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戦いのあとは

「さて、どうしたものかな……?」


倒れ込んだルクスさんを見下ろしながら、俺は頭を抱える。放っておくわけにもいかないが、このまま目を覚ますまで待つのも気が重い。起き上がって再び襲われたら、それはそれで面倒だ。


俺は被害者のはずなんだけど、見た目的にはイケメンをぶちのめした俺が加害者にしか見えないよなぁ。しかも、相手は売り出し中の有名パーティーの一員。守備兵とか警察みたいな組織に説明したところで、納得してもらえる気がしない。


「……連れて行くしかないか。」


ため息をつきながら、俺はルクスさんをどうにか抱え上げる。自分の部屋に連れて行く以外に選択肢が思い浮かばないのが悲しい。


途中、ルクスさんがうめき声をあげて目を覚ました。


「う、うぅん……痛たた……」


「おはようございます。目が覚めましたか。」

俺は肩を貸しながら声をかける。


「……こんな状態で何だけど、話を聞かせてもらえるかな?」


「ええ、構いませんよ。でもその前に部屋まで移動しましょう。さすがにここで話すのは不便ですし。」


部屋に到着すると、ルクスさんをベッドに寝かせた。俺は椅子を引き寄せて彼の正面に座る。


「具合はどうですか? そこまでひどくはしてないんで、話くらいはできると思いますけど。」


「いや、参ったよ。君は本当に強いんだね。久々にここまでやられたよ。」


ルクスさんは苦笑しながら、観念したように話し始めた。ただ、その視線は完全に油断しているわけではなく、まだ俺を探るような鋭さが残っている。


「戦闘で敵わないから、今度は懐に入るつもりですか? 別に構いませんけど、何も出てきませんよ。」


「はは、君には敵わないな。そうだね、その通りだよ。

君はあの場で僕を殺すこともできた。実際、死ぬと思ったしね。けど、生かされた。理由は……」


「甘いから、ですか?」


「そうだ。戦い方に甘さが見えた。君は、敵を完全に排除することに慣れていない。それが逆に、人間味があって安心したよ。」


ルクスさんは苦笑いを浮かべながら言った。この状況でも職務を果たそうとする姿勢には感心するが、正直なところ複雑な気分だ。


「それで、話していただけますか? だいたい見当はついてますけど。」


「わかったよ。まだ疑念は完全に晴れてないから、謝罪はそれからだ。でも、君の想像通りだと思う。お嬢――ルナ様は、ある家のお方だ。」


「ある家、ですか。」


「詳しくは言えないが、あの子はただの冒険者じゃない。彼女を守る使命が僕たちにはある。そして、君が彼女に近づき、彼女が君に気を許す様子を見て……警戒した、というわけだ。」


「はぁ、なるほど。で、“虫”を排除しようとしたと?」


「まぁ、ただの虫くらいなら気にしないけどね。問題は、バックがいる虫や直接狙ってくる者たちだ。」


「その場合、家から出さないという選択肢もあったのでは?」


「本人の希望もあるし、家の伝統でもあるんだ。“武者修行”という形で外に出て、経験を積む。それが家訓なんだ。しかも、その家訓を作った人物がまだ健在でね……逆らえるわけがない。」


その人物というのは、ルナ嬢が言っていた“オジイサマ”だろうか。なんかとんでもない家に生まれたんだな、あの子。


「それで、俺を襲った理由は?」


「君の技だ。君の動きには当家――あ、正確には主家ね――の技に似たものがある。それが引っかかった。」


「……そんなことで襲われたんですか?」


「似た技を使う者がいたら、警戒するのは当然だろう? 君が本当にただの田舎者なのか、それとも意図的に近づいてきたのか――それを確かめる必要がある。」


「いやいや、俺はただの田舎者ですよ。ちょっと師匠がイカレた訓練をしてただけで。」


「……そうか。」


ルクスさんは黙り込んで考え込んでしまった。これはどうしようもないな。俺にできるのは、潔白を主張することだけ。証明なんてできない。いわゆる“悪魔の証明”ってやつだ。


「ということは、あのパーティーのメンバー全員が、ルナ嬢の家に関係してるんですか?」


「ああ、そうだ。正確には全員“縁のある者”だな。」


「なるほど。ところで、その腕、見せてもらえますか? 治しますよ。」


俺はおもむろにルクスさんの右腕を支え、状態を確認する。


「治すって……君は神に仕える者だったのかい?」


「とんでもない。ただの田舎者です。でも、俺なりのやり方で治すので安心してください。」


俺は集中して、折れた骨と周囲の損傷を探る。見つけた損傷を修復しながら、適当に神様の名前をぶつぶつ呟いてみせる。こんな感じでどうだ?


「これでどうですか? 骨と筋をくっつけました。炎症も抑えたんで、多少の痛みは残りますが、問題ないはずです。」


「……本当に君は何者なんだ?」


「ただの田舎者ですよ。」


「……君の言葉を信じるとしよう。でも、君には謎が多すぎる。」


「とりあえず、今日は休んでください。明日、宿屋の人にこのことは伝えておきます。仲間には適当に“飲み直した”とか言っておいてください。」


「……ああ。すまなかった。改めて謝るよ。まだ完全に信用したわけじゃないが、少なくとも悪い人間ではないことはわかった。」


「それで十分です。では、お休みなさい。」


俺は床に転がり込むと、そのまま眠りに落ちた。ルクスさんが何か言っていた気もするが、もうどうでもよかった。


「なんとも不思議な奴だな……。」

ルクスさんの呟きが微かに聞こえた気がした。



見た目や印象って大事ですよね。

主人公もそこそこな顔をしているのですが、さわやかイケメンというわけではありません。

並みです。印象も薄め。

少しひねくれてはいますが、まじめな性格で人の目を気にして嫌われるのを避けようとしてしまいます。

回復系の魔法はわりと得意な方です。

神職ではないのに魔法が使える。ちょっとタブーな感じですが、全くいないわけではないのでルクスさんも深くは追及しません。


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