six.
男が8体のロボットたちに命令をすると次々と各地の主要都市へと飛んでいった。
ある者は国会へと乗り込み、ある者は議事堂へと乗り込み、またある者は国のシンボルを倒し、またある者は戦車をもなぎ倒した。
暗い部屋でテレビをつけて、逃げ惑う人々を見て男はにやりと笑う。
3日3晩襲い続け、いつしか8体のロボットたちは『8人の悪魔たち』と呼ばれるようになった。
都市部の機能は麻痺し、皆が恐怖に怯えた。
イヴはシェルターに隠れていた上層部の人間を吊るしあげた。
アダムは避難所に逃げていた街の人間を生きたまま焼き殺した。
アワンはダムを決壊させて水責めをした。
カインは各都市の攻撃部隊を撃破し見せしめにした。
アズラは殺した人間の生首を繋げて歩いた。
ヘブンは武器が収容されている場所を壊した。
ヘルはライブ映像でニュースを流しているアナウンスの首を飛ばし、全世界へ配信された。
エデンは状況を見て的確に全員へと指示を出した。
人々は手も足も出なかった。
「さて、行くとするか」
男は頬を手で叩き気合いを入れるとソファーから立ち上がり真白の何もない部屋へと向かう。
通信機を手に取り、8人の悪魔たちへ連絡をする。
『配信を行う。戻ってこい』
呼びかけるとすぐに『はい』とそれぞれが返事がくる。
それぞれが破壊行為をやめ、男の待つ部屋へと入ってくる。
「ただいま戻りました。マスター」
「無事任務遂行致しました」
帰宅の挨拶をすませると男の後ろへと並ぶ。
全員が揃うと、各地へと既にセッティングされた機械から空中へ大きなスクリーンが映し出される。
その中に映るのは仮面をつけた男と8人の悪魔たちだった。
民衆は突如浮かびあがったスクリーンに釘付けとなる。
そして、悪魔たちの前に立つ一人の男が話すのを待った。
『私はこのロボットを製作した』
一瞬の間のあと、民衆から抑えきれない怒りがこみ上げる。
この男が、この男がいなければ――。
届かない罵詈雑言が飛ぶ。
『私の願いはただ一つ!この世界を私のものにすることだけ』
男に民衆の声は聞こえない。
きっと聞こえていても鼻を鳴らして笑うだけだろう。
『私に従え。さすれば、このロボットたちの破壊を止めてやろう。』
おっと、そうだった。
そう言って男がスクリーンから姿を消す。
『紹介するのを忘れていたね。
右から、イヴ、アダム、アワン、カイン、アズラ、ヘブン、ヘル、エデンだ。
どうだ?可愛いだろう?』
『3日やろう。3日で決めておけ。断れば世界を壊す。そして私も死ぬ。
各国との通信機器は各地に置いておいてやろう。それでは良い返事を期待しているよ』
男は最後ににやりと笑うと通信切った。
「ふふふふふふふふ……はははははははは、はーーーはっはっはっは!」
抑えきれない声は次第に大きくなり、部屋の中に響いた。
イヴたちは静かにそれを見ていた。
そしてこの3日間、世界は悩み続けた。
従うべきだ、という声もあれば、悪魔を殺すべきだという声もある。
しかし有力な武器は全て破壊されており3日では到底作れない。
どうにかして生き残りたいと願う者もいれば、男の配下になりたいという者もいる。
男を殺すべきだという案も出たが、それで殺戮が止まる保障はない。
男を拘束して従わせるべきだと言えば、男の居場所すら分かっていない。
救いの手はない。まさに四面楚歌だった。