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【短編】黄昏パラノイア

作者: 伊藤紙幣

「ごめんなさい。あなたとのお付き合いは”哲学的見地からの思考実験”だったの」


「……ほえ?」


 何を言ってるか分からねえと思うが、そういうことらしい。



 そもそももって遡っていきたいのはちょうど一ヶ月前のことなのであります。

 俺こと流崎りゅうざき理路りろは、いつも通り朝から晩まで友達たちと冗長なバカ話を繰り広げ、放課後はゲーセンで散財したのち、家に帰ってはスマホの電池が焼き切れるまでLINEを駆使してバカ話の再開をするといういつもの予定だった。


 の、だ、が。


 下駄箱に入っていた一通の手紙がその安穏な日々に大きな大きな風穴を開けたわけであります。

 無記名の手紙によって呼び出された学校の植物庭園のベンチ前には、成績優秀、スポーツ万能、気立てがよくてその上けっこうカワイイと校内で有名な2年C組の神足こうたり恵梨也えりやが、はずかしそうにモジモジ頰を赤らめながらボクを待っていたではありませんか。


 アメイジング……。


 その後の流れはといいますと、まぁ彼女から愛の告白たる言葉を二、三、ほど頂きまして、不肖このわたくし、母上の胎内から推参いたしましての十六年来、潤いのある生活とは程遠い修行僧がごとき日々を送っておりましたゆえ、二つ返事でオッケーを出した次第であります。


 そこから先は平々凡々、万事円滑、公明正大、からきし具体的な色ッ気こそないものの真っ当な男女交際へと流れ込むわけでありますが、この辺は特に面白いことなかったので割愛。

 現実的に今、この目の前で面白いことが起こっているに至ります。

 いや待て。面白いっていうな。

 ワケワカラン理由でフられかけてんだぞこのやろう。


「えっ、え? ……神足? それってどういう」


「言葉の意味そのままよ。これっきりにしましょう。大丈夫、別にあなたになにか非があったわけではないわ」


 そして放課後、いつも通り帰宅を一緒にしたのち最後の分かれ道で、彼女はおもむろに今まで見たことのなかった青いフレームのメガネを取り出し、今の話題を切り出された事実に至るわけですが。

 

 いやいやいや。えェーー?

 ていうか、神足、いつもとキャラ違くない?

 キミいつもキャピキャピ喋って、笑顔が絶えなくて、やわらかい目元が印象的なかーあいい娘っ子さんだったじゃないか。


 なのに今は往年の学者みたいに偏屈な口調で、見事に口元はへの字のカタ結び、眼光鋭い上に見たことのないメガネ姿っちゅうのはどういう了見ですか。

 や、誤解ないように言っときますけど。


 これはこれで、

 かわいいです。


「”人は恋をしてはじめてすべての子どもらしさから脱皮する”

 ”情熱を持って恋したことのない人間は、人生の半分、それも美しいほうの半分が隠されている”

 ……どちらもフランスの小説家・スタンダールが遺した言葉よ」


「はぁ」


「”愛されないということは不運であり、愛さないということは不幸である”。アルベルト・カミュ」


「ふむ」


「”愛は惜しみなく与う”……レフ・トルストイ」


「なるほど」


「つまりね、古今東西の思想家や哲学者が恋愛を通じた人間の成長性や感じられる多幸感というものについて言葉を残しているの。私はいち人間としてそれらを検証する義務があると感じたわけ」


「検証。義務」


 なんだか何も頭に入ってこないほどショックらしい俺だが……つまるところその検証とやらに俺が駆り出されたのだなあということだけはうすらぼんやり理解できた。

 なるほどなるほど。

 ナルホド。


 ……っってッ納得できるかァーーーー!!


 こちとら母上の胎内から推参いたしましての十六年来はじめて出来たカノジョぞ!

 彼女にとっては目的がそんな些細なことだったとしても、こっちにとってみればラノベでしか読んだことのない夢のようなハイスペック彼女とのくんずほぐれつ突っつき合ってキャッキャ言うような甘ッたるうい高校生活期待しとったっちゅうねん!


 今思えばこの時、俺の頭の中にあったのは、この時間切れと言わんばかりの背景に映る夕暮れのままに彼女との関係を終わらせたくない、という一念だけだっただろう。

 俺は神足のことを何も知らない。ましてやこんな顔を見せられたからなおさらそう思ったんだ。


 だからあんな世迷い言がスンナリ出てきたんだろう、と後悔まじりに思います、ハイ。


「そういうわけだから、私とあなたの関係これでおしまーー」


「手伝うよ」


「……え」


「俺、手伝うよ! その検証ってやつ! ききききキグウだなあ神足! お、おおお俺も解き明かしたいって思ってたんだ、そういうの! その……人類有史から延々と続くこの男と女の命題的な、なんか、そんなん的なやつをさ!」


 何イってんだこいつ。

 まさしく俺自身の思うところと寸分違わぬであろう感想を込めた冷たい視線が俺の顔に突き刺ささっている。

 額からじんわりとヘンな感触の汗が数筋ほどほっぺを流れていった時、値踏みするような目つきだった神足は眼光を消してため息をひとつ吐き出した。


「……分かったわ。そういうことなら歓迎する」


「おう!」


「ーーって言うと思った? もうひたすら彼女が欲しいのバレバレなのよ、あなた」


 あふぅん。ですよね。そらそうですよね。

 なんたってこちとら毎晩爆発しそうなナニが滾りまくっている高校二年生なのだぜ? 欲しいじゃん、イチャイチャする相手の一人や二人!


