23/29
21/100 帰宅
「おかえり」
誰もいないはずの家から声が聞こえてきた。その声を落ち着いて聞けたのは私が疲れすぎていたのかそれともそこの声に聞き覚えがあったからなのかわからないが、ともかく私は吸い込まれるように室内に入った。
靴を脱ぐのも面倒くさくて土足のまま黙って部屋の中に上がって行った。
「大丈夫?」
部屋の中には恋人がいた。心配そうに私の様子を伺っていた。
「なんで人って死ぬんだろうな」
私でも口から出たのが驚く言葉だった。こんな子供っぽいことを考えていると思われたら恥ずかしいような言葉だった。その上でその言葉を発した瞬間自分でも理解できない涙が流れてきた。
「なんでだろうね」
恋人のその言葉を聞くと情けなさと恥ずかしさで涙が更に出てきた。
「なんでこんな苦しむ必要があるんだろう」
「なんでだろうね。」
「こんな苦しむ予定じゃなかったのに」
溢れる涙は止まることを知らなかった。いつしか私は今まで借りたことがなかった、他人の胸の中で泣き続けていた。
泣いて泣いて泣いても出てくる涙で疲れ切っていつしか私は眠りについていた。
起きると誰もいない部屋に私はポツンと存在した。今までのことが全て嘘ならいいのにと思うが無理を続けた身体今までの何倍も痛んで今日までのことが幻でないと主張し続けた。




