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最初の兎狩り

門へと向かう道すがら聞かれた。


「ねえ、あなた名前は?」


ああ、そうだまだ名乗ってなかったな。

よく名前も知らないやつと出かけようと思ったなこいつは。


それだけ腕に自信でもあるのだろうか。

駆け出しのルーキーなんかすぐ倒せるくらいの自信が。


「ああ、ごめん。まだ名乗ってなかったね。俺はファーストって言うんだ」

「ふーん、普通の名前ね」

なんだよそれ。普通ってなんだよ。

そりゃ別に格好いい名前ではありませんよ。

でも気に入ってるんですよ結構。


「でも、いい響きね。君に合ってるわ」


下げて落とすパターンですか。

こいつなりに気でも使ったのか?たぶん違うと思うが。


「はは、ありがとう。

 君はユリシーだっけ?剣に彫ってあったし。

 名前彫るなんてよっぽど気に入ってる剣だったんだね。

 いいのかな貰っちゃって?」


「誰それ?私はルナよ誰と間違えてるの?」


「へ?だって剣に彫ってあったしそうなのかなー?って」


「嘘。そんなの彫ってなかったわよ。バカにしてるの?」


「んーー?見てみる?確かに彫ってあるよ」


剣を取り出して柄頭のところにある彫られた名前を見せる。


「ほら、ここに“ユリシー”って彫ってあるだろ?」


「え、嘘でしょ?そんなの彫ってないわよ!何それ、からかってるの?」


「いやいや、マジで見えないのこれ?」


「見えないて言ってるでしょ!怒るわよ!」


いやもう怒ってるよ。

でもこいつも嘘言ってるようには見えないし。

そんな演技もできそうにない。


なんだかなー。これ以上追及してもろくなことないだろうなぁ。


「ほら、バカなこと言ってないで門についたわよ。

 冒険者証出して。守備兵の人に見せるのよ!」


「へいへい。」


「ハイは一回!!」


母親かこいつは。

剣に彫ってある名前のことは気になるが、今のところ調べようない。

守備兵の人に冒険者証を見せに行く。

どうやらアーネスさんは今日はいないようだ。


「今日はアーネスさんいないんですね?」


「ああ、隊長のことか?今日は午後から勤務だよ。」


なんと隊長さんだったのか。

若いのにすごいなあの人。


「いや、昨日ちょっとお世話になりまして」


「午後からだから帰ってくるときは会えるんじゃないかな。

 一言、言っとくよ。ファーストさんね」


「あ、たいした用じゃないので大丈夫です。ありがとうございます。」


守備兵さんは確認もそこそこで見送ってくれた。


「ほら、ぐずぐずしないで行くわよ!」


「へーい」


「ハイは短く!」


母親と言うかオカンだなこいつは。


壁の外に出て、農地の方に向かう。

少し歩いたところから農地が広がっており、

その中を道が地平線の方まで続いているのが見える。


このあたりは麦の栽培が盛んで農地も広い。

農家の子供だが跡継ぎでもないので農業のことあまり熱心に勉強してこなかった。

魔物と呼ばれる獣が出る世界で、よく農業なんてやってられるね実際。

でも農家さんがいないとみんな飢えちゃうので、そこは国のお偉方が何とかしているのだろう。

知らんけど。



この世界には魔物がいる。

その生態はほとんど解明されていないが、確かなのは、魔物はどこからともなく現れるということだ。

湧き出しているとこを見たというものもあれば、大きな魔物が生み出しているという人もいる。


大きさも様々で小さいのは虫くらいのものもいれば、大きなものは山くらいの大きさのものもいるといわれている。


だいたいが獣と同じ形態をしているが、体内に魔石を有し目が赤い。

なので目が赤い子供が生まれると、昔は忌子として処分されていたという話を聞いたこともある。

今も差別は残っていて奴隷にされる国もあるという。


まだ俺自身は会ったことはないが。

会った時にはどう感じるのだろうか。

やはり恐れるのだろうか。


魔物はあちこちにいる。

俺も田舎で何回か見たことがある。

狼の姿、熊の姿、それこそラビットはれっきとした魔物だ肉は食えるけど。


俺たち冒険者の主な仕事はどこからかやってくる魔物と戦うこと。

いついなくなるかわからない相手なので需要はいっぱい。

もちろん国も対処するために軍隊を率いて戦うこともある。


でも基本、魔物は冒険者の領分ということになっている。

なんでかは知らん。


でも、あちこちに魔物がいるせいでいいことがひとつだけある。