「まぁ……でも、本当に協力してくれるっていうなら無下にもしたくないのが本懐だわ。

 こうしましょう。

 私が納得出来る答えに到達できたなら、どちらにせよ実験は次の段階に移るの。その時には改めて彼氏役が必要になる。そこでも相手役はあなたで続投するわ。それでいい?」


「ヤヤ、ヤ、そそそそんな下心はわたしゃにはございませんが?? どどうしてもとおっしゃるなら?? 不肖この流崎クン、ちょっとそこらの地の果てや地球の裏ぐらいまでででしたらお付き合いしちゃったりなんかしてもオッケーなんです?」


「……。」


「あ、スンマセン。是非それでお願いします。是非」


「協力に当たってひとつ条件があるわ。しかるべき時期までケータイは私が没収させてもらう。いいわね?」


「はぁ!? なんでそうなるんだ?」


「口外されるリスクを減らすためよ。学校であなただけなのーー今の『私』を知ってる人」


「なんで隠す必要がーー」


 聞きかけてやめておいた。

 余計な詮索は一切受け付けないと包丁のような瞳がおっしゃっている。おっかないんじゃ。

 と、いう感じで初日はそこで別れて帰路へとついた。

 この安易な選択がのちにどのような労苦を生むハメになるかなどつゆ知らず、のんきにその日の夕飯となったカツ丼に舌つづみを打っていたあの時の俺を、今は全身全霊でぶっとばしたのち火に焚き付けてドラム缶に詰めてインド洋あたりまで射出したいと思う今日頃である。





 さて、翌日の放課後になりました図書室。

 帰宅部でなおかつ高尚な学もない俺には縁もゆかりもない静寂のフィールド、さらにその奥の書庫に呼び出された日には戦々恐々、卒業まで触る予定のなかったドアノブを捻って中に踏み入ったわけです。

 なんともいえぬ古い紙の匂いに包まれた空間と、ホコリとともに眠るように重ね置かれた本たちに囲まれるようにして、神足は椅子にかけて座っていた。


「コ、コンニチワ。神足サン」


「どうも、流崎サン。あなたニーチェは好き?」


「はィ? ……いや、知ってるの名前だけだが」


 神足は手元の分厚い黒表紙の本に視線を定めたままこちらに語りかける。

 メガネをまとった神足は知的な雰囲気が普段よりも一層強まり、謎の貫禄を放ちつつある。

 誤解ないように言うと。


 これはこれで、

 かわいいです。


「ニーチェはいいわ。よく作品の暗い印象からマイナス思考の強い人だと思われがちだけれど、実際に残した言葉は力強く人を鼓舞するものばかりなのよ。彼の指し示した『超克』というものが私の人生目標だったりするの。わかる?」


「ハァ」


「……はぁー」


 あからさまな失望のため息はやめてください……。


「やっぱりあなたを議論の相手にする案はやめておいたほうが良さそう。まぁ、知ってたけどね」


「おゥいおいおい、舐めるんじゃないぞ? こう見えて俺は国語の点だけはちょっぴりいいんだ。ちょっぴり」


「こないだの中間考査は?」


「六十三点! ドヤ! 神足は?」


「……ごめんなさい。私もちょっぴり国語だけは得意なの。今回は運良く百点だったわ」


「おゥふ……」


 そういえば忘れていた。神足は全国模試の上位に名を連ねるほどの秀才だ。

 家柄が裕福なわけでも、特別な教育を受けて育ったわけでもないと聞く。よほどの突然変異でない限り本人の努力の結果だということらしい。

 そのくせデキる自分を鼻にかけないからこそ男子からも女子からも好かれていたというのに。

 ……目の前の小悪魔的を通り越して、純粋な悪魔的ドヤ顔を見る限り、それも演技だったというのか。

 この野郎……もといこの女。


 これはこれでかわいいです。


「さて、本題に入りましょう。国語がたった百点ぽっちしか取れない私なんかの未熟な予想通り、あなたという人間とは残念ながら議論に値しなかった。だとしたらあなたの役目はたったひとつよ。私と議論に値する人間を連れてきなさい。最低ふたりね」


