◇番外編:リシャール・デルト視点◇
こちら番外編です。
とても短いリシャール・デルト殿下のお話。
本編完結はいっこ前。
「本物の『王太子』はリシャール・デルト殿下です」
その言葉が、本当は嘘だとリシャール・デルトにはわかっていた。
優しい噓、なのだと。
青いドラゴンの背に乗り、空高く飛んでいくルビアを、リシャール・デルトは見送りながら、ぼそりとつぶやく。誰にも聞かれないような小さな声で。精霊の言語で。
「≪嘘つきというのなら、私もだ。友なんかじゃない。本当は君に、私の隣にいて欲しかったよ≫」
この星詠みの国でたった二人だけ。
ルビアとリシャール・デルトだけが「星詠み」を信じていなかった。
たった二人。共感。あなただけが私を理解できる。
そんな感情は恋や愛に転じやすい。
「≪好きだったよ、ルビア・マリー。君が私を選んでくれたら。共にこの国を変えていけたら。そう願っていたけどね。だけど、私はこの国を捨て去る決意は持てなかった。私だって君だけを選べなかった≫」
もしも、リシャール・デルトがこの国の王となる願いを持たなかったら。
もしも、国を捨てて、ルビアとどこか遠くに行くという願いのほうが強かったら。
「≪国か、君か。二つに一つ。私は君を選ばなかった。国を、選んだ≫」
だから、ルビアに『友』と告げた。
自嘲するようにリシャール・デルトは笑う。
「≪私が自分で選んだ未来だ。無能な弟も、占いがなくなれば何の判断もできなくなるであろう父王も蹴飛ばして、この私が王となる。このヴェンタールから星詠みなどをなくしてみせる。そのためにはまずあの『天降石』か……。この混乱に乗じてなんとかできないかな≫」
リシャール・デルトはあたりを見回す。
「まずは救護か」
無事だった者たちに、指示を出す。
救護室を設置し、けが人や気絶しているものをそちらに移動させよと。男女別に部屋を分けることなど、細かい点までも告げていく。
腰を抜かしたまま、へたり込んでいるギイ・クロードをどうするのかと、兵の一人が聞いてきた。
「王族であるのに対処など何もできないでいるものなど放っておけ。あんな無能よりも、気絶したご令嬢たちを丁重に運べよ」
にやり、と。わざとらしく嗤えば、問うてきた兵もおかしそうに笑った。
「了解しました殿下っ!」
すべての報告はリシャール・デルトのもとに集まった。
その報告の中に「ドラゴンが神殿にやってきて『天降石』を持ち去った」というものもあった。
報告を聞いて、リシャール・デルトは一瞬だけあっけにとられ、そして、大声で笑った。
「ありがとう、ルビア・マリー。感謝する」
星詠みができなくなったヴェンタールは混乱するだろう。
その国を、自分の手で新たな国に建て直す。
リシャール・デルトは自分の両手をぐっと握った。
王となる道を、リシャール・デルトは、一人、歩く。
そんなリシャール・デルトの元に白いドラゴンがやってくるのはまた別の話。
番外編までお付き合いいただきましてありがとうございました。
赤いの(コウ)の娘、三匹の子竜のうち、白いのが、そのうち押しかけ女房としてリシャール・デルト殿下の元へやってくる設定がありましたが、まあ、蛇足かなと思ってカット。
このお話はこれで終わりです。
お読みいただきましてありがとうございました!!
拍手、ブクマ、誤字報告などなど、下さった皆様ありがとうございますm(__)m
お返事を書く時間がないため、感想欄は閉じていますが、拍手などで意思表示いただけるととても喜びます(*´▽`*)
それから、
一迅社アイリスNEO様から、来月私の初めての書籍である
『悪役令嬢は素敵な旦那様を捕まえて「ひゃっほーい」と浮かれたい 断罪予定ですが、幸せな人生を歩みます!」が発売されます。
そちらの番外編をいくつか書いて、なろう様に投稿していこうかなと考えています。
もしくは全く新しい別のお話かも。
また別のお話でもお会いできましたら幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




