◆第六話 ③ ◆
かごを両手に持ち、目より高い位置で捧げる。そして、そのまま恭しく一礼をした。
「≪妖精の女王陛下に申し上げます。我々は……≫」
「≪名乗りなら、先ほど受けた。誰か、そのかごを受けとれ≫」
妖精の女王へと挨拶をしようとしたリシャール・デルトの声を、その女王が遮った。
そして、リシャール・デルトとルビア・マリーの捧げたかごを、飛んできた妖精たちが持って行く。
「≪ねえ、美味しそう! 食べていいの?≫」
「≪駄目よ! 女王様が貰ったものよ≫」
「≪でもでもっ! このミルク、おいしそう……早く飲みたいっ! ねえねえ、女王様、飲んでいいでしょう?≫」
飛び回りながら、きゃらきゃらと歌うように妖精たちが言う。どうやらルビア・マリーたちが捧げたものは妖精たちのお気に召したらしい。ほっと、ルビア・マリーは息を吐いた。
「≪さて、この貢物の礼をせねばならんのだが……≫」
すうっと。音もなく。
女王は、その大きな顔をルビア・マリーとリシャール・デルトに近づけた。
鼻と鼻が触れそうになるほど近くから、じっと目を見つめられる。
驚きよりも恐怖よりも、女王の真っ黒な瞳に、ルビア・マリーは吸い込まれそうになった。
(夜空……。星の無い、真っ暗な空のよう……。妖精の女王の、この暗闇のような瞳の中に吸い込まれたら、いったいどうなるのかしら……)
太陽が天にある昼間でさえ暗い坑道の中。鉱山で採掘のための掘削される地下の通路。
妖精の女王の瞳を見つめていると、そんな道を歩いていくような錯覚に襲われた。
「≪明かりもない暗い道を、一人、歩いていく勇気はあるかね……?≫」
低く、地の底を這うような妖精の女王からの声。
その声にリシャール・デルトは「≪はい≫」と即答した。
そして、ルビア・マリーは「≪一人では、怖いです……。でも、誰かに、手を引いて、貰えるのなら……≫」と小さく呟いた。
「≪そうか……≫」
顔だけの、妖精の女王がにたりと笑った。
昼間から夜にと移る黄昏時。
ルビア・マリーの髪の色のようなオレンジと、間もなく夜になるという暗い空の色。
その夕闇の色に溶けるようにして、リシャール・デルトとルビア・マリーの姿が消えた。
「≪さて、この者たちは何を見るのかねぇ……≫」
歌い、踊り、舞う妖精たち。笑い、声を張り上げ、そして……その祭りのような喧騒の中、妖精の女王も、二人と同じく闇に溶けた。
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