「はぁ? お前と釣り合い取れそうな人間なんてーー」


 言葉の切れた俺の方を見て神足はニヤリと返す。

 いる、かもしれない。

 学校で七不思議の次に良く交わされるウワサ話だ。

 神足恵梨也は学校で”二番目”の秀才なのだと。

 一番は今年の頭にドイツだかアメリカだかの学校から三年生に編入してきたセンパイ。

 この学校、敷島学園を運営する敷島グループの一人令嬢こそが真の天才なのだと。


「察しは悪くないみたいだから人選は任せるわ」


「でも、どうやって連れてくればいいんだよ? 二年の神足がお話したいからチョット来てよって言えばいいのか?」


「私が望むのはそんな一時的な話じゃあないの。言ったでしょう? 今の考証が終われば『次』に移るって。私があなたに求めるのは継続的に検証を続けられる『環境』なのよ」


 ……思ってたより随分でかい話になってきましたね?


「加えて私はまだ、この苦労して作り上げた表のキャラを崩したくないの。表の顔のままで付き合い続けられる環境。そして幸か不幸か、いまこの図書室を管理する委員は顧問を除いて私だけという深刻な人材不足に陥っているわ」


「なるほど……、めぼしいやつを図書委員にスカウトして、図書委員会の皮を被ったお前の人文検討の部活みたいなのを作れと」


「ご明察。がんばってね。あなたと彼女との素晴らしいバラ色学校ライフのために」

 なんでこの人とっても他人事なんです?

 とりあえずそういうことらしいです。

 ならば素晴らしいバラ色学校ライフに向けて全力投球をかける他に血気をぶつける矛先が、この気だるい世の中の一体どこにあると言うのか。いや、ない。



「あのっ! 敷島センパイ!」


 翌日の放課後、俺は思い切って三年生の階層へ飛んでいき、教室から退出していくロングヘアーの女の子を呼びとめた。

 神足よりももう少し長い、背中まで伸びる茶髪の下から切れ長の眼がこちらを振り返る。

 息を呑むほど整合性のある顔つきと、出るとこは出てる上に引っ込むところはちゃんと引っ込んでやがるモデル気質の体型。


 薬剤を含む医療器具メーカーとして世界的に成功し、東京湾・大島南東に交通の要衝となる人工島を建設、その上に企業都市と私立の学園を備えるまでの事業力を持った敷島グループの令嬢。

 敷島しきしま唯利ゆいり

 一言でいうとオーラが半端ねえ……。

 なんかイチ庶民の俺ごときが声をかけるの申し訳なくなってくるレベル。


「センパイ。この後ヒマですか!? 少し話したいことがあるんですけど」


「いや。会社のデスクに戻って臨床統計のデータをまとめる続きをしなければいけないんだが?」


 なにその返答ーー!? 

 すごい。すごいよこれ。


 人は偏差値が五十ぐらい離れた人間と喋ると、神は人の上に人を作っちまったアホなんだなあという現実をケツから漏斗で直腸に流し込まれた気分になるらしい。なんかお尻がムズかゆくなってきたもんね。


「お嬢様、何か問題がありましたか? 予定より四十二秒も規定ポイントを通過するのが遅かったのでお迎えに上がりました」


 あわわわわ。SPっぽい人たち来ちゃったよ!

 どうなんの俺。連行とかされちゃう? 俺!


「……いや、少し生徒と話してただけだ。大袈裟なんだよ。お前らはいつも」


 そう言うと敷島センパイは一瞬だけこちらに目配せしたのち、いかつい黒服の集団に囲まれて去っていった。

 ダメだ……。ありゃあ異次元すぎる。本題を切り出すスキマさえ想像がつかない。


 噂によると来年はマサチューセッツ工科大学の経営学部に入学を決めているとかで。もう意味わからねえ、こちとらそれがあるのアメリカだったっけ? っていう程度でごめんなさいねチキショー。



 なんとなくその出来事を神足に伝えておきたく無人の図書室まで来たものの、書庫を覗いたらばもぬけの殻。

 ふと書庫の机の上に置いてあった神足の読みかけと思しき本を手に図書室の席に戻り、表紙を開いた。


「……洋書の文学? はぁ~……こんなモンよく読むよなぁ」


 パラパラとめくる文章の端々に、翻訳書特有の見たこともない語彙や言い回しが現れては消えていく。しばらくそうしていると、背中の方で扉の開く音が上がった。


「おう、神足。実はさっきなーーって」


「え……? りゅ、流崎セン、パイ?」


 現れたのは短いツインで髪をまとめ、黒縁のメガネをかけた小柄な女の子だった。

 ブレザーに着られているような華奢な体格でありながら胸元はいつ軽犯罪を呼び寄せてもなんら不思議ではないくらいに夢が詰まっている。

 見覚えがあるーーというレベルではないほどの顔なじみだ。


「あれ? 七歩しちほちゃん……? どしたの」


「わわ、わわわっ。あのっ、ほんっ……そう、本を返しに来たんですっ。お昼の内に返すのわすれちゃってて……流崎センパイこそど、どどうしたんですか? 珍しいですね、図書室にいるなんて」


「ああ、俺も図書委員に用があったんだけども……居ないみたいだな。約束してたからすぐ戻って来ると思うよ」


「そっ、そうなんですか。それじゃあここで待ってようかな……」


 何故か異様にもじもじとしながら、神奈川の実家の近所に住んでいたひとつ下の幼馴染である美香村みかむら七歩しちほちゃんは椅子を引いて机に向かい座った。

 俺と同じ長机の三つ向こうの席に。


「……。」


「……。」


 うあっ。なんだこの距離感と沈黙……。もしかして嫌われてる? 嫌われてんの俺!?

