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夜の出来事

「いいんですかダーレスさん?

 ルシールさんとルクスさん行ってしまいましたよ」


「いいも何もどうすればいいんだ。

 別に今の所ルシールに怪しいところは無い。

 それとも俺にルクスの恋路を邪魔しろとでも言っているのか?」


「いいじゃない!

 ルクスもそろそろ結婚してもいい年なんだし、このまま問題なければいいだけでしょ?」


それはそうなんだが、何か引っかかるんだよな。

みんなはこの数日でルシールさんを受け入れたようだけど、俺はモヤモヤしたものが残ったままだった。

決してルクスさんがモテているから妬いているわけではない。



ネーアの街でも宿屋の割り振りは同じようにした。

ルシールさんは1人違う部屋に泊まっている。

彼女からは1人部屋でないと寝られないという事を言われたので、敢えて相部屋にする必要もないのでそのままにしている。




俺はモヤモヤしたものを抱えながら部屋でルクスさんが帰ってくるのを待っていたが、いつまで経っても帰ってこない。

夜中になっても戻ってこないので、そのうち俺は心配になって1人でネーアの街を散歩がてら探しに出かけた。


別に確証めいたものは何も無い。

もしかすると公園かどこかで、2人で愛を語り合っていてもおかしくは無いのだ。

なので、俺1人で出てきたし。



念の為、公園のそばの道を通った。

やっぱりいないな。

どこかの店にでもいるのだろうか?


その時だった。

突然背後から刺すような殺気。

その直後、背後から剣が振るわれた。


俺は前転で交わし、次の攻撃に備える。


剣を抜き構え、さっきまで背後だったところに視線をやり相手を確認する。


そこにはダミールさんが剣を構えてこちらを睨みつけていた。


前にもこんなことあったな。ルクスさんが絡むと俺は襲われるのか?


「驚いたね。Eランクの坊主と聞いていたから楽勝だと思ったのに。

 背中に目でもついているのかい?」


「そうですよ。俺は背中に目がありまして。おもしろいでしょ?」


俺は背中に目があるびっくり人間な訳が無い。

ルナとのデートの時から力をうっすら解放する訓練をずっと続けていただけだ。


力を薄く引き出して全身にまとわり付かせるイメージ。

それを少しずつ広げていく。

たしか師匠はセンサーって言っていたな。


魔法っていうほどの事じゃないって言い方をしていたけど、慣れてないと結構きつい。

それをずっと使って慣らしていたのだ。



「で、何の用でしょうか?

 この状況で夜の挨拶とは思えないですけど」


「挨拶で間違いないぜ。

 俺の弟を殺したやつに死の挨拶をな!」


そう言ってダミールさんは剣を振るう。

右に左に剣が生きているかのように動く。やっぱり実力を隠していたのか。


センサーが無ければとっくに切られていたかもしれない。

上手いし速い。



「おっと、Cランクっていうのはほんとだぜ。

 おまえさんたちと同じで俺も冒険者を休業していた身だからな」


「そうですか。

 で、俺には襲われる覚えが一つしかないんですけど、どっちの方です?

 剣士の方か魔法使いの方か」


「魔法使いの方だよ。お前が倒したんだろ?噂のルーキーさんよ!」


胴薙ぎと見せかけての足狙い。

それを何とか避けるが、その先で体勢を崩してしまった。




その時だった。

ヒュッと音がしたかと思うと、矢が音もなく飛んできてダミールの腕に刺さる。


「くそっ!もう少しだったのに。絶対に許さねえからな!」


負傷したかと思うと、ダミールは一目散に逃げだした。


矢で援軍が来るのがわかり、さらに負傷で戦闘力が落ちる。

その場での決着にこだわらずに、瞬時に次の機会への切り替えができるなんて。


普通は追いつめている相手だけでも、と欲張ってしまうものだが。


「ファースト君大丈夫か?」


矢の射手はもちろんルクスさんだ。

この暗闇の中でこの精度で動いている人間に当てることができる人なんて、ルクスさん以外に俺は知らない。


「ありがとうございます。助かりました。

 急に襲われまして、ルクスさんの助けが無ければもう少しでやられているところでした」


「そうか、間に合ってよかった。で、怪我はないか?」


その時ルクスさんから遅れてルシールさんが到着する。

俺たちの会話が聞こえていたのか、ルