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嫌いな理由


俺がいつからリディアを嫌いになったかと問われれば、子供のころの貴族の子弟らとの顔合わせの日だったと思う。

リディアは兄と伴って参加していた。

二人は俺が参加したときには多くの貴族の子弟たちに囲まれて談笑していた。


俺はその二人が悪名高いイシュベル家の子供だと知っていた。

少し離れていたところから二人を観察していた俺だったが、なぜかリディアが気になった。

もちろんこのころから自分の妃になるのではないかと言われていたこともあったのだろう。


けど兄とともに気後れすることなく笑顔で話すリディアに惹かれるものがあったのは本当だ。

まぁイシュベル公爵には何度もあったことがあるからといって、子供たちまでもそのような差別のような目で見るのはよくないことだ。

これからは友好的な関係を築いていくことは国にとってはいいことなのかもしれないそう思った俺はその輪へと入っていった。

俺が来たからか二人以外の子弟たちは俺に礼をすると離れて行ってしまった。


「おや、ジェイク殿下ではないですか、ご機嫌麗しゅうございますか?」


リディアの兄が先に俺に声をかけてきた。リディアもつられて頭を下げた。


「ああ…」


なんだこれは二人とも笑っているがどこか鼻につく、どこか人を馬鹿にした態度だ。

輪に入ってわかったがここには侯爵家以上のしかいない。

周りを見渡してみれば端のほうにこの輪に入れない侯爵家以下の位の貴族同士で集まっている。

彼らはこちらを気にしながら遠巻きに見つめている。


「おい、彼らとは話さないのか?」


俺が不思議になって聞いてみれば二人はくすりと笑った。


「おやおや、殿下はお優しいのかな?」


「そうね、けどなぜわたくし達が彼らのような身分の低い者たちと話す必要があるの?」


俺は耳を疑った。


「何を言っているんだ?」


「イシュベルは人の上に立つものだ。上だけを見ていればいい。下を顧みる必要がありません。ほら、そんなつまらないことをすればわたくしは汚れてしまいますわ」


そういって遠巻きに見つめている彼らを見てまた笑った。


その姿に俺はどうしようもなく怒りを覚えた。貴族の世界にはどうしようもなく身分という壁がある。それを打ち破ることはできない。

けどいろんな人と接していく中で王族である自分が友を作ることができた。

共に学び笑えあえる仲間を…なのにこの二人は初めから否定し見下している。


「なんて馬鹿な奴らなんだ。やっぱりイシュベルはイシュベルだな」


俺は気が付いたら持っていた飲み物を一番近くにいたリディアにかけていた。


リディアは最初はしみていくドレスを見て呆気にとられていたが、ゆっくりと俺と視線を合わせてにっこりと笑って、ドレスの裾を持ち上げると淑女の挨拶をした。


「おほめに扱り光栄ですわ、殿下」


「殿下もおいたがすぎるなぁ、さぁこのままではシミになってしまう。おしぼりでももらってこよう」


リディアの兄はそんな妹を見てただ笑っていたが、その場に俺とリディアを置いて取りに行ってしまった。

俺はリディアのドレスを見て少しは悪かったなとは思ったが、謝る気にはなれなかった。


「俺は謝らんからな」


「別に謝ってほしいとは思いませんわ。ジェイク殿下なりの思いがあるのでしょうから」

そういって怒りのかけらすら見せないリディアだったがそこで近づいてくるものがいた。


「あの…これでよければ」


遠巻きにしていた一人の令嬢がリディアにハンカチを差し出した。

それはどう見ても純粋な行為だった。

だが…パシッと音を立ててリディアはその手を払った。


「おいっ!」


その行為を止めることができずハンカチは地面に落ちた。


「あなた無礼じゃない。わたくしをだれだと思っているの?あなたごとき慈悲をかけられるなんて虫唾が走りますわ」


令嬢は落ちた半活を見つめ払われた手を握った。その体は震えていた。


「やめろよ、お前のために貸してくれたんだろうが!!」


「大きなお世話ですわ。ああ興ざめしてしまったわ。お兄様も戻られたようなので、私これでお暇しますわ。皆様ごきげんよう」


そういうなり振り向くことなく兄を連れて帰ってしまった。

ハンカチを渡した令嬢はそのまま走り去ってしまった。

その後は皆気まずげにそのまま解散になってしまった。


この後も二人とかかわることが増えていきそのたびに俺が怒り、二人は笑っていた。


そう俺はこの時からリディアが嫌いなのだ。

人を見下したり馬鹿にした態度をするあいつ、強いあいつも、笑うあいつも…


…だからどうか見てはいけないものは見せないでくれ


いつだって俺は、お前を嫌う俺でありたい


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