最後の居住者
今日も少女はベッドで星を眺めていた。
きれいな星だった。いつも空は雲などもなく満天の星空だった。
彼女は一人、住居で暮らしていた。ここは宇宙のどこかの星だと言われている。
物心ついた時からだ。彼女は一人だった。
話し相手はこれも物心がついた時からある高さ1メートルくらいのロボットだった。
AIを搭載しているこのロボット。いつも話し相手になってくれる。
言葉もこのロボットが教えてくれた。
「ねえ。今日の気温を教えて」
[今日は最高気温22度。最低気温10度です。風邪をひかないように気をつけてください]
「ありがとう」
運動も日課よ。エアロバイクやランニングマシンも置いてある。
[るなさん。今日も運動を1時間しましょう]
ロボットは私をるなと呼ぶ。だから私はるな。
お父さんとお母さんはいないの。どうしていないか、知らないわ。
私は他に友達もいないし、この住居から外に出たことがないわ。
ロボットはいつも言っている。
外は危ない。危険がいっぱい。安全になるまでこの住居にいましょうと。
テレビはあるけど、アニメばかり。それもいつも同じアニメが放映されているわ。
もう飽きちゃった。
絵を描いたりすることが楽しいのだけど、この満天の空とテレビのアニメを描くだけ。
ちょっと退屈ね。
あと、コーヒーをドリップで淹れるのも楽しみ。
いつもキッチンのボックスに新しいコーヒー豆が入っている。
それで毎朝、ハンドドリップして飲むのよ。
誰かが、このボックスに入れてくるのかしら。それはわからないわ。
私の他に会った人はいない。
誰にも。
ロボットはいつか家族が迎えに来ると言ってくれている。
それだけが希望よ。
そして、ここを出るの。
今はドアは内側からもロックされて開かない。
ロボットはいつも言っている。
オオカミがうろついているから、絶対に外に出てはだめと。
怖いわ。恐ろしい。
ずっと一人で暮らしているけど、変な時もあるわ。
お昼にベッドで横になっていたら、人の話し声みたいなのが聞こえた事があったわ。
すぐ、声はしなくなったけど。
ロボットもたまに変なの。この前、やり取りしてたら、くしゃみしたのよ。
ずいぶんリアルなロボット。人間みたい。
星空も変な時があったわ。いつまでも空が明るく、夜にならなくて、一気に暗くなり、満天の星になったのよ。
住居のコンテナの外にスタッフが数十人いた。
星を出す照明スタッフ。ロボットと通信するスタッフ。コーヒー豆や食料品をボックスにいれるスタッフ。
「交代の時間です」
「ああ。もうこんな時間か。星空を日の出に切り替えてと」
「心理ケアスタッフがまもなく到着します」
「分かった」
「しかし、いつまでこんな事を続けるのですかね。ここが宇宙の星でなく、地球だと彼女が知ったら・・」
「仕方あるまい。彼女が汚染されていない最後の一人なのだから。絶望を与えないように国が決めたことだ」
「生存者保護担当になって、もう15年。彼女が最後の一人ですからね」
今日も太陽が登る。
彼女の一日が始まる。
「おはよう。ロボちゃん。今日の気温を教えて」




