表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】星詠みの国の悪役令嬢  作者: 藍銅 紅@『前向き令嬢と二度目の恋』2巻 発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/40

◆第十話 ④ ◆

一瞬、何が起こったのかわからなかった。

だが、見上げれば、ダンスホールの天井はなくなっていた。

ぽっかりと空いた其処から、青く晴れた空が見えた。


何が起こったのかと思う間もなく、すぐに、地面が揺れた。

何者かによって、天井が取り外され、それが放り投げられた。その衝撃によって、地面が地震のように揺れたのだ。


揺れと、轟音。


会場に居る者たちには何が起こったのかはわからず、ただ起こった轟音に耳をふさいだ。

立っていられずに倒れた者もいた。騎士たちは、流石に足に力を入れ、その場に踏みとどまってはいたが、それでも体勢を崩していた。


そんな中、青い空を背に、のっそりと、な巨大なドラゴンがあらわれた。

ぎょろりとした大きな目で、会場内を一瞥する。


叫び声が上がった。

逃げようとした者たちが、出口に向かって殺到する。

失神した者、その場にへたり込んだ者もいる。

ギイ・クロードとナナ・アニエルも、へなへなとその場に座りこんだ。

リシャール・デルトは、現れたドラゴンと周囲の様子を素早く見回した。

ドラゴンに対応できる戦力はない、ならば、この場に居る者たちを、逃がさねばならないと考えたのだ。慌てるな、ゆっくりと逃げろ、とリシャール・デルトが叫ぶつもりだった。

けれど。


ルビアが、ドラゴンを見つめ、信じられない思いで呟いたのだ。


「セイ、様……?」


吐息のような小さなつぶやき。それが聞こえたのか、ドラゴンは、その瞳をルビアに向けた。


開いた天井から、ドラゴンが顔を伸ばしてきた。じっと、ルビアを見つめる。

ルビアは、がくがくと震えながら、それでもドラゴンに……セイに、手を伸ばした。


「本物ですか……? 本当に、セイ、様、なの……」


ドラゴンが咆哮を上げた。空気がビリビリと振動する。逃げまどっていた者たちも、あまりの恐怖にその場から動けなくなった。


取り外された天井から、ドラゴンが舞い降りる。ルビアのすぐ近くまで。降り立った衝撃で、またもや地面が揺れた。ルビアは体勢を崩しながらも、それでもドラゴンに手を伸ばす。ドラゴンはそのルビアの手に、顔を寄せていった。

震えるルビアの掌が、ドラゴンの頬に触れた。ごつごつとした鱗に覆われた皮膚を、ルビアは、そっと撫でてから、頬を寄せた。


「探した」


ドラゴンが……セイが、ぼそりと告げた。


「いきなり消えたから、何が起こったのかと思って。わかんなくて、呆然としてたら、コウに殴られた」

「え、え、え。な、殴る……?」

「うん。さっさと探しに行けって。星詠みの国ってどこだよって、知らないから、精霊の女王ところまでまず行って、あちこち見て回って、ニオイとか辿って」

「えっ! に、においって」

「ルビアは花みたいにいい香りがするんだよ。でも、遠いとわからなくて。だから……迎えに来るの、おそくなってごめん」


ルビアは首を横に振った。迎えに来てくれた。自分が絶望している間にも、探してくれていたのだ。

じわじわと、ルビアの身体に温かいものが通るような気がした。


「わたし……セイ様との日々は夢かと思って」

「夢じゃないよっ!」


ルビアは頷いた。

だけど、きっと、リシャール・デルトがいなければ、絶望したままだったに違いない。


「でも、リシャール・デルト殿下に支えていただいて……これから北まで確かめに行こうと思っていたところなの」

「え、ルビアがこっちまで来るつもりだった⁉」


それは大変だと、セイは思った。


「でも……会いたくて」


ルビアが、そう告げると、セイの口元が少しばかり緩んだ。どうやら微笑んでいるらしい。


「うん……、うん。会いたかった。すっげえ、会いたくて、だから、飛んで、ここまで来たよ」


へへへ、とセイは笑った。

ドラゴンの姿のままで微笑んでも、それはルビア以外には恐怖でしかなかったのだが。


ガタガタと震える大勢の者や、ドラゴンを攻撃しようと奮い立っている騎士たちをリシャール・デルトが何とか抑えていた。


ルビアも、セイも、ようやくそれに気が付いた。


「あ……」

「あー、人間って、ドラゴン怖いんだっけ?」

「えっと、セイ様。人の形に変化すれば……」


そうすれば少なくとも怖がられはしないとルビアは思った。ルビアはセイのことを知っているから、ドラゴンの姿でも恐れることはないが、他の人間にとって、巨大なドラゴンは恐ろしいのだろう。


だが、セイは「うー……」と低く唸った。


「えっとな、人の形になれることはできるけど……」

「はい」

「……服が、ないから。その、また、裸体に……」

「あ……」


思い出して、ルビアの頬が赤く染まった。


「だから、ホントはルビアを抱きしめたいなーって思ってるんだけど、できなくて」


さらに首までが赤くなる。


「えっと、それは、あの……北に、向こうに着いてから、お願いします……」


言ってから、はしたないことを思わず告げてしまったと、ルビアは下を向いたが、セイは喜色満面で、咆哮を上げた。


会場の窓や壁、床までが更に揺れた。

そこに、翼の生えた赤い髪の女性が空から舞い降り、ドラゴンであるセイの頭をその足で蹴っ飛ばした。


「ちょっと、いちゃついてないで周り見なさいよっ! 人間の皆様、恐ろしがっているじゃないっ!」


コウと、それから三匹の小竜たちだった。




お読みいただきましてありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