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王の気持ち3

リディアの兄の葬式はひっそりとおこなわれた。

公では事故としてかたづけられたためイシュベル公爵が一族の恥と質素に行われたのだ。

それでも名だたる貴族が足を運んだ。

俺は気丈に立つリディアを見ていた。


「そんなに簡単に死ぬなんて、本当に馬鹿なお兄さまだわ」


リディアは横たわる兄を見下ろし花と共にその言葉を口にした。


俺は兄の最後の言葉をリディアに伝えるべくリディアを探していた。

辺りは暗くなり、式が終わりもう誰もいなくなったそこにリディアはいた。

声を出すことなく冷たくなった兄の手を握りながらリディアは泣いていた。

華奢な小さな肩は震え、今にでも消えてしまいそうなほどだ。


「リディア…」


小さく名を呟くがその声がリディアには届かない。

そうこの呟くのようにもうリディアと俺の距離は手の届かないところまで来てしまったのだ。


兄の亡くなった今時期公爵はリディアになる。そうなってしまえばもうリディアを王妃にすることなどできはしない。認められるはずもない。


リディアを支えてやることも、その隣に立つことも永遠にかなわなくなってしまったのだ。

そうこれで最後なのだ。


俺はどうしようもない気持ちにかられそのまま走りよるとリディアを抱きしめた。


「ジェイク!?」


「一人で泣くな、リディア」


「あなた帰ったんじゃ…」


「聞け、俺はお前を王妃にしたかった。けどそれはもう叶いそうもない」


「そうね、私もジェイクの王妃にならなりたかったわ」


今更ながらに独りよがりだと思っていた俺はその答えに呆気にとられた。

しかし今となっては何にもならない。


「王家とイシュベルのあるべき姿に戻ろう。けど、今だけは思う存分に泣け」


「何よ偉そうに…貴方なんて大嫌いよ」


「その言葉はそっくりそのままお前に返す」


小さく笑ったリディアはそのまま声を出して泣き出した。

俺はその背中をさすりながらただ静かにリディアを感じていた。


そう、好きな相手と添い遂げることは難しいものだ。

いつだってうまくいくわけではない。


そんなことわかっている。


―――けどそれならば俺のこの気持ちはいったいどこに捨ててくればいい?


否、捨てることなどできはしない。

いつか公爵となったリディアが登城して顔を合わせることが多くなったら俺は…


イシュベルと王家の関係が崩れてはいけない。


ならこの気持ちが誰かに気が付かれないように隠してしまおう。

俺だけが知っていればいい。

誰にも知られることはなくひっそりとこの胸に咲いた花をめでるのだ。


それは時に甘美で…時にこの胸を引き裂いてくる。


さあ、人々が望むように馬鹿みたいにお前を嫌おう。

共に歩めないのならば嫌ってしまった方が楽でいい。

そうすれば嫌でもお前と話すことができるし、その瞳に映ることができる。


どうせ手に入らないのなら…お前とは正反対な相手と恋をしよう


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