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両手に片想い 恋のsin(サイン)

掲載日:2026/01/30

あたしは、辻咲かなえ。クラスメイトに恋する高校生。

毎朝爪を手入れして、唇にリップを塗り、産毛を抜いて眉の形を整え、ストレートの髪に櫛を通す。好きな彼の前ではかわいい女の子でいたいから。

そんなあたしは学校では浮きまくっている。別に非行してる訳じゃないのに。腫れ物にさわるような扱いにはあたしも甘んじているから、どうでもいい。

何かと目立つあたしと違って、一方的にあたしが片思いしてる彼は、とりたてて派手な存在ではない。凄く地味に周囲に溶け込んでいて、とてもおとなしい印象しかない。

離れて暮らす姉達は男は所詮顔でしょ、と言うけど、彼は、まあ確かに男らしい顔も好きだけど、それだけじゃないんだ。夏休み明け、髪を伸ばして登校したあたしは、その朝のホームルーム、担任教師に教壇に立たされた。俯いてもセーラー服の襟にかかる、赤みがかかった長い茶髪。そんなあたしを見て皆はどよめいた。嘲笑うような薄い笑み、眼を逸らしあたしが居ないかのように振る舞うクラスメイト。同情もお断りだけど、彼と彼の親友だけは普段と変わらず接してくれた。

今もその友達とじゃれながら会話してる彼を見て、あたしの心は暖かいもので満たされていく。ああ、この思いが届いて、彼もそれに応えてくれたら…。でも、とてもとても告白するなんて勇気は出ない。



僕の名前は鳳啓介。かって一世を風靡した漫才師と一字違い。それはたまたま、であって、両親も祖父母も知らなかったらしい。自分では人並みの容姿を備え、常識もあり、お笑いの要素は皆無だと思っている。友達や先生がどう思っているかはわからない。

一応書道部に所属してるけど、同じクラスに部員が居ないこともあって孤立しがちだ。期末試験で学年トップ10に入ったこともあるので秀才だと思われてるけど、確実に東大に入れると目される程じゃない。


僕には同じクラスで気になる人がいる。

あの人は、いつも孤独だ。僕以外に友達は居ない、と思う。自分は、少なくとも友達だと思っている。学校での会話しか、した事ないけど、本当は、それ以上の関係になりたい。

あの人が笑うところがみたい。普段ニコリともしないあの人を見ていると胸が締め付けられる。可哀想だとか、そんなのとは違う。ただあの人の笑顔がたまらなく好きなんだ。

どうしたら笑ってくれる? 以前はそんなんじゃなかった。四六時中、どうしたら笑ってくれるか、そんな事を考えてる。

普通に遊びに誘ってみようか。何が好きなんだろう? でもイザとなるとその言葉が出なくなる。同級生は誰もあの人と話そうとか、仲良くしようなんて考えない。たまにからからうように、冷やかすだけ。

まるで僕があの人を独占してるような優越感と、ただ見守っているのと変わらない薄い関係に苛立ちを感じる。踏み込む事が怖い? 今の距離を壊したくない?

苛立ちは臆病な自分への怒りなんだろうか。




俺は、岩下雄大。どこにでもいる、地味でクラスに埋没気味な高校生だ。成績は下から数えた方が早いが、かろうじて赤点は取ってないし、今の所皆勤賞なので落第の心配は無い。大学は、まあ、行かなくてもいいか、と思ってる。クラブ活動はしてないし趣味も無い。その上、普段から無愛想な事もあって、級友からは面白味のない奴と敬遠されてる。それでも学校でたった一人だけ友達がいて、どうも彼は俺の事が好きらしい。恋愛対象として。

もっと普通でない事は、学校一美人なコに好かれているらしい、という事。といっても俺自身が何か優れているという事では無いし、何より俺は男を好きになる事は出来ない。

最初は、友人、啓介とそのコ、辻咲が、何か遠回しに俺を挟んで恋愛してるのか、とも思った。だが二人の熱い視線の先を考慮するとどうもそうでは無いらしい。

同じ男を好きなもの同士付き合っちゃえよ、お似合いなんだから! と思わんでもないが、そういう訳にもいかないだろう。

まあ、付き合った所で、今時、全寮制で校則ガチガチな男子校でどれだけの交際が出来るのか知らん。でも、一方で辻咲鼎衛のセーラー服は学校指定のものなんだそうだ。よくわからん。

全てをなあなあにしたまま、今日も俺は啓介とたわいない会話を交わす。そんな俺たちを辻咲がみつめる。啓介と辻咲はお互いが眼中に無いみたいだ。


BGM まふ〇〇/片〇


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