8/100日 豪遊
人生で本当に買いたいものは何だろうか?ショッピングモールの真ん中で私は自問自答に耽っていた。
例えば車、欲しくないと言えば噓になるがそれは見せる相手や乗せる相手や何年も持っているからこそ満たされるのだろう。家やファッションに関するものや何もかもそんな気がしてくる。
あと10年も経てば金の感覚も変わってきて欲しいものが出てくる気がするがそれは願えない。
仕方なくショッピングモールの一角にあるフードコートで一番高い店に入ることにした。どこか落ち着いているその店は有名なとんかつ屋のようで客層からして違った。
一番高い料理を頼むと見たことのない厚さのとんかつで箸で切れそうな柔らかさだった。しかし二口目は食べることができなかった。知らない間に食欲が信じられないほど落ちていたのだ。
しばらくトンカツを箸で弄んでいた。この豚も出来ることなら食べられたかったのだろう。もしかしたら私はこの豚が血となり肉となる前に死ぬかもしれない。どこまでも虚しい存在になっているのかに気がつくと急にこの店にはいられない気がしてきた。飯を食べて新たな活力を得ても仕方がない様な人生が現在ある私の存在なのだろう。
店を出ると目に入ったアパレルショップに入った。見れば見るほど今の私には必要がないものの様な気がするがその事は認めたくなく適当に手を取っては買って行った。
次の店でも同じ様なことを繰り返した。クレジットカードを使って豪遊を繰り返した。試着も何も考えずにただ買い物をしていった。買えば買うほど虚しくなる豪遊を繰り返した。
気がつくとクレジットカードの枠を使い果たしてしまい、意味のないガラクタと虚しい心だけが残った。
寝不足で頭がクラクラするもう死んでしまった方がましかもしれない。
そう思いながら重い足を引きずり正解の目的地かどうかわからない家へと向かった