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プロローグ2

プロローグが長くなったので2話に分割しました。

 リヒトは霧の中で兵士に肩を貸しながら歩いていた。

昨晩、歩きながら聞いたところによると彼の名前はデニスと言うらしい。

 リヒトの軍服は唯でさえ昨日の戦闘でボロボロに成ったうえにデニスの血で汚れていた。

上着の左腕に至っては彼の包帯代わりにしてしまい肩の部分から千切られていた。

 地面には霜が張っていて、歩くたびに彼の靴底からは霜が踏み潰される感触と音がする。

リヒトは白い息を吐きながら空を見上げた。

 こい霧のせいで太陽こそ見えないが辺りの明るさからもう夜は明けたことが解った。

リヒトはデニスを休ませるとき意外は一晩中歩き続けていた事になる。


「中尉殿、置いて行ってください」


デニスが弱弱しい声を上げた。


「馬鹿言え」


 一度、助けると決めた後で今更見捨てていく事などリヒトには出来なかった。

リヒトはデニスを手ごろな岩に座らせると自らもその横に座った。


「なあ、お前の故郷はどんな所なんだ?」


 リヒトはデニスにそう話を振った。

ただの世間話をする事で何とか彼の生きる気力を取り戻そうとしたのだ。


「俺は小さな村の孤児院で育ったんです。

村の名前も禄に覚えちゃいません」


 話題を間違えたかもしれないとリヒトは少し後悔した。

そして、彼は直ぐに話を自分の物に変える事にした。


「俺は実は貴族の家の生まれなんだ」

「本当ですか?」

「リヒト・ベーレット・コンテグル・フォン・ヴァレンティア。

俺の名前だよ」


 それが貴族のとしての彼の正しい名前だった。

コンテグルは伯爵を意味する言葉なので上の名前はベーレット・ヴァレンティア伯爵家のリヒトとなる。

 また、ベーレットは騎士を意味するので彼が騎士の家系で有ることもそこから解る。


「だから、帰ったら可愛い女の子を紹介してやれるぞ」

「はははは」


 デニスが笑い始めた。

昨晩からデニスが笑うのは始めての事でだった。。


「楽しみにしています。

ウゥ」


笑ったせいで腹の傷に響きデニスが傷口を押さえる。

リヒトはその様子に苦笑しながらこの兵士がまだ笑えるだけの体力を残している事に安心した。


「少し休んでろ、周りを見てくる」


もしかしたら回りに見方の部隊と合流する事が出来るかもしれない。

リヒトは僅かな希望をかけて歩き始めた。

彼は地面の目印を見ながら進んでいた。

だからこそ、霧の向こうに人影が写ったのに気がつかなかった。


「敵か味方か?」


 霧の向こうから自国と同じ言葉が聞こえた。

だが、味方ならまず最初に合言葉を投げかけてくるはずだ。

 リヒトは直ぐに敵だと判断をつけて腰のフリントロック式(火打石式)のピストルに手をかける。



(さて、どうしようか?)


だが、ここで発砲する前に思いとどまる。

この距離なら十中八九リヒトは相手を殺せるだろう。

 だが問題はその後だった。

もしこの近くに敵が居れば直ぐに音で見つかるかもしれない。

 精霊剣があれば音を立てずに敵を殺すことも可能だったが、リヒトは昨晩の戦闘で精霊剣を落としてしまっていた。


(しかし、ここで止まっていても相手に傷かれて終わりだ)


 リヒトは敵を殺すことを決めると次に逃走経路を考えた。

まず、デニスの元まで戻るのはまずい。

 もしも、敵が多数だったら彼を守りながら撤退するのは困難だった。

考えた末、リヒトは今まで歩いてきた方向と進行方向を90度変えることにした。

 リヒトは腰からピストルを抜くと敵に向かって発砲した。

いかに制度が悪いといっても10メートルの距離なら当たったようで霧の向こうで影が倒れるのが見える。

 それを、確認するとリヒトは背中を向け走った。

 昨晩から酷使した足が激しく痛んだがだが、後ろからいつ銃声と共に銃弾が飛んでくるかという恐怖に駆られたリヒトが足を止める事は無かった。

 

 石に躓き転んだリヒトの耳に数十人分の足音が聞こえる。

 リヒトは近くの岩に隠れその影でリヒトは一発分の銃弾と火薬を紙で包んだ紙製薬莢を取り出し中身をピストルの銃口から注ぎ込んだ。

リヒトは手に持ったピストルをじっと見つめる。

 この世界には捕虜の扱いに関する条約など無くもし、敵に捕まればどのように扱われるかは敵の善意に期待するしかない状態だった。

 拳銃自殺という選択肢がリヒトの中に浮かぶ。


「右手に何を持つ?」


 リヒトの思考は相手の言葉によって消し飛んだ。

味方が使う合言葉だ。


「左手の手袋だ」


リヒトは岩の陰から立ち上がった。


「ヴァレンティア中尉、無事だったか」


部隊から一人の男が出てきた。


「シュルツ少佐!!」


リヒトは直立不動の体制をとり男に敬礼した。


「楽にしてくれ」


リヒトは上官の望どうりに休めの姿勢を摂った。


「中尉、死んだかと思ったぞ!! 

血まみれだが何処か負傷したか?」

「いえ、これは私の血では在りません」

「そうか、何がともあれご苦労であった。

貴官は速やかに陣地に帰還せよ」


そう言って、シュルツ少佐は何処かに行こうとした。


「少佐、お待ちくださいもう一人近くに負傷兵がいます」

「その血は」

「はい、彼のものです」

「二名、彼についていけ」

「感謝します」


 リヒトは直ぐに来た道を馬の後ろに乗って引き返す。

霧が晴れてきたので先ほど拳銃で撃ち殺した敵兵が目印になり直ぐにもとの場所に帰ってこれた。

デニスは岩から動かずにそこに居た。

 寝ているのか目を閉じている。


「デニス、起きろ助けが来たぞ」


 しかし、デニスは動かない。

それを見ていた後ろの兵士のうちの一人がデニスの首に指を当てる。

 しばらくした後兵士はゆっくりと首を振った。

デニスは死んだらしい。


「そうか」


リヒトはそれだけだった、それ以上何を言うべきか解らなかったのだ。

兵士は彼の銃を拾い上げると軍帽に手を伸ばした。

戦場で兵士の遺体をいちいち埋葬するわけにも行かない。

銃は軍の持ち物で使えるものは別の兵士に回されるが、軍帽は遺族へ形見として渡されるのだ。


「いや、軍帽は良い」


 リヒトの言葉で事情を察したのか兵士達は銃だけ回収し馬に乗り込む。

リヒトも一度だけ振り返り敬礼するとそれに続いた。

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