 小さい頃はあんなに毎日いっしょに遊んでたのに。

 反射的にケータイを取り出そうとポケットをまさぐるけれど、そうだ、ケータイは今やあの恋心を盾にパシリを行使する人心掌握女の手中にある。

 手持ち無沙汰はまずい。

 とりあえず本でも開くか……。


「……え。センパイ、そんな本読むんですか?」


 いくらか高揚した声色で七歩ちゃんがこちらを向いた。


「え? ああっ、あ、へへへ。まぁね」


 改めて表紙を見るとデュマ・フィス著作の『椿姫』というタイトルだった。どこの国の本なのかも皆目検討つかないんですケド……。


「すっ、素敵な恋愛小説ですよね! 私も大好きでオペラのDVDも借りて見たんですよ!

 あとベタですけど『マノン・レスコー』とかっ、シェークスピアの『十二夜』とか、『ジェーン・エア』や、フローベールの『ボヴァリー夫人』なんかも大好きなんですっ!!

 でも『嵐が丘』も絶対お気に入りから外せなくって!

 日本の小説だと『風立ちぬ』の原本や三島由紀夫の『潮騒』とか、それからそれからーー」


 ……へい?

 ソレ、地球上の言葉?

 などと俺があまりに唐突に吹きつけてきた最大瞬間風速に白目を剥いている間にも、興奮した七歩ちゃんの口から次々と本の名前が列挙されていく。

 ていうか。

 これは。まさかーー


 うっすらとした勘なんですが、もしかしてその小説たち、すべて恋愛小説。な、の、で、わ?


「七歩ちゃん!」


「ーーふえ? ……ふぇえっ!?」


 思わず勢いで手とか握っちゃったけど、それこそこれを逃す手はない! 思わぬ伏兵とはまさにこのことか!


「きみに折り入って頼みがある! きみにしか頼めないことなんだ……ッ」


「あええ、ええええっ……? へぁらら……!」


 顔から火の出そうな七歩ちゃんの、すごい時速で泳ぐ目をまっすぐ見つめて言う。


「一度しかお願いしない。よく聞いて」


「あうぅぅ……うう!?」


「七歩ちゃん!」


「うううううぅぅぅ!!」



「七歩ちゃん。きみがもし良ければーー」




「ッッッッ~~~~~~~~!!!!」





「良ければ図書委員になってくれないか!?」


 その瞬間、何か張り詰めていた線が切れたように、七歩ちゃんは床へとくずおれた。


 仰向けに倒れた目はめっちゃめちゃぐるぐる回っていて、息が上がり汗が何筋もほっぺたを流れている。

 少量ではあるが鼻血が出ているのも錯覚じゃあない。


 大丈夫なのこれ!? 保健室!? 救急車!?

 と、少し経って目の焦点が合ってきた七歩ちゃんが、荒く上下する肩から吐き出る息にまじえてギリギリ聞こえるぐらいの声で。


「は……はい……、はいりましゅ……としょ、いいん……なりましゅ……ぅ」


 やったぜ。

 なんか知らんけど完全勝利した気分だ。

 ていうか……もっと別の告白をしてたら、ここで万事解決の方向に転がった気配があった。

 まぁそんなルートに期待はしまい。

 戦わなきゃ、現実と。


 結局そのあと、帰って来た神足に七歩ちゃんを紹介すると、予想どおり中々の話の噛み合いを見せてくれた。

 というか図書室の常連となっていた七歩ちゃんと神足はある意味で顔なじみだったらしく、恋愛小説への造詣理解も深くて前々から気になっていたのだと神足がこっそりと俺に話したのが昨日のラストの会話である。






 翌日は土曜日、私立高校もご多分に漏れずお休みだった。

 図書委員集め? ばかやろう!

 そんなことより今日は遊興だ!

