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クリスマス


【陽介】

 クリスマスが近くになると、天気予報に不穏な影が差してきた。

「……吹雪?」

 ぼくの呟きに、梢もテレビ画面に視線を釘づけにして、柊はそれを不思議そうに見ていた。

「ほんとね……ねぇ、陽介さん。クリスマス、大丈夫?」

「ん、まぁ、大丈夫だと思うが……」

「くれぐれも、安全第一でお願いね? 未亡人も、シングルマザーもいやよ? もしそうなったら、念仏の代わりに一生お説教してやるからね!」

「おせっきょう?」

 柊のきょとんとした様子に、ぼくたちはぷっと噴き出して、緊張が解けて消えた。

 それでも梢は念を押して、もう1度いう。

「わかったわね?」

「ああ、同僚にも言われたよ。わかってる、気を付ける」

 そう答えながら、ぼくはクリスマスのことを思いを馳せた。

 吹雪になれば、いつも以上に忙しくなるだろうな……と。


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 


【柊】

 きょうはくりすます。

 ようちえんでみんなといっしょにくりすますかいをしたの。

 たのしいじかんで、ひぃはおとうさんもいっしょだったら、もっとよかったのに……なんておもったの。

 きょうのよるは、だいじょうぶかな。

 おかあさんは、おとうさんがちゃんとかえってこれなくても、ないたりしちゃだめだよっていっていた。きっと、むずかしいんだよね。

 ……それでも、やっぱり、いっしょにろーそくのひをけしたいの。

 おとうさん、ちゃんとかえってきてくれるかな。

 ひぃはね、いいこにしてまってるよ。


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 


【陽介】

 生憎と、天気予報は外れることなく見事に的中して、その年のクリスマスはてんやわんやの大騒ぎになった。

 吹雪と言っても、ホワイトアウトするほどのものではない。車での運転も、キッを付けていれば十分可能だ。

 そもそも、サンタクロースは基本、工場の中からプレゼントを贈る。

 キャロルを込められたプレゼントは、込めた『キャロル』の活性化するこの夜、サンタクロースが最後のひと手間を加えるとひとりでに『良い子』の居る場所まで跳んでいくのだ。

 晶さんも、叶も、他のサンタも、マスターも、みんなで1つ1つのプレゼントを配っていく。

「…………。やっぱり、吹雪の影響か」

「いつもより、届けにくいわね」

「マスターは、流石……。難なく配っていっているけど、他はいつもよりペースが遅いね」

「……そうだな」

 みんなそれぞれに四苦八苦しながらプレゼントを配っていく。

 そして予定分が配り終えたのは11時の半ばに差し掛かった頃だった。

 ここから家までは、少なくとも1時間はかかった。

 吹雪の中だから、なおさらだ。

「……間に合わなかったか」

 サンタのみんなの道場の視線が、そっと胸に突き刺さる。

 ぼくは最後の、娘の為のプレゼントに、キャロルを奉じた。


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