髪が混じっていると言うには白

髪の方が多いので無理があるだろう。

だが、その眼光には全く老いを感じさせなかった。


「このたび、中央より派遣されてきた主任監察官フレルク・グローテです」


主任検察官は一人の領地をすべるもので目の前の男はこの家の領地の監察官のトップと言う事になる。

フレルク・グローテは厳しい目でオットーを身ながら言った。


「私は如何なる不正も見逃さず、皇帝陛下の定められた法に従って行動いたしますのでどうぞそのつもりで」

「ええ、承知しております。

当家の物も領民も皇帝陛下に忠誠を誓っておりますので、監察官殿には退屈な二年間になると思いますが……」


リヒトはオットーが皮肉とも取れる言葉を吐いたのに驚いた。

普段は悪意や怒りを見せない彼らしくも無い行動だった。


「それでは……」

「せっかくですから昼食はかがですか?」


流石の、オットーも社交辞令として言っただけであり。

本当に来られても厄介だとおもっていた。


「結構、これから回るところがありますいかがので」


部屋を出ようとしたフレルク・グローテをサラが呼び止めた。


「グローテ監察官、ヴァレンティア家の領内には監察官として回ることも少ないはずですが?

個人として酒場や娼館にでも行かれるにしてもいささか時間が早いかと。

腕によりを掛けて作りますから、お召し上がりになっていかれればどうでしょうか?」


サラの口調は相手を馬鹿にしたもので話す内容も、リヒトが聞いたことが無いほど悪意に満ちていた。


「あの政治屋の手先が腕に寄りを掛けて作る?

ははは、それを食べた日には私は帰りの馬車で血を吐く羽目になりそうだな。

サラ・ヴェーラー大尉?」

「生憎ですが、私は今は軍籍を離れております。

前にもお伝えしたはずですか、年でもうろくし始めましたか?

それとも、敗北主義が脳を腐らすというのは本当なのでしょうか?」

「ああ、申し訳ないが私は価値の無い人間の事を覚えるのは名前が限界でな。

それより、血気盛んな戦争屋は品位にかけると言うのは本当のようだな大尉?」


 静かに二人がにらみ合う。

 その目に宿る感情は憎しみや怒りよりも殺意と称するのが正しい、もし二人に武器でも持たせようものなら殺し合いでも始めるのではないかと思わせるほどの緊張が走っていた。


「さら、止めないか客人に対して余りに非礼だぞ!!」


 ようやく、状況に理解が追いついたオットーがサラを止めに入る。

彼はそのまま、フレルク・グローテに向き合った。


「当家の使用人が申し訳ない」

「これは、フレルク・グローテとサラ・ヴェーラーの個人的なやり取りですので……」


フレルク・グローテの言葉には二つの意味が込められていた。

一つはこの問題をヴァレンティア家と結び付けないと言うこと。

もう一つは第三者が出しゃばるなという事である。

 


「そう、良いって頂けるとありがたい、昼食はまたの機会に

外までお送りいたします」


 オットーはサラが何か言う前に外にフレルク・グローテを外に連れ出した。

サラはあからさまに機嫌が悪く椅子に音がなるほど強く座ると、彼に出された紅茶を飲み干す。


「散歩に行って来る」


リヒトは客室を抜け出した。


****


 リヒトは庭に紙をしき、そこにゲートを作成するための魔方陣を書いていた。

 こうしているのは、ゲートを開くたびに庭を穿り返していては手間がかかって仕方が無いからである。

そして、太陽が真上に上ろうとしたとき。


「リヒト様、何をなされているのですか?」


後ろにはサラが立っていた。

ただ、それは咎める表情だった。


「私が居ない時は大規模なゲートは作らない用に申し上げたはずですが?」

「……ごめんなさい」


何となくあの日のことも有ってサラと顔を合わせずら勝ったのだ。


「マナは猛毒と同じです、正しく扱えば何も問題が無くても一歩間違えば大怪我に繋がるのです。

本当に命を落とすことも有るのですよ?

私の妹弟子の用に」


 サラの表情は真剣そのもので、その瞳には強い怒りとそれを超えるリヒトに対する慈しみが読み取れた。

どうやら、まだ嫌われては居ないようだ。


「それで、何をしようとしていたのですか?

無秩序のマナを取り出して」

「金属の変形実験」


無秩序のマナは物体の形を曖昧にする力がある。

 単に硬度を柔らかくする硬くするといった話ではなく変形しにくいものをしやすくする性質を付与する事が出来る。

 これにより、金属の形を一時的に曖昧にして形を粘土の用に簡単に変える事が出来る。


「また、何故そんな物を?」

「どんな感じになるか見てみたいんだ」


真っ赤な嘘で本当の目的は別にあるが、それをサラに明かすわけには行かなかった。

サラはあっさりと信じたようで当然のようにリヒトの直ぐ後ろに立った。


「解りました、慎重にしてくださいね」


 リヒトは布に向けて手を翳した。

そしてゆっくりと門を開けて中から魔力を引き出す。

 本当に少しずつ灰色のマナがゲートから出てくる。


「リヒト様、出て着たマナの制御は私が引き受けますから」

リヒトはしばらく、サラのいうと売りに下。


サラに制御されたマナは綺麗な球を作りゲートの上で停止した。


「サラ、制御を」


 サラから制御を受け取ったリヒトは金属に注ぎ込んだ。

金属の形は溶けるなどは無く表は無い。


「触ってみて良いですよ」


 リヒトはそっと触ってみた。

手触りは冷たく表面を触ったときと変わりないが、ただ包丁の形が変わった。

 本当に粘土の用に自在に形が変わっていく。


「リヒト様、金属は器ごと人が触れないところに隔離して置いてください。

昼食までは構いませんがそれ以降は触らない用にして下さい。

あとは、万が一こぼしたら取るのは面倒なので出来なくなってしまうので屋敷の中には持ち込まないように」


サラの方針は必要な事意外は自分でやらせるなので、何処かに去っていった。

リヒトはサラに見えないように隠しておいた木の板を取り出すと粘土の用になった、物を敷き詰める。


「これでよし」


リヒトは満足するとサラの言うとおりに器を庭の隅に持って行き、その上に空の木箱をひっくり返して被せた。

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