 日頃からの鬱憤を晴らすべく、俺は友達四人と街へと繰り出し、高校生のか細い資産の限りを散らして解散し、ひとり帰路に着いた。

 しかし、財布の中にはあえて千円を残している。


 これが何を示すところか。答えはひとつだ。


 順を追って説明しよう。

 この敷島の街、新興の企業都市として治安のシステムが異常なまでにしっかりとしており、各方面、セキュリティがヒジョ~に固い。

 夜九時を回って私服で未成年が外出していようものなら三秒で職質を受けるのをはじめとして、こと青年淑女の公序良俗にあたっては厳しく、ケータイの電波を含む島のネットサーバーを介しての成人サイトへのアクセスも制限される徹底ぶりだ。


 もはや余計なお世話を通り越して限りなく孤島のディストピアにほど近いレベル。

 そんな中、俺の借りているアパートから東のウィンドウショップ街を抜けて少し行った区画の裏路地に居を構える個人経営の書店がある。


 ここのご主人が公序良俗と呼ばれるモラルに対して聖人的な大らかさを持っており、この息苦しい学校社会の中でもがく我々の心に一凪の安息を許してくれるのだ。

 週末はここで春画(お察しください)を見て回るのが日課である。

 毎週買うわけではないが、今週は色々と胃痛をかもす事案が数件あったので、今日は躊躇いを捨てようと思う。

 さらば禁欲。さらば野口さん。


 入店し、漫画コーナー、小説コーナー、絵本コーナーを通過した先の本棚一面を埋め尽くす扇情的色彩に胸が躍る。めっちゃピンク。……たまらん。

 友達に教えて話が広まり、みんなが寄ってたかった挙句に規制が入るという経験をしたこともあり、周りに口外していない秘境となっている。ここの存在を知るのはたぶん学校で俺ひとりだ。


(いいか理路ォ……慎重に選べよ……間違っても短絡的な煽り文句に踊らせるな……! 表紙の放つオーラをしっかりと嗅ぎ取るんだ。なけなしの千円を掛けるんだ……失敗は許されない!)


 目を皿のように背表紙を舐めまわして数十分。

 現環境で至高と思われる一品を本棚から引き抜いた時、ふと横を見ると、知らない内に人がひとり立っていた。


(はい!?)


 これがとても、とても異様な格好だった。

 スモークの効いたサングラスにパンチ帽をかぶり、口元をマスクで覆って全身を覆うロングトレンチコートに軍手をはめている徹底ぶり。


 か、掛け値無しのへんたいだ……。


 この秋口にトレンチコートですか!?

 まるで全世界ことごとく我を怪しめと言わんばかりの変質的服装。

 警察呼んだ方がいいかな……とか思っている内に、よくよく吟味した俺とは対照的なまでの素早さで、めぼしいエロ本をカゴにぶち込んでいき、一寸の迷いもなくレジ前へと置いた。


「やぁ。いつもどうもね」


「……ンン、ども」


 少なく見積もっても二十冊……淀みない動作で精算を終えると、足早に店を出て行った。

 今の声。それにあの格好……もしかして?







「……」


「……」


「……敷島センパイ、ですよね?」


「……。」


 と、いうことで、ですね。


 例の怪しいヒトを追いかけてきまして、公衆トイレに入って行って待つこと三分です。

 あろうことかその変態、女子トイレに駆け込んで行きましたんで、これは今度こそ通報でしょうと思うところではありましたが、例のごとくケータイは今やあの恋心を盾にパシリを行使する人心掌握女の手中にあったわけです。

 そして悄然と立ちすくんでいたところ。

 紙袋にエロ本とコートと帽子などもろもろを押し込んで出てきた敷島センパイと、


 敷島センパイと、


 ”敷島センパイ”とエンカウントしたわけです。はい。


 それから約十分。終末の日を迎えたかのように生気を喪い放心状態と化した敷島センパイを傍らのベンチに座らせて経過しました。

 依然として回復の見込みなし。意識不明の重体です。


「あー、……ええと。見なかったことにしますんで。それじゃあ僕はこれでーー……どええ!?」


 空気に耐えかねて立ち上がった俺の手首を掴んだのは、恐ろしいほど冷え込んだセンパイの手である。


「ーーき、君は確か。流崎二年生、だな?」


 こちらを見上げるセンパイは目が真っ赤に血走り、脂汗が顔中に浮き出ている。


「へ、へい」


「こ、これから私をど、どうするつもりだ。口外されたくなければなんでも言うことを聞け、とか……やっぱり言うのか!? エロ同人みたいに!」


 えェーー!?

 ノーカンにして帰るって言いましたよね!

