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結界

「ここはなんだろう?

 やたらとふわふわする

 でも、嫌な感じはしないわね

 私は今、どうなってるの?」


『あなたは今、彼の力にまもられています。

 結界と言っていいでしょう、それに守られています』


「あら神様じゃない。久しぶりね。

 たしか、前の世界で死んでここに来た時以来かしら?」


『そうですね。貴方たちの感覚で言えば久しぶりになるのでしょうか』


「彼ってのはあいつねルーデルハインのことよね。

 どういうことなのかしら?」


『あなたは今、現世との繋がりがとぎれています』


「ということは、私はまた死んじゃったの?

 いえ、守られてるってさっき言いましたよね。

 死にそうなところをあいつに助けられたってとこなのかしら?」


『そうなります。

 あなたは魂が体から抜けて、死にゆくところでした。

 それを彼の力。いえ、彼が引き出した力によって阻んだということです』


「ふーん。もしかして貴方も助けてくれた?

 あいつだけじゃそんなことできそうにないもの」


『力の使い方。導き方は私がやりました。

 あれだけの力をそのまま世界に出すわけにもいかなかったので』


「そっか。ありがとう。

 あいつ相当無茶やったんでしょうね。もしかして引っ張り出されちゃった?」


『顕現なんて久しぶりでしたので、おそらく現世では大騒ぎでしょう』


「あちゃー、やっぱそうなるよね。で、私はなんで死にかけたの?

 病気?寿命?それとも誰かに暗殺されたの?」


『病気や寿命ではありません。

 おそらく呪いに近いものではないかと思います。

 ですが、呪いでしたので上手く魂が離れず慰安の状態まで持ってくることができたとも言えます』


「そっか、私誰かに呪い殺されそうになったのね。

 別に誰かに恨まれるようなことした覚えはないんだけどなぁ」


『今回の件は、おそらく魔の神を信奉するものによる仕業でしょう。

 巧妙に隠されているようで、私にもよくわからないのです』


「そりゃそうよね。あなたたちは神だけど神じゃない。

 システムだけどシステムでもない。

 単なる力だもんね。

 求める者、力を使える者によって作られたものだもんね」


『そういうことです。

 彼には魔の者の野望を止めろとだけ言っておきました。

 あとは現世のものに委ねるしかありません』


「うわぁ、不安しかないわ。

 ちゃんとしっかり生き返らせてもらえるのかしら?

 私はどんな感じ?このまま眠り姫?」


『眠ってはいますが、大きな宝石の中に浮いている状態です。

 あなたの知識にある中で近い状態で言うと、遷延性意識障害がそれに近いと思います』


「昏睡状態ってことね。食べなくても死なない?成長は?排泄は?衣服は?」


『成長は進みます。食事や排泄については魔力で補っているので必要ありません。

 自然と浄化されるでしょう。

 衣服についてはかなりゆったりした服を着ていたようなので問題ないでしょう』


「そう、とりあえず。恥をさらすことは無さそうね。

 私はあなた以外と話すこととかはできるのかしら?」


『貴方は彼の魔力に包まれている状態です。

 彼も今はまだそれに気付いていないでしょう。

 そのうちあなたとバイパスができ、話しぐらいはできるようになります』


とりあえずぼっちにならずにすみそうか。

変に意識があるだけ、何年もこのままじゃ気がくるってしまうかも。

早くバイパスが繋がらないかな。


『この世界に顕現できる時間が迫ってきました』


「そっか、寂しいけど仕方ないわね。

 いろいろありがとう。またね」


『最後に私からできることになります。

 あなたの周囲、この結界がいる空間の映像を見えるようにしておきましょう』


「ありがとう、助かるわ。あーこれで少し暇が潰せるわね。

 じゃあ、またねー」


 


「殿下。今、ベルの口元動きませんでしたか?」


「なに!?・・・・わからんな。見間違いではないのか?」


たしかに動いた気がしたんだけどな。

ニヤッと。こう口元が吊り上がる感じで。

気のせいだったかな?


ベルは最後に見たそのままの姿で宝石の中で浮いていた。

見方によっては幻想的な姿に見える。

一つの芸術作品みたいだ。


「ルーデルハインよ。いつまでもベルをこのままにしておくわけにはいかん。

 それはお前も同じ気持ちだと思う」


「はい、もちろんです。必ず助けます。絶対に」


「ありがたい。お前の力があれば必ず何とかできる。

 いや、こういういい方はダメだな。

 頼む、ベルを助けてくれ。お前の力が頼りなんだ」


殿下が俺の目をじっと見て、力強く手を握ってくる。

信頼できる者しかこの場にはいない。

ベルが生まれた時から一緒にいる乳母と、ベルの執事長であるその夫だけだ。

二人とも目を潤ませている。

乳母の方はたまらず嗚咽をこぼしているくらいだ。


『ぶふふ。これはお父様×ルーというのもありなのかしら』


「え?殿下何かおっしゃいました?」


「いや、何も言っておらんが?」


「そうですか、なんか聞こえたような気がしまして。

 それもあまりよくない感じの気配が・・・・」


『あら、漏れちゃったかも?

