【5】大天使、山手線ゲームで詰む
渋谷の夜。
ネオンが瞬き、雑踏がざわめく。
その一角のビル。
カラオケルームの一室に、既に二人の姿があった。
「この部屋、狭くない?
四人でカラオケするなら、もっと広いほうがいいでしょ!?」
ロクシーがソファを睨み、舌打ちする。
「フフフ……分かってないな、ロクシー!」
ルチアーノが黒スーツを翻し、胸を張った。
「これは恋の作戦第2弾!
狭い=密着!
リリカルな距離感を演出するのだぁぁ!」
……完全におじさんの発想じゃん。
ロクシーの冷たい視線も届かない。
「それに今日はカラオケじゃない!
やるのは――山手線ゲームだっ!」
「はい出た!山手線ゲーム!」
ため息をつきつつも、ロクシーはスマホをタップして笑った。
「でも前払いは貰ってるから♪勉強してきたわ!」
その時。
廊下から、ピンヒールのコツコツという音。
現れたのは――白いコートの金髪美女。
後ろには柄on柄スーツの男。
「……っ!?」
ロクシーは息を呑む。
うそ……!
ルシアンの初恋の相手って……全米No.1ランジェリーモデルのアンジュ!?
やば……細いのにたわわ……てか普段着までランジェリー!?
ルチアーノは満面の笑みで両手を広げた。
「おおアンジュちゃん!よく来た!
飲み物は?このぷるふわ苺とマンゴーパフェ食べるか!?」
……完全に幹事のおじさんじゃん。
ロクシーがブハッと吹き出した。
「山手線ゲーム、開幕!」
ルチアーノの高らかな宣言で始まったのは――
「よし!お題はルシアンの良いところ♪」
パン!と手を叩くルチアーノ。
「はらっ♪ルシアンと言ったら――無表情♪」
褒めてるつもりでディスっている。
「ルシアンと言ったら――センス❤️」
契約通りに答えるロクシー。
「ルシアンと言ったら――冷静♪誠実♪勇敢♪」
真面目天使、全力投球。
「待て待て待て!ルシアン!」
机を叩いて止めるルチアーノ。
「一個ずつだって言ってんだろ!
アンジュちゃんにアピールしたい気持ちは分かるが、押し付けは嫌われるぞ!」
「理解した。ではこのゲームは私の負けだな。
アンジュ様からどうぞ」
……どこまでも真面目。
「……え、えーと……」
沈黙。
長すぎる沈黙。
大天使ガブリエルは汗をにじませ、ようやく口を開いた。
「ルシアンと言ったら……真面目……♪」
ルチアーノは心の中で絶叫する。
アンジュちゃん……!
ルシアンのこと分かってる……!!
その後も続くゲーム。
「ルシアンと言ったら――クローゼット♪」
「ルシアンと言ったら――イケメン❤️」
「ルシアンと言ったら――忍耐♪律儀♪」
「だから!!一個ずつだって言ってんだろおお!!」
ルチアーノの怒声が響く。
「……っ!?」
ガブリエルは唇を噛んだ。
もう無い……!
褒め言葉が、無いではないか!
だが、私は大天使ガブリエル。
この新たなる神の儀式――絶対に乗り越えてみせる!
「ルシアンと言ったら……報告書が正確……♪」
完全にリズム崩壊。
だが心は聖なる決意に満ちていた。
リズムなんてどうでもいい。
これは大天使として、絶対に負けられぬ戦いなのだ!
そして夜八時に始まったゲームは、翌朝五時に幕を閉じた。
「もう始発が走ってるから、私は行くね!
次はロンドンなの!ルチアーノ!さっきのお願い実行してよ!」
そう言ってロクシーは渋谷駅へと去っていった。
残されたのは――
ご機嫌なルチアーノ。
無表情なルシアン。
そしてルシアンにお姫様抱っこされて爆睡するガブリエル。
ルシアンは理解していた。
ガブリエルが恩寵を消しているため、人間同様に疲れ眠っていると。
だが、自らの恩寵をガブリエルに使うのは恐れ多く、控えていたのだ。
ルチアーノが鼻息荒く叫ぶ。
「よし!これでアンジュちゃんを落とすぞ!
初恋作戦・第3弾!
花園で目覚めるアンジュちゃんだあぁぁ!!」
ルシアンは眠るガブリエルに視線を落とす。
――意味が分からない。
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