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疲労が溜まっていたらしく、ベッドに押し込んだ途端テオは高熱を出し、朦朧としていたが、4日目には意識が戻り、やっと自身が凄まじい左遷を受けた事に気づいたようだった。



そう、私の従者とは出世ではなく、大左遷なのだ。

……………………………………

私はセズ侯爵家の第一子として生まれた。

病弱だった私の母は、出産後まもなくこの世を去ってしまい、父は後添いとして今の義母をめとったのである。


当時の義母は、そこそこ王都に近い領地を持った貴族の家出身で。王都訛りで気取って喋る、最先端のドレスと髪型で武装した10後半の女だった。


そんな女が、ド田舎のたいして資産もない、40近い芋貴族である父の後妻に収まるなど、どう考えてもおかしい。


調べてみたら案の定。


義母はつつしむべき令嬢時代から、複数のボーイフレンドと相当過激なアヴァンチュールを繰り返していたのが判明。

あまつさえ、晩年はかなり身分の高い貴公子(婚約者持ち)との熱愛が噂されており、その勢いたるや略奪婚すら囁かれるほどだったとか。


しかし貴公子はアッサリ婚約者を選び、義母は慌ただしく我が父に降嫁。一年もせずに腹違いの妹を産み落とした次第である。



6歳下で腹違いの妹は大層美しいが、そこに父の面影は全くない。



このくそビッチ、不倫相手の子供を押し付けやがったのだ。

そんな事知りもしない父は無邪気に喜び、妹のための持参金を稼ぐべくに遠方の地に出張している。



父がいない我が家は戦場と化した。


貴公子と関係を持ち続けるために、セズ伯爵婦人として社交界に出張りたい。

もっとゴージャスに着飾りたい。

セズの領地を自分の娘に継がせたい。

自分の娘が不倫の子だとばれたくない。




金持ち商家の出身だった先妻の遺産を相続していて、婿養子さえとれば爵位継承権は第1位。

鈍い父と違い、小賢しく頭が回る性質で秘密に感づいているらしい、自分の血を引いていない義理の娘。


それが私なのだ。


金と爵位、秘密と愛が私1人の死で全て手に入るとなれば、義母は俄然はっちゃけた。


食事には毒が混ぜられ、忠実な使用人は次々解雇。

高い所にいると突き飛ばされ、低い所にいると上から植木鉢。

服は切り裂かれたり盗まれたり。毒虫や巨大なイボガエルと一緒に物置小屋に閉じ込められてしまった事もある。


19歳対6歳の戦いは幼い私の権利をみるみる削り取った。


私が7歳になるときには私の部屋はタンス一つを残して空っぽ。上にも下にも注意を払い、食事は塩焼きした肉のみ。

信用できるのはエミリー独りになっていた。


義母が20歳になると私から強奪したアクセサリーや装飾品を実娘に与え、たくさんの召し使いをかしづかせ。

上や下を調べながら(私を見つけるため) 食事は新鮮な野菜やフルーツ、たっぷりのスイーツ。


21様になる頃には第二の不倫の子を産んでしまう始末である。


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