 まだバイパス繋がってないとか言ってたから大丈夫でしょ。

 しかし、実の父親と元旦那って背徳的だわ~。

 どっちも美形だし。なんだか捗りそうだわね』


あー、これ。見てるなこいつ。アピトかなんかの力借りて見てやがるなこいつ。

どれだけ心配させたと思ってるんだ。

それなのに腐った妄想なんてしやがって。

ま、元気?そうでよかった。


「殿下、こいつ。外見えてるみたいですよ。外の声も聞こえてます。

 みんなには聞こえないかもしれませんが、俺には聞こえるみたいです」


「なんだと!?それは本当か。よかった・・・本当によかった」


『なーんだ、もう繋がっちゃったのね。

 ま、いい事よね。どう?私はどう見えてるの?』


「あー、でっかい宝石の中に浮いてるな。

 どうだ?体は動きそうか?」


『無理っぽいわね~。なんだか体の感覚がなくて、意識が浮いてるって感じだけだもん。

 あ、外は見えるわよ。あなたの声も聞こえる。それだけかな?』


「オーケー。じゃあ、他の人の声は?音とかはどうだ?視覚も教えてくれ」


『それも聞こえるわね。映像は定点カメラを見ているみたい。

 そうね。自宅でPCの画面を見ているみたいな感じかしら』


「殿下。ベルは今周りの音は聞こえているみたいです。

 映像も見えてるみたいなので、話もできます」


「声が聞こえるのはお前だけなのか?私も話がしたいのだが」


「あ~、それは無理っぽいですね。

 私の魔力なので、私には反応できるみたいですけど。他の人には無理かもしれません」


「そうなのか、貴様がいないと娘と話もできないとは。

 しかも貴様は来月から他国に行くのだろう。

 どうするのだ?ベルを一人にしてしまうではないか」


「いや、もともと行く予定だったんですから仕方ないじゃないですか。

 無茶言わないで下さい。決めたのは殿下でしょうに」


「なんとかしろ、ルーデルハイン。貴様の魔力なのだからなんとかなるであろう?」


「いや、そう言われましても・・・・」


俺の魔力か・・・・、魔力ってなんなんだろうな?

体の中をめぐっているものみたいだから血液みたいなものなのかな?

だったら血縁だったらいけるとか?

試してみるか、ダメで元々だ。


「殿下。試してみたいことがあります。

 が、その前に約束をしてほしいです」


「なんだ?言ってみろ」


「ベルが周りの音が聞けて映像も見れるというのは、内緒にしてもらえませんか?」


「なぜだ?元々、彼女の生死はまだ明らかにされていないので大丈夫だと思うが。

 それと、どの範囲のことを言っておるのだ?」


「幸いここにはほんとに近いものしかおりません。

 できればこの4人だけにしてもらいたいです」


「それは、国王陛下にもということか?」


「はい、決して陛下を怪しんでいるというわけではありませんが。

 陛下はいろいろな方に会われますので、ぽろっとお話になるやもしれませんし。

 上手くいけば、ベルの前で犯人が尻尾を出すかもしれません。

 幸い襲撃があったとしても私の結界の中なので身の安全は保証されていると思います」


『なるほどね。敵がのこのこ来てペラペラしゃべったらしめたものよね。

 犯人は現場に戻るっていうものね!』


「幸い彼女も同意してくれていますし。

 お願いできませんでしょうか?」


「うーむ、ベルがそう言っているのか。

 だが、どうするのだ?

 どちらにしろベルの話が聞けるものがいなければ同じことではないか?」





「まあ、姫様!?どうなされたのですか、そのお姿は?

 お倒れになったとお聞きしましたが、宝石の中にお入りになってなんておきれいなこと」


『アデリナ様、お久しぶりでございます。

 私の声が聞こえますか?』


「はいはい、よく聞こえますよ。

 で、どうされたのですか?

 ルーデルハインが、また何か悪さをして閉じ込められたのですか?

 もう、あの子ったら好きな子にいたずらばっかりして」


そうです。お婆様にお願いをしました。

魔力が血液みたいなものなら、近い血縁の者ならもしかしたらと思ったが。

上手くいってよかった。


「殿下、お婆様も聞こえるみたいです」


「でかした。

 アデリナ、これからベルの守役として城で働いてくれないだろうか?

 今のところベルの声が聞けるのはそなたとルーデルハインしかおらぬようなのだ」


「まあ、そうなんですの?

 私はてっきりルーのいたずらで姫がこうなってしまったのかと思っておりましたわ」


お婆様ってこんな性格だったかな?

目の奥が笑ってないから、たぶん演技だなこれ。


お婆様はおそらく、俺と殿下との距離感を計っているのだろう。

ベルとの関係がこじれてしまったことで、俺の立場を作ってくれているんだと思う。

ほんとにありがたいことだ。


でもこれで、なんとか俺が出かけられる目途が立ったな。

まだかなり不安だらけだけど、早いとこ悪の組織かなんかしらないがぶっとばして元の生活に戻れるように頑張ろう。


ブックマークありがとうございます。

見て頂ける。評価を頂けることがこんなに嬉しいとは思ってもいませんでした。

更新の励みとなっております。

今後ともよろしくお願いします。


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