10/100 秘密
「元気にしてたか」
「まぁ元気かな」
「本当か」
「本当だよ」
兄は鋭く私を見た。兄というのはここまで鋭いものだとは思っていなかった。
「そっか、まぁ酒でも飲むか」
「ああ」
目の前に山のように積まれた酒とつまみは兄の趣味だった。会うときは家で倒れるまで飲むというのが兄との恒例行事だ。残念なことは今の体力では十分に楽しめそうにないという事だ。
「最近どうなんだ。」
「普通だよ」
「そっか。仕事は順調か。」
急に確信めいたことを聞いてくる、誤魔化してもいいが正直にいう事にした。
「辞めたよ」
「え?」
「もう10日前かな」
「……合わなかったのか?」
「合わないというか。なんというか」
「次はどうするんだ。」
「とりあえず休もうと思ってて」
「どれくらい休もうと思っているんだ」
「100日間かな。」
「100日後に死ぬワニかよ。」
死ぬと聞いて少し焦ったが素知らぬ顔をして話を続けた、
「流行っているのそれ?」
「聞いたことない?面白かったけどな。」
「ふーん」
ふと、兄に今の状況を話してみたいという衝動に駆られた。
「もし、100日後に死ぬとしたらなにする?」
「え?なんだそれ。」
「仕事していない時期に思いっきり遊ぼうと思っているんだよ。」
「ムズイなぁ。まぁみんなに相談するかな。」
「相談?」
「どうせ死ぬことは変えれないとしたら思い切ってみんなにぶちまけるかな。ひとりひとりお別れを言ったりどうしたいいか相談したり。自分の頭なんかじゃ思いつくことなんてたかが知れてるからな。」
「でも信じてくれないんじゃない」
「そうだろうな。でも関係ないだろ。どうせ死ぬし。」
私が今まで思いつきもしなかった方法だった。人に話したところでしょうがないという私の考えとは真っ向から違った。
「もしさ……」
「……どうしたんだよ」
「なんでもない」
少しの気の迷いというか何か不思議な魔力で兄に相談しかけて私は口を噤んだ。
「そっか。まぁ飲もう。」
兄はそういうと変に詮索をすることなく酒をあおった。それから特に実のあるような話をしないで酒を飲み続けた。長く飲んでいるうちに気が付くと私は眠っていた。
今日は久々に満足のいく一日となった。




