14/100 出会い
「今日はよろしくお願いします。」
目の前に爽やかに笑う人物を今までならまっすぐに捉えられなかっただろう。しかし今は違うその笑顔に私が出来ていない覚悟が隠れているのだから。
「よろしく」
それでも笑顔で返せない私に嫌気がさす。しかしそんな事を微塵も気にしないのか相手は続けた。
「最初で最後になってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。」
「そうだね。よろしく」
「それで早速リハーサルをおこないたいんですが。」
「そうだね。時間ないんだよね。」
「いえいえ、昨日の打ち合わせでかなりブラッシュアップされたので何もしなくても大丈夫だと思いますが、万全を期したいので。」
それから2人で入念に打ち合わせをした。そして私達は作戦の肝である2人を待つのだった。
「緊張しますね。」
「そうだね。」
相手は待っている間も私の事を気にかけて声をかけてくれた、人間覚悟が決まると人に優しくなるのかもしれない。
「来ました!」
静かだが興奮した声で相手は私に言った。確かに遠くに男女の姿が見えた。
「よし!」
そう言うと私たちは道路に出て喧嘩の芝居を始めた。
「ふざけんじゃねえよ!」
私は叫びながら相手の胸ぐらを掴む、緊張から力みすぎて相手の服が少し破けた。
「なんだよ!てめぇ!!」
相手も迫真だ、私な服から嫌な音が聞こえた。そんな演技をしていると遠くから声が聞こえた。
「何やってんだ!やめろ!」
予定通り喧嘩を止めてくる。私はそれに被せるように言った。
「なんだテメェ!関係ねぇだろ!」
あっという間に3人でもみくちゃになった。奥から誰か走ってくる。声にならない声で必死に仲裁をしようとしている。そんな中急に爆音が鳴り響いた。2人が大好きだと言う曲で告白がテーマの曲だ。残念ながらその曲の事を私は今日まで知らなかったが一部では人気の曲なのだそうだ。
その瞬間、私達3人は踊り出した。
私は昨日の一夜漬けで覚えた曲を必死に踊る。
なんな企画をするくらいだ。2人の踊りは完璧だった。
駆け寄ってきた子の顔を見る余裕もなく踊り続けやがて曲は終わった。そうすると走って寄ってきた子が喋り始めた。
「急にごめん。どうにかして思いを伝えたくて色々手伝ってもらってやりました。付き合って下さい。」
「はい」
正直私はこの催しが最初から最後までわからなかった。そしてこれが成功する意味も分かってはいない、それでも依頼者の顔が満足そうで私は嬉しかった。決して後数時間で死ぬ人間の顔とは思えない表情だった。