 てかセンパイ、その発想と定句は明らかにエロ本塾読者のそれなんですが……。


「いやそんな気は……。て、っていうか女の人でも買うんですね! エロ本とか! その辺にびっくりしました!」


「ああ……やっぱり普通の女の子は買わないのか……? やはり私が異常なのか……?」


 ……なんかその辺、触れない方がよかったかな。


「いや、そんな異常ってほどじゃあ……」


「昔からこうなんだ……私は。時々どうしようもなく抑えが利かなくなってしまう。幼い頃からひたすら詰め込み勉強をしてきた反動を感じるんだ」


「……みんな大なり小なりそんなもんですよ。ぜんぜん変なんかじゃあないですって」


「ほ、本当に? 本当か!?」


「た、たぶん」


「そ、そうだな。そうだよな。ウン。自然だよな。ウンウン」


 なんか一人でご納得されてる様子。しからば僕はこれにて……と回れ右で歩き去ろうとした時、ふたたび右手がロックされた。


「ま、待て! ……君は私に話があると言っていたな。今ここで聞こう……っ」


「え? いいんですか?」


「と、当然だ。口止めに……あ、いや、軽く相談に乗ってもらったようなものだし、れ、礼代わりにと言ってはなんだが。なんだ、い、い言ってみろ」


「分かりました……、敷島センパイ!」


「ッ!」




「図書委員になってもらえないでしょうか!?」


「ーー……………、……ハ?」


 なんか一瞬でしぼんだ風船みたいな顔になっての返事。何頼まれると思ってたんだろうこのエロい人。


「……はは、ははは……なんだそんなことか……いや、てっきりいつも受けるような愛の告白かと……ばかり」


「で、どうですか。人不足なんですよ」


「……わかった。私で良ければ。ただ家の仕事もあるからたまにしか行けないぞ。それでも大丈夫かな?」


「はい! よろしくお願いします!」


「はは、お安い御用だ! ははは……」


 安心したような、ある意味で期待外れのような笑い顔が印象的なセンパイでした。







 ということで後日、その旨を神足に報告。


「……一体どんな悪魔的奇手を講じたの?」などとお前が言うな的なことを問われたが、そこはセンパイの名誉のためプライバシーの保護という言い訳でまかり通した。


 神足自身にも思うところがあるようで、そんなに追求はしてこなかった。誰だって探られたくない腹のひとつやふたつはあるらしいですよ。


 その後、一週間が経ちました。

 敷島センパイの都合が付き、初めて俺を含めた四人が図書室にガン首を揃えたわけであります。

 図書室の入り口には「会議中!」との掛けフダ(もちろんオレ作)を掲出し、外界を遮断するフィールドを形成しましての室内は、神足不在の現状では敷島パイセンの強すぎるクールビューティフォーなオーラで冷え切っております。


「あのぅ……人違いだと失礼なんですけど……敷島唯利、センパイ、ですよね?」


「そうだが」


「そうですよね……ハハハ……」


 何も聞かされていなかった七歩ちゃんは戦々恐々とした面持ちだ。無理もない。個性ばかり強い学園の中でもトップクラスにやばい人だし。

 と、そのとき。書庫への扉が開き、中からメガネ無しバージョンの神足がひょっこりと現れた。


「すいません! お待たせしました! それでは、ただいまから第一回・入荷図書選抜会議を始めたいと思いまぁ~っす!」


 このギャップである。

 CV.で言うと超シリアスな沢城みゆきと超ふんわり安産型な野水伊織バリなブレ幅。

 騙されるでしょ? そりゃあ。


「第一回は恋愛小説に関するものにしたいと思っています! ぜひ多読なお二方の意見を参考にさせていただきたいですっ。何かオススメはありますか?」


「ええと……神足センパイ、一口に恋愛小説と言ってもすごく幅がありますよ! それこそ『アルト・ハイデルベルグ』みたいな悲恋から、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』的なコミカルさもあったり、『ローレン・ローラノ』シリーズのように同性愛を扱うものもあります」


「ふむふむ、なるほど、メモメモと。敷島センパイはどうですか?」


「私は……恋愛小説自体、読んだことがない」


 うむ。もう少し先走ったもののコレクターだからな。

 ……などという視線を送ったらソッコーでバレてニラみ返されたのが五秒後の俺だ。


「本ではないが……、小さい頃に『レ・ミゼラブル』のミュージカルを父と見に行ったぐらいだ。今ひとつピンとは来なかったが」


「あっ、最近映画になったやつですよね! 私も見ましたよ!」


「私も大好きですっ! あのお話には母の愛、父の愛、そして恋愛がいっぱい詰まってて……何回読み返しても泣いちゃいますぅ……!」


 うっとりとキている七歩ちゃんは、うん、エロい。

 と、ここで神足から鋭いアイコンタクトが飛んできた。ここが勝負所ということか!


「え、と……この際だから聞いてみたいんだけどさ! みんなにとって、恋愛ってどういうものなのかな?」


 少し我ながら不自然かな? と話を切り出してみると、真っ先に七歩ちゃんが答えた。


「何よりも素晴らしいものですっ! 人を好きになると胸がとっても熱くなって、元気があふれ出てきて! わたし、人の恋のお話を見てるだけでもドキドキしちゃうんです! まるで心臓が自分のものじゃなくなったみたいに!」


 なんかやけに熱っぽい視線をこちらに送る七歩ちゃん。

 その視線の外で神足サンが空恐ろしい速記でメモを取っているのが見える。恋心がもたらす人の成長を解き明かしたいって大マジなんだなこいつ……。


「私にとっては……不要のもの、かな。恋煩いという言葉の通り、煩わしくてどうもダメだ。何も手につかなくなってしまう。だからそういうものに触発される媒体を避けるようになったのかもしれん」


