クリスマス
【陽介】
クリスマスが近くになると、天気予報に不穏な影が差してきた。
「……吹雪?」
ぼくの呟きに、梢もテレビ画面に視線を釘づけにして、柊はそれを不思議そうに見ていた。
「ほんとね……ねぇ、陽介さん。クリスマス、大丈夫?」
「ん、まぁ、大丈夫だと思うが……」
「くれぐれも、安全第一でお願いね? 未亡人も、シングルマザーもいやよ? もしそうなったら、念仏の代わりに一生お説教してやるからね!」
「おせっきょう?」
柊のきょとんとした様子に、ぼくたちはぷっと噴き出して、緊張が解けて消えた。
それでも梢は念を押して、もう1度いう。
「わかったわね?」
「ああ、同僚にも言われたよ。わかってる、気を付ける」
そう答えながら、ぼくはクリスマスのことを思いを馳せた。
吹雪になれば、いつも以上に忙しくなるだろうな……と。
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【柊】
きょうはくりすます。
ようちえんでみんなといっしょにくりすますかいをしたの。
たのしいじかんで、ひぃはおとうさんもいっしょだったら、もっとよかったのに……なんておもったの。
きょうのよるは、だいじょうぶかな。
おかあさんは、おとうさんがちゃんとかえってこれなくても、ないたりしちゃだめだよっていっていた。きっと、むずかしいんだよね。
……それでも、やっぱり、いっしょにろーそくのひをけしたいの。
おとうさん、ちゃんとかえってきてくれるかな。
ひぃはね、いいこにしてまってるよ。
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【陽介】
生憎と、天気予報は外れることなく見事に的中して、その年のクリスマスはてんやわんやの大騒ぎになった。
吹雪と言っても、ホワイトアウトするほどのものではない。車での運転も、キッを付けていれば十分可能だ。
そもそも、サンタクロースは基本、工場の中からプレゼントを贈る。
キャロルを込められたプレゼントは、込めた『キャロル』の活性化するこの夜、サンタクロースが最後のひと手間を加えるとひとりでに『良い子』の居る場所まで跳んでいくのだ。
晶さんも、叶も、他のサンタも、マスターも、みんなで1つ1つのプレゼントを配っていく。
「…………。やっぱり、吹雪の影響か」
「いつもより、届けにくいわね」
「マスターは、流石……。難なく配っていっているけど、他はいつもよりペースが遅いね」
「……そうだな」
みんなそれぞれに四苦八苦しながらプレゼントを配っていく。
そして予定分が配り終えたのは11時の半ばに差し掛かった頃だった。
ここから家までは、少なくとも1時間はかかった。
吹雪の中だから、なおさらだ。
「……間に合わなかったか」
サンタのみんなの道場の視線が、そっと胸に突き刺さる。
ぼくは最後の、娘の為のプレゼントに、キャロルを奉じた。




