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夏の一日①

ルーデルハイン編

「ルーデルハイン。君は神についてどう思っている?」


「いきなりですね先生。

 どうとは、どういう意味でしょうか?」


「神というもの、そのものについてだよ。

 君の、いや君の記憶の中にある神というものに興味がある」


「いいんですか先生。ここは教会ですよ。

 そんな事話して神罰とか落ちたりしませんか?」


「神はそんな狭量ではない。と思う」


思うだけかい!

まあ、ほんとに万能の神がいるんなら、とっくに俺には神罰が落ちてるよな。


あ、落ちてたわ俺に。

現在、罰の真っ最中でした。

もうこの生活にも慣れたんで、なんとも思わなくなっている自分が怖い。

おっと、思考が流れてる。



「神様ですか。

 いるんじゃないですか?

 でも、少なくとも私は神の力を感じたことはないですね。

 特に記憶の中では」


「それはそちら側の世界では神はいないということか?」


「いるかいないかは別にして、神様を信じている人はたくさんいますよ。

 世界全体でみると、信じてない人の方が少ないでしょうね。

 神話もありますよ。

 やたらと人間臭い神の話ばっかりでしたけど」


「その言い方だと、信じてない人も一定数以上はいるということか?」


「はい。特に私がいた日本という国は、特に多かったんじゃないですかね?

 既存の宗教も他の神様から借りてきたり、似たような要素が少しでもあれば、

 融合したり勝手に増やしたりともう何が何だかって感じでしたよ」


「すごいというか、なんというか。それで神罰は無かったのか?」


「ありませんでしたね。

 神罰というか自分の行いによる因果応報的なものはありましたけど」



「では、魔法はどういう扱いだったのだ?

 信じてない人には魔法はどう考えられていたのだ?」


「魔法なんてありませんでしたよ。

 それこそ神様より信じてない人が多いんじゃないですかね。

 物語の中のお話です。


 その代わり科学技術すごく発達していました。

 知らない人からしたら魔法に見えるくらいじゃないですかね」


「それは人間が考え出したのかね?」


「ええ、そうですよ。

 科学者が理屈を発見して、技術者がそれを実用化する。

 それが延々と繰り返され、少しずつ発展していきました。

 それによって人々の生活が豊かになりました。

 あ、もちろん貧富の差はありましたけど」


「人間の力だけで発展しているのか。そちらの世界ではそれが常識なのだな。

 では、争いごとも少ないのでは?」


「いえ、めちゃくちゃ多いですよ。

 むしろこっちの世界の方が少ないくらいです。

 あっちには魔物がいませんから、いてもせいぜい大型の獣くらいです。

 なので、昔から世界で人間同士の戦争が絶えたことはありません。

 人口の何割かが無くなるといった戦争も何回か経験してますし」


「おそろしいな。君の魔法はその時使われた兵器を模倣しているのかね?」


「いえ、まだ実戦で使われたことは無いんじゃないですかね?

 こんなちゃちな威力じゃないですよ。本物の殺戮兵器は」


「何十万、何百万という人間を一瞬で殺すことのできる爆弾とかありましたし。

 実際に使用もされて、100憶いた人口が30億くらいに減りましたからね」


「もう訳が分からないな。

 神罰を超える兵器など、この世界ではあってはならんよ。

 聞いているだけでぞっとする。人口の多さにも亡くなった人の多さにも」



「で、最初の話に戻りますが。

 私個人としては神様はいるんじゃないかなと思ってました」


「ほう。今の話を聞いた後だと、君は神否定派なのかと思っていた」


「いやいや、そんなことないですよ。

 記憶の中の世界もこの世界も私は基本一緒だと思っています。

 ただ、この世界の伝承通りの神がそのままいるとは思っていませんけどね」


「どういうことだね?詳しく聞かせてくれないか」


「はあ、いいですけど。そんな面白いものではないですよ」


そう言って、俺は自分の神様の概念を語りだした。


 神様はいる。

 この世界では魔法が観測されているのだから

 魔法に変化するなにかしらがあるのは間違いない。


 でも、それは神様とかじゃなくて力そのものなのじゃないのか?

 

 神話や伝承に伝わるようなものは本当はいない。

 神話や伝承はその力が発現した現象なんじゃないかと思っている。


 たとえば、偶然にも世界の力を操れる人がいて、その人が祈り願う。

 その人が希望した通りに発現したものを神と呼んでいる。


 つまり、大昔のチート持ちが神様の概念を作って広めちゃった。

 だから、この世界の神様は形作られたってことだ。

 と俺は考えている。



「とまあ、こんな感じですかね。当たっているかどうかは知りません。

 だって確認しようが何ですもの」


「なるほど、大変興味深い考察だった。

 我々、この世界しか知らないものでは考え及ばないものだ。

 我々は始めに神ありきだからな」


「で、私はなんかお仕置きとか受けます?」


「そんなことはしない。

 これは単純に私の興味なので、罰を受けるとしたら君に話をさせた私自身だろう。

 それに君は否定も批判もしていない。

 力のみに焦点を当てただけだ。

 私は立場上、それを認めるわけにはいかないがな」


「じゃあ、もう一つついでに付け加えておくと。

 私の力、ここでは魔法と言いますが。

 魔法は自分の中の方にある力を引っ張り出しているイメージなんですよね。

 あ、そういえば剣術で技を出すときも似たような感じかな」


「なんだと。

 だとすると、人間の力、いや単純に力は普遍的で・・・・まさか。

 いや、そうだとすると・・・・」


先生は思考の彼方に行ってしまったようだ。

あらら、最後に余計なこと言っちゃったかな。



ジェキル先生、マリナ大司教、アケロン大司教、そして教皇様によって俺の教育は順調に進んでいる。

たぶんぱっと見には普通に魔法を使っているように見えるだろう。

ぱっと見はね。


だけど、別の問題が出てきた

俺は詠唱とか関係なくどこからか(俺は自分の体の中だと思ってるんだが)力を引っ張り出して魔法に変換している。


頭では詠唱の文言を浮かべてそれを口にしている間、その力を体の中で揉んだり、捏ねたりしているわけだ。

その間、力もどんどん出てきている。


ということはだ。


「ルーデルハイン!また力が大きすぎる!それは魔法の常識を超えてしまっている!」

ジェキル先生が叫ぶ。


俺の前には50メートルプールを縦にしたくらいの氷柱が立っていた。


「早く消してください!こんなのがあったらまた騒ぎになってしまいます!」

アケロン大司教が狼狽える。


「ああ、素晴らしい!これこそ神の御業!貴方はやはり使徒なのよ。

 私と結ばれる運命なのよ!」

勘弁して下さいマリナ大司教。


「ほっほっほ。これは涼しくていいではないか。

 もっと小さくてもいいぞ。今度儂の部屋にも作ってくれ」

教皇様はいつも通りだ。



最近はこんな光景もよく見られる。王都の風物詩化しているらしい。

最初は毎回騎士団が見に来ていたなぁ。

今も来るけど。



俺はすぐに氷の壁を消す。

水は残るからあたりはびしょびしょでございます。

夏でよかった。

そういやプールってないのかな?

王都で見ないんだったらないだろうなぁ。水着のお姉さんに会うことはもうないのか。

残念である。


再びルーデルハインの過去の話になります。

ルー様好きの方おまたせしました。


ブックマークありがとうございます。

見て頂ける。評価を頂けることがこんなに嬉しいとは思ってもいませんでした。

更新の励みとなっております。

今後ともよろしくお願いします。


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