戦争が少ないそうだ。


だが、ないこともない。

それこそ三百年前くらいまでは魔物なんかお構いなしに戦争しまくっていた時期もあったらしい。


魔物は戦争をやめさせるために神が遣わした使者だという人もいるらしい。


ばかばかしい。

どんな神様だよそれ。

魔物なんかに頼らずに、神の力で何とかしろよと思う。

そんな中途半端なやり方の神がいるかってもんだ。


そんな危ない宗教は縁を持たない方がいいね。

まぁ邪教認定されてるけど。当たり前だ。


ちなみに宗教は国によって信仰している神が違う。


あっちの国は太陽神。

こっちの国は月の神。

そっちは風の神とかって感じ。


ちなみにこの国は水の神だそうだ。

うちの村にも寺院?教会?があった。


でも神はほんとにいるらしい。

だって魔法があるから。


魔法は神様の力をお借りして行使しているということらしい。

なので魔法を使うときは神の力を使える神職が必要になる。


火の魔法使いとか、癒しの魔法使いとか、使える分野が違うわけではない。

魔法を使うのは神職。

そう決まっている。


なので戦いもするし人々も癒す。

神職はとても尊敬されている。みたいだ。


うちの村の神職は適当な人だったけど。

魔法の腕は凄かった。


水の神だけど水系統しか使えないわけでもない。

火も出せたし土も盛り上がってた。


ほんとに神様の力なのかそれ?って思ったところもあるけど、

そんなこと言ったら村八分かもしれんので言わない。


でもうちの村は神職自身が神を信じてるの?

って人だったので二人になるとそんな話しで盛り上がったこともあった。


ほんと変わった人だったよな。元気にしてるかな?


いや、まだ冒険2日目でした。

絶対元気です。うん、あの人なら。


そうこう考えてるうちに現場に到着。


「さ、さっさと狩っちゃいなさい!」


「いや、なんか実践的なことを教えてくれるんじゃないのかよ?」


「なんで?」


「なんで?ってお前」


「お前じゃなくてルナ!」


「・・・・ルナさんなんか教えていただけるんじゃないんですか?」


「無理よ。だって私天才だもの」


「んん?」


「今まで教えた人はみんな、ルナは天才だから普通の人とは違う。

 よくわからないとか言われてて・・」


「ちなみに今まで教えていたやり方というのは?」


「えーっとね、バーッと来て、ギャッと斬る。それで終わり!簡単でしょ!」


ダメだこれ。

ほんとに天才かもしれんなこの子。


「えーっとルナさんや。」


「なによ田舎のオジーちゃんがオバーちゃん呼ぶみたいな言い方して」


「それはいいとして、俺は戦闘が初めてなんで、ちょっと天才の技を見せてくれない?」


「なによー、見るだけって言ったでしょ。しょうがないわね。1回だけよ!」


なんだちょろいのかよ。


その瞬間、ルナの体がブレたかと思ったら数メートル先のウサギの首をチョンパしていた。


「ほら、簡単でしょ。今のはバーッと行ってギャンね!

 さあ、やってみて!!」


「いやいやいや、無理無理無理」


あかんこいつはやばい奴だった。


今までの言動を思い返してちょっとぞっとした。

これからちょっと優しくしよっと。


俺の表情を見たのかちょっとルナが寂しそう顔を伏せた。


「あんたも、そうなんだね……。まぁ、慣れてるから平気だけど」

ああ、こいつは何か普通じゃない強さを持ってるんだ。たぶんそれが原因で、今まで色んなことを諦めてきたんだろう。

それで友達出来ない系か。


まぁいろいろ苦労してきたんだろうな。

こいつの会話能力の絶対的低さも、そこらへんに原因があるんだろうな。

友達出来なかっただろうし。


ちょっと同情というわけじゃないけど。なんかわかる気もする。


俺も似たようなもんだしな。


でも、あの人だけは違った。俺のことを理解してくれる、唯一の人だったんだ。

主人公は冒険者にあこがれていたので農家の子なのに農業にあまり興味を持っていませんでした。


魔物がいる世界なので日本のように切れ間なく家々が続いて街が隣接していることはありません。

街+農地といったセットで守りやすい立地にぽつぽつとある感じです。

それそれが独立運営して貴族が領主として治めている形です。

宗教と神様。魔法にかかわる話がちょっと出てきましたがその説明はまたあとの話で出てきます。


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