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最後の居住者

掲載日:2026/01/21

 今日も少女はベッドで星を眺めていた。

きれいな星だった。いつも空は雲などもなく満天の星空だった。

 

 彼女は一人、住居で暮らしていた。ここは宇宙のどこかの星だと言われている。

物心ついた時からだ。彼女は一人だった。

話し相手はこれも物心がついた時からある高さ1メートルくらいのロボットだった。

AIを搭載しているこのロボット。いつも話し相手になってくれる。

言葉もこのロボットが教えてくれた。


 「ねえ。今日の気温を教えて」


 [今日は最高気温22度。最低気温10度です。風邪をひかないように気をつけてください]


「ありがとう」


 運動も日課よ。エアロバイクやランニングマシンも置いてある。


 [るなさん。今日も運動を1時間しましょう]


ロボットは私をるなと呼ぶ。だから私はるな。

 お父さんとお母さんはいないの。どうしていないか、知らないわ。

私は他に友達もいないし、この住居から外に出たことがないわ。

ロボットはいつも言っている。

外は危ない。危険がいっぱい。安全になるまでこの住居にいましょうと。

 テレビはあるけど、アニメばかり。それもいつも同じアニメが放映されているわ。

もう飽きちゃった。

 絵を描いたりすることが楽しいのだけど、この満天の空とテレビのアニメを描くだけ。

ちょっと退屈ね。

 あと、コーヒーをドリップで淹れるのも楽しみ。

いつもキッチンのボックスに新しいコーヒー豆が入っている。

それで毎朝、ハンドドリップして飲むのよ。

誰かが、このボックスに入れてくるのかしら。それはわからないわ。

私の他に会った人はいない。

誰にも。

ロボットはいつか家族が迎えに来ると言ってくれている。

それだけが希望よ。

そして、ここを出るの。

今はドアは内側からもロックされて開かない。

 ロボットはいつも言っている。

オオカミがうろついているから、絶対に外に出てはだめと。

怖いわ。恐ろしい。

 ずっと一人で暮らしているけど、変な時もあるわ。

お昼にベッドで横になっていたら、人の話し声みたいなのが聞こえた事があったわ。

すぐ、声はしなくなったけど。

ロボットもたまに変なの。この前、やり取りしてたら、くしゃみしたのよ。

ずいぶんリアルなロボット。人間みたい。

星空も変な時があったわ。いつまでも空が明るく、夜にならなくて、一気に暗くなり、満天の星になったのよ。


 住居のコンテナの外にスタッフが数十人いた。

星を出す照明スタッフ。ロボットと通信するスタッフ。コーヒー豆や食料品をボックスにいれるスタッフ。


 「交代の時間です」


 「ああ。もうこんな時間か。星空を日の出に切り替えてと」


「心理ケアスタッフがまもなく到着します」


「分かった」


「しかし、いつまでこんな事を続けるのですかね。ここが宇宙の星でなく、地球だと彼女が知ったら・・」


「仕方あるまい。彼女が汚染されていない最後の一人なのだから。絶望を与えないように国が決めたことだ」


「生存者保護担当になって、もう15年。彼女が最後の一人ですからね」



 今日も太陽が登る。


彼女の一日が始まる。

「おはよう。ロボちゃん。今日の気温を教えて」

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― 新着の感想 ―
“最後の居住者”という一見悲しいタイトルですが、周りの支えは手厚いお姫様のような扱いですね。 どんな“汚染”が地球を覆って、彼女が最後の1人なのか。 ミステリアスな要素を含んでいて、興味深く読ませてい…
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