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身寄りを失い絶望する乳兄を義妹達は慰めたそうだ。



「私のせいだわ」


「お姉さまは危険だと言われていたのに」


「あなたの家族を奪ってしまった」


「ごめんなさい」


「私があなたの家族になるわ」


「ずっと、あなたの側にいるわ」


「ずっと一緒に暮らしましょう、家族だもの」

私への悪意を吹き込みながら、真珠の涙を流す義妹に乳兄は依存し、心酔し、美しい彼は生涯独身で義妹達に使える誓いをたてた。



義妹達は、しょせん義妹でしかなかったのだ。





この事件以降、義妹達は美少年を本格的にコレクションしはじめた。自分専用の召し使いにするべく領地を動きまわり、見いだした美しい男という男を、あの手この手で囲い込んだ。



ひどい借金を負わされた職人の美青年。

婚約者に浮気された村の美男子。

家族が謎の伝染病で死んでしまい、生きるために盗賊になった少年。

仕事中に盗賊に家族を殺され、全財産を奪われた狩人(かりゅうど)の美中年。

収穫目前の畑を焼かれた農家の美形。

冤罪で奴隷に堕とされた美形の騎士。



人々を襲う、小さく残酷な悲劇。

それを颯爽(さっそう)と解決し、慈悲を与える義妹達。

大切なものを失い、悲しみと絶望の淵に落とされた男達は彼女達を救世主と(あが)め、忠実な使用人になっていった。幼い義妹の自作自演とも知らずに。



そう、彼らの悲劇は義妹が仕組んだものだったのだ。



誰が信じられるだろう?


たかが5歳かそこらの子供が、職人に詐欺師をけしかけた事を。

おとなしい婚約者に散々酒を飲ませて路地裏に置き去りにさせた事を。


家族の()んできた飲み水に毒を投げ込み、

助けを求めるフリをして、わざと狩人にゴロツキをけしかけ、対立するよう仕組んだ事を。


何も知らなかった旅の騎士を騙して犯罪の片棒を(かつ)がせ、彼らを騎士ごと捕らえた後で、騎士こそが犯罪者達の首領格だと言わせるよう、そそのかしたのだと。





悲劇の全てが、流された血と涙が、ただ彼らをハレムの一員として囲い込み、はべらして悦に入るために行われたのだと。




もちろん幼女二人では物理的に不可能だ。

彼女達は屋敷の召し使いや、ご用聞きに来た小狡い商人達を使い、テキパキと罠を張り巡らせた。


彼らが用済みになれば?

彼らが事実を知りすぎたら?

私のそばに行くよう仕向ければいい。


私の周りに居る人間は、全て私の身代わりに殺されてしまうのだから。




たとえ彼らが殺されたとしても、義妹達の仕業ではない。

私を狙った暗殺者の仕業。


逃げるように言い含め、路銀(ろぎん)代わりに彼らに与えたはずの指輪やブローチを義妹達が身に付け、ニヤニヤ嘲笑っていたとしても、主人である私の責任。



私の責任なのだ。


義妹達は基本的に別の男達を狙うのだが、二人が同時に狙いをさだめた麗しい神官の末路は悲惨なものだった。



互いに仕込み過ぎたのだろう、義妹でも庇いきれないほど大量の悪魔崇拝や、お布施(ふせ)を着服をした証拠が見つかってしまい、彼は稀代(きたい)の破戒者として火刑に処されてしまった。



彼の死んだ後。義妹達は、荒れに荒れ、私や義母すら無視して、口汚なく(ののし)り合い、取っ組み合いの喧嘩をした。



『着服!?あんたがやり過ぎたから、手に入らなかったじゃないの!!このブス!!』


『それはあんたでしょ!!私のものになるはずだったのに!!まる焦げじゃない!!この年増!!』



義妹達は、世界の主役でも神でもない



この世界を、家畜の小屋か野菜畑のようなものと見下し、そこにある命を、好き勝手に利用し、踏みにじり“消費”し尽くすためにやって来た無慈悲な侵略者。


あるいは【魔王】そのものなのである。


………………………………………


独善的で利己的。

無邪気に狡計(かんけい)を巡らし、人間を騙し討ちにする事も使い捨てる事も、なんとも思わない。

女を見下し、男を人とも思わない少女の姿をした魔物。


国会威信と叡智(えいち)をかけた至上の都も、彼女達にとっては単なる花畑か餌場。



そして全てを独占したがる義妹達は仲がすこぶる悪い。



唯一の獲物を得るため、自身の元に囲い込むため、他人とはもちろん、姉妹間でさえ争うのだ。

その気質のために、二人が気に入ってしまったドレスやアクセサリー、そして男達は無惨な最後を迎えてきた。


原型が残らないほどズタズタに引き裂け壊れても離さない。相手に奪われるくらいなら……と、自ら粉みじんに叩き砕く。いざ独占に成功しても【こんなゴミじゃあ要らないわ】と投げ棄ててしまってきた。



そんな対立する二人を、優秀でやんごとなき美青年達の中に放流してしまうのだ。




……まぁ、おぞましい事になった。




神童は次々と堕落し、あるいは反逆者としてクーデターを(くわだ)て処刑。

良家の子息達は一人残らず婚約者を離縁し、家族を廃着し粛清(しゅくせい)を行い、血濡れになって手に入れた財力と権力で義妹達に愛を歌いだした。



軍人の子息は国家のためでなく彼女のために刀を振るう誓いを起て、軍事蜂起を巻き起こし、男性教師陣は彼女に盲信するばかりで、授業なんて全くしなくなり、不正改竄(かいざん)間諜(かんちょう)まがいの事ばかりする。



留学に来ていた王族に至っては、国会予算を使って義妹達に貢ぎ物を送り、妻に迎えるためならば全面戦争も辞さない勢いになってしまったそうだ。



義妹達の機嫌をとるために、商家が襲われ略奪された。


口答えした貴族の家がお取り潰しになった。


女をはべらしてハーレムを築いている。


花屋に火がかけられた。


宝石屋をまるごと買い取った。


学園にいる全ての男と肉体関係を持った。


学園にいる全ての女を孕ませた。



おぞましい、様々な情報が世界中に錯綜(さくそう)し、学園都市には混乱に乗じた犯罪者と犯罪―――強盗、人さらい、殺人、私刑、強姦、放火など―――が、はびこるようになり、作られて5年ほどで“叡智と最先端の学都”は、“退廃と悪徳の魔都”と化してしまった。



セズ侯爵家取り潰しとかのレベルではない。

王国崩壊や王国破産、世界大戦や世界恐慌レベルだ。



その噂がセズ候領にまで届いた半年後、私達セズ一族は王都に引き立てられる事になった。



国会転覆を狙う【双頭の悪魔】【サバトの女王】の身内としてだ。



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