 なるほど、色ボケ間際でも社長令嬢ということだろうか。センパイが敷島グループの臨床統計部門に専用のデスクを持っていることはよく知られていることだ。

 ゆくゆくは社長になるか、もしくは片腕になることを義務付けられているんだろう。だからナニガシで端的に発散すると。


「そんなっ! それはもったいないですよ! 好きな人がいるからこそ頑張れるんじゃないですか! ラブのパワーをもっと活用しましょうよ、センパイ!」


「その辺がよくわからない。何をどうしたら恋愛がラブなパワーに置き換わるのか理解ができないんだ。圏論に例えるなら、始対象が恋だとするなら、行き着く終対象はただの性欲なのではないかというのが私の考えるところであって。ならば性欲だけを処理すればよいのでは?」


「その理屈で言うなら性欲が『零対象』になる場合だってあるんじゃないかしら? 恋愛の終点でもあり、恋愛の起点にもなりうるとか」


 神妙な口調で同じく統計用語(?)で割って入る神足に、いささか驚いた様子の敷島センパイ。


「七歩さん、私もよく知りたいの。好きな人が居るから頑張れるってどういう想いなのかな? 具体的に」


「えーとぉ……んぅ~? 言葉にできませんよぉそんなの! なんていうかこう、むきゃ~~っ! みみみみぃぃ! んんんっポカポカ~! って感じです! 超ハイテンションです!」


「むきゃ~~でみみみみぃでポカポカ~~。なるほど」


 理解できるんですかね!?


「たまにそういう哲学の界隈で目にするのは、恋愛とは極度に自己肯定感を引き出すものだというな。それだけの話なら別に恋愛でなくてもよくないか?」


「単に自己肯定感というだけならそうですね。でも脳科学的に考えると人類学者のヘレン・フィッシャーが出した面白い論文があるんですよ。これがそうです」


 そう言って神足は書架用のはしごを使って棚の上の方から分厚い本を取り出してページを開いた。


「この実験では、熱愛中だと自覚している人とそうでない人を区分けしてM.R.I.スキャナーで脳にどのような作用が起こっているかを調べたの。すると恋をしている人は本能、集中力ややる気を司る腹側被蓋野ーーいわゆる爬虫類の脳が活性化してることが分かったんです」


「ほう……」


「ちなみにコカインを摂取した時にも同じ場所が興奮状態になるらしいですよ。しかも普通に恋愛してればコカインよりも強く活発化するとか。そういう極度な興奮が普通の自己肯定の中にありますかね?」


「ええっ、えええ!? 恋愛ってコカインよりも興奮するんですか!? それってもう病気なんじゃあ……」


「そう。同じような中毒性も認められる、だからこの本の主張は一貫して『恋愛=強迫性神経症』という病気なのではないか、という内容になっているの」


 へぇ~、と感心する七歩ちゃんの横で、敷島センパイは口元を指で覆って目つき鋭く考え込んでいる。

 いや。視線が神足から離れないところを見るに、半分は神足自身に疑問を持っているのかもしれない。

 これは……少しマズイのでは?


「しかしこれも一論に過ぎない。仮に本当に『病』と呼ばれるほどの興奮状態を引き起こすとすれば、思考が偏ってしまうのではないかというのが私の最も恐れるべき点です」


「えええ!? センパイ! 恋愛ってそもそも一人の男の人を好きになることですよ! 偏りとか言ってたら恋なんてできませんよ!」


「いえ、しかしそれでは考察に必要な広視野がーー」


「わあああ、わわわァァァ~~い!!」


 なんか反射的にガニ股になって両手をわきゃわきゃさせる変な動きになってしまった。

 いぶかしげな視線が集まる中、神足だけが何かに気づいた表情を浮かべる。

 このバカ! 隠すならちゃんと隠せ!

 意外にポンコツヤローなのか!?

 それはそれでかわいいですね!


「ちょ、ちょっと本題からズレてる気がしてだなっ。俺、ちょっと家の用事を思い出したから……いい急ぎじゃあないんだけどサ! ちょいと巻いていこうぜ!」


「……そうだな。私もさほど暇ではない」


 ひときわ怪しい視線を送ってくる敷島センパイはその言葉と同時に鋭さを消して椅子へと戻った。


 それ以降は比較的まじめな入荷本の検討で議事は終わりまで流れていった。

 とはいっても、この話題については七歩ちゃんの独壇場という感じだった。ざっと名前の出てきた恋愛小説の冊数は八十冊。

 それも大体の内容を覚えているという驚異のウィット。ほんとに好きなんだな……。


「ーーそれじゃあ今日はここらへんでお開きにしましょっか!」


「はいっ! たくさん本のお話ができて楽しかったです!」


「……うむ」


「敷島センパイ? どうしたんですか。煮え切らない顔で」


 いかん! 七歩ちゃん、詮索はやめてくれ!

