9/100 兄
私には兄がいる。
今まで話したことがない事からわかる通り仲良くはない、かと言って仲が悪い事もない至って普通の兄弟だ。仲が悪い時期もあったし仲が良い時期もあった。そこそこ恨んでいることもあれば感謝していることもある。
なぜこんな話を急にした方言うと理由は単純で兄から連絡があったからだった。
「元気か?」
兄から送られて来たのはそれだけだった。兄というのは不思議で本当に追い込まれた時はいつも連絡があった。それが家族というものだろうか。
「普通だよ。どうして?」
「いやなんとなく。今度飲みにでも行くか?」
「家まで遠いでしょ」
「今度そっちの方がいく用事があるんだよ。」
「わかった。いつ来るの?」
「明日」
正直私の中でも家族のことは心に引っかかるものがあった。家族には寿命の事を伝えた方がいいと思ってはいる。しかしどう伝えたらいいものか全く想像がつかなかった。柄にもなく兄に相談するのもいいかもしれない。
私の家族で特筆すべき事はないだろう。母と父と兄の4人家族。祖父母はもういないが仲が悪いという事はなかった。富豪からみたら貧乏人に貧乏人からみたら裕福に見える家庭だ。
そんな普通な家族だからこそ寿命などという突飛な事をどう伝えたらいいかわからないでいた。
その日の夜遅く私は母に突然メールを送ることにした。
「今度家行っていい」
明日には返事が来るだろう。眠れない夜からしたらやけに長いかもしれないが。