表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】星詠みの国の悪役令嬢  作者: 藍銅 紅@『前向き令嬢と二度目の恋』2巻 発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/40

◆第八話 ③ ◆

連載再開


本日 第八話③と④を投稿しておりますm(__)m

花の蜜を吸う。木に生っている果物を取って、洗いもせずにそのまま食べる。集めた藁や木の葉の上にシーツを広げて、その上で眠る……。

セイとの暮らしは、ルビアにとって未知のものばかりだった。

化粧もしない。着ているドレスの裾も擦り切れてきた。川で水浴びなどはさすがに躊躇したが、何度か繰り返すうちに慣れた。日焼けを気にせず、太陽の光を浴びるのは気持ちがいい。葉っぱの上に載っている朝露を、そのまま啜るようにして飲むなど、ロシュフォール侯爵家で暮らしていた頃には考えもしなかった。そもそも野外で過ごすことなどありえないのだ。けれど、ルビアは毎日が楽しかった。肩からは力が抜け、自然に笑みを浮かべていた。

特に楽しかったのは、コウが自身の子を連れてやってきたこと。


「ど、ドラゴンの……といいますか、コウ様のお子様……ですか?」

「そー。黄色いのと黒いのと白いのね」


ころころと転げまわる三匹の小竜たち。背中の翅もルビアの掌ほどの大きさほどしかない。その小さな翅をパタパタっと動かしながら、ルビアの周りを飛んでいる。初めて見る人間に興味があるのか、近寄っては遠ざかり……というのを繰り返している。しばらくの後、その三匹の中で、白い小竜が、座っていたルビアの膝に乗ってきた。そしてその膝の上からルビアを見上げ、にぱっとした笑みをルビアに向けた。


「か、かわいい……」


ルビアがそう呟けば、白い小竜はルビアの膝の上で丸くなった。

それを見て、今度は黒い小竜がルビアの膝の上にやって来る。

黄色い小竜はもう膝の上に乗れないと見て、ルビアの頭の上に乗り、「くはあ……」と欠伸をした。


「あっはっは。あたしのチビ共はルビアのことを気に入ったらしいね。ルビアっていうか、良い昼寝場所って思っているのかもだけど」

「え、えと、えと……」


ルビアの頭の上と膝の上でうとうとしかけた小竜たちを、顰め面のセイが一匹ずつ摘まみ、そしてコウの方へと投げた。


「ルビアはお前たちの寝床じゃねえよっ!」


低く唸ったセイに、小竜たちは「キイキイ」と声を上げて文句を言う。


「ははは、ルビア、モテモテだあねえ。セイでもうちの子たちでもいいけど、どれか選んで番になれば?」

「え、ええっと……」


戸惑うルビア。


「ガキどもが大きくなるまでに、人間なんか死んじまうだろ」


不機嫌そうに、セイが呟いた。


「じゃあ、やっぱりセイ兄が番えばいいじゃん」

「赤いの。お前なあ……」

「なんか問題あるの? ルビア、可愛いし。一人じゃ生きていけないって言うんだから、セイ兄が面倒見ればいいし。それにセイ兄、発情期だし」

「そういうコト、言うんじゃねえよっ! オレがルビアに迫ったら、ルビア、オレのこと、拒否できねえだろっ! 」

「ん? ルビアだってセイ兄が嫌だったら嫌っていうでしょ?」

「メシとか寝るところ、用意してやるからオレと番えなんて……脅しじゃんかよ」

「あー……、じゃあ、セイ兄がフラれたら、ルビアの衣食住はあたしが用意するよ。それならいいでしょ?」

「いいでしょ……って、お前なあ……」

「セイ兄じゃなくて、ルビアに聞いているの。ねえ、ルビア、セイ兄と番う……ええと、人間ふうに言うとケッコンってヤツをして、セイ兄の子ども産む気ある?」

「え、え、えっ!」


コウの言葉に、ルビアは戸惑った。


「ちょうどいいと思うんだけど。どう?」

「ど、どう……と言われましても」

「だってルビア、成体でしょ? セイ兄の子ども、産んで、一緒に暮らすのに、何か問題ある?」

「も、もんだい……」

「人間って、竜が怖いとか気持ち悪いとか、そういうふうに言ってくる奴もいるけど、ルビア、あたしの子たち見て可愛いって言ってくれたから。生まれてくる子が竜でも大丈夫でしょ?」


コウの側で丸くなってスピスピと眠る小竜たち。その子らを見て、やはり可愛いとしか思えない。

けれど……。


ルビアには、いずれ破棄されるとはいえまだ婚約者がいる。ギイ・クロード・ヴェンタール第二王子だ。ギイ・クロードを思い出し、ルビアは暗い気持ちになった。

セイやコウとの楽しい暮らしに、彼の名を出したくなかった。


(もう……星詠みの国のことは忘れても……いいの、よね? わたしは『悪役令嬢』の運命から……解き放たれたのよね? 自由に……未来を選べるのよね?)


選びたい。強くそう思った。


(あの国から離れて、自由に未来を選択できるのなら……わたしは、セイ様やコウ様の側で生きていきたい。何も出来ないわたしは……お二人に迷惑をおかけしてしまうと思うけれど……。お二人がそれを許してくださるのなら……)


「あー、いきなりケッコンとか、番とかよりも、シンプルに考えてよ。ルビア、コウ兄のこと、好き? 嫌い?」


コウに問われ、ルビアはじっとセイを見た。

ティールブルーの落ち着いた青緑色。人間の姿も、ドラゴンの姿も、どちらも素直に綺麗だと思う。


「セイ様は……わたしのこと、ご迷惑ではありませんか……?」


迷惑と思われないのなら。ここに居ていいと言われたのなら。

縋るように、ルビアはセイを見る。


「は? 迷惑? そんなこと考えたこともねえぁ」


セイはさらっと答えた。


「でも……わたし、食べるものを取ることもできませんし……。といいますか、ここでは何もできないのに。すべてセイ様とコウ様に面倒を見ていただいて……。お荷物、なのに」

「出来ないことを数えるよりも、これからできることを増やせばいいんじゃね?」


またもや、さらりとセイが言う。


「で、では……、わたし、覚えます。色々……。できること、増やしていきます。ですから……ここに、居て、良いですか……?」

「もちろん」


セイが笑った。


「どこに居るなんて、ルビアの自由だよ。あたしのお勧めはセイ兄と番ってもらって、子を成してもらえればって感じだけど。じゃないとセイ兄、発情期逃して一生一人かもねーって思うから。だけど、それが嫌なら、あたしと一緒にあたしの子を育ててみる?」


コウも、へらりと笑いながら言う。


セイの隣で、コウも一緒に。そして、この可愛いコウの小竜たちと一緒に遊びながら暮らす……。


(なんて素敵な未来……)


うっとりと、ルビアは夢を見た。


「わたし……今はお二人のご負担にしかなっていないと思うのですけれど。それでも、いつか、自分の身のまわりのことくらいできるようになったら……」


今は、まだ、何も出来なくても。

いつか、色々なことができるようになったら。


「セイ様の……お傍に居たいです」



大変ながらくお待たせいたしましたm(__)m


「ひゃっほーい」の書籍化作業もだいぶ進み、時間が少し取れるようになりましたので、連載再開。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