 これ以上は神足の気難しいモードをカバー仕切れる気がーー


「楽しかった」


「ーーへ?」


「私は……決して天狗になっていたつもりではないが。少なくともこの学園の誰よりも上を目指して勉学に励んでいたつもりだった。けれどーーまだまだ知らない世界がたくさんあるんだな」


 自然とこぼれて出た笑みを隠す素振りもなく、純粋な好奇心に満足するような顔で、センパイは俺を見た。


「……敷島センパイは”才能”というものの有無を信じる人ですか?」


 不意に神足は尋ねる。


「いいや」


「あら、そうなんです? 私は信じますよ。私にとっての才能とはーー見知った世界の広さだと思っています。そのためにたくさん外を歩いて、たくさんの人や考えやに出会うことが大切だと考えてます。だから、こうして図書委員になってくれた二人にはこの上ない感謝をしたいです」


 二人……あれ? 俺は? もしかして算数苦手?


「そうか……もしかしたら父も同じ理由で私を学園に編入させたのかもしれないな。本来、M.I.Tへの入学まで私はアメリカにいる予定だったから」


「へぇー。まぁこの学園、個性だけは強い人が多いっぽいですもんね。見識を広げるなら最適ですね」


 もしかしてそういう狙いで最初から作ってたり?

 まぁ、まさかね……。




 なんやかんやあって疲れた帰路になったわけだが。

 あの後、俺たちが表向き付き合っているのを知らなかった二人は帰る段になってからその事実を知り、七歩ちゃんはなぜか異常なほどガックリ来てたり、敷島センパイは何を想像してか顔を真っ赤に鼻息荒くなったりしてました。大丈夫かな。後輩ながら将来が不安です。


「出だしとしては上々ね。流崎クンにしては期待値を大きく超えた出来だったわ。まさか最適解の二人を連れきてくれるなんて」


 例によって青メガネモードの神足は、字面こそ褒めている風で声色は初秋の北風のごとく冷たい。


「そりゃどうも……ハァ。なんか疲れちまったよ」


「お疲れ様、ひとまずノルマクリアってとこね」


「それじゃあこの関係は続くってことか。なんか嬉しいような悲しいような……」


「もう倦怠期? 気が早いわね」


「気が早いのはお前だっ!」


 ともかくーー少し想像とは違うものの、彼女(仮)がいる生活は延長らしい。そこんとこは良しとして。


「……随分と晴れやかな顔だな。そんなにお前の中で収穫があったか?」


「ううん。逆よ。追えば追うほど見えなくなる……人とは。恋とは。強さとは何か。……ま、先人が一生涯をかけても追求しきれなかったことを若輩の私が定義づけようなんておこがましいことかもだけど。『せざるを得ない』。そういう性分なのよ。もしかしたらーー最初からすべて意味のないことなのかもしれないわね……」


「意味の無いことならーー」


 ふと俺が足を止めると神足はこちらを振り返った。


「意味の無いまま楽しんでもいいんじゃないか? 少なくともーー俺は今、このどうでもいい会話が少し楽しいぜ」


 すると神足は一瞬ハッとした顔になり、いつもの厳しい顔でも、表向きの猫かぶり顔でもない、穏やかな笑みで夕暮れに染まるうろこ雲を見上げた。


「そうね。それもひとつの解、かな」


 見たことのない純粋な笑みかけに戸惑ったけれど。


 これはこれでーー


 いや。

 これこそかわいい、と思った。

 ということで我らが人事ビッグベン、聖戦士リン・スズに許可を得てのアップロードとなります。

 今作は文芸サークル・流星ハートビート刊行の『流星物質8』収録作品でございます。テーマは『部活』ということで書かせていただきました。


 書いたのが半年ほど前なだけあって何を意図した小説なのか怪しい(⁉︎)部分が多数見受けられますが、第一目標として偏屈な残念女子が延々と図書室から出ずに持論をのたまう構図が書きたくて着手したのを覚えています。


 各キャラのネームミーイングは覚えているので書き置いておきますと、


・流崎理路……我がなく周りの理論に流されまくる人。公式サンドバック


・神足恵梨也……旧約聖書の預言者「エリヤ」から


・美香村七歩……ことわざ「七歩の才」から。詩性が高い人のことを言うそうです


・敷島唯利……「ただ己の利のために」という意味を込めました。


 そういう人が周りと触れ合うことであらゆる視野を身につける=才能が目覚めていく、終盤にエリヤが話したこの一部分は他ならぬ僕の持論であります。


 いろいろな人と会えば価値観の摩擦や考え方の相違は出てくるのが必定でしょう。そこでナンダコノヤローと殴りかかるのか、なるほど一理あると一歩引いてみるのが正解か、それはわかりませんが、自分がどういう人間になっていきたいかの行動選択のひとつとして僕は後者を選んでいきたい。


 不可能性に惑わされず共有できるものを人との間に紡いでいきたい。なんかかっこよく言えばそういうスタンスが好きなんですね。

 へへへ。

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