珍しい渡来人
珍しい渡来人
「姉貴、風が強い、波も荒れきた。」
雲が空一面に黒くなってきた。
波が風に煽られ、大きく波打ってきた。
今日は外海の岩場で網をかけて小魚を獲る予定だった。
船には姉貴と仲間3人と俺だ。外海に出た途端、急な天候の変化についていけなかった。不味いと思った時舟の頭がガシャンと大きな音を立て、その揺れでオールを落としてしまった。
風に煽られ、舟は、何処にいるかわからない。
喉が渇いた。
2日が経った。
熱い太陽が上がった時、風が吹いてきた。海流が大きな流れとなって、舟を押し出している。
何処に行くんだ。
腹も減り、気が遠くなった。気絶していたようだ。
気が付くとガシャンと岩場に打つかり浜辺に投げ出された。
真っ暗な浜辺だった。
助かったのは、俺と姉貴と仲間の一人だった。
二人はダメだったようだ。
僕らは小屋のようなところに寝かされ、傷に薬草をすりつぶしたようなものが塗られていた。
身体を動かすと痛い、とにかく腹が減った。
気が付くと、スープのようなものを木をくり抜いた器に入れて持って来てくれた。
身体を起こしてくれて、食べさせてくれた女性は、知らない言葉を話している。
魚の肉や木の実が入ったスープは、塩味で、美味かった。暖かい。
小屋は草をかけられた簡単なものだが、広く、安心する。
小屋は、静かに夜が更けていった。
しかしこの小屋は、いまは、何も残っていない。記録もない。
田園が広がるのみであった。
保倉川は、かつては直接海につながる暴れ川だった。
いまは、ただ水田が広がる場所であるが、僕はこの土地に縄文の匂いを感じている。
左岸側に盛り上がる土地があれば、暴れ川の流れの堤防になり、暮らすには便利になるはずだ。
そして内陸にあった黒保遺跡。
この一帯には多くの縄文人の気配が多く残っている。
僕には、彼らの暮らしの姿が見えた。
その丘には、小屋が三つあり、様々に移動していたグループが立ち寄り、暮らす集落があった。
時が経ち、俺は、気がついた。
スープの匂いが漂ってきた。
俺は、暫く眠っていたようだ。
ひと月ぐらいたった時、起き上がり片言の言葉が理解しかけてきた。
姉や仲間も無事に回復しているようだ。
助かったんだなと、ようやく実感していた。
それから二週間ぐらいが経った。
助けられた俺は、とにかく、ここで生きる事にした。
姉貴も世話になった男と仲良くしていた。
久々な太陽。身体が温まる。
ゆっくりとここで何が出来るか、考えないとな。
俺はそんな事を考えていた。
海が遠くで、太陽の光で輝き、水しぶきを上げて、ザブーンと大きな音を立てていた。
空が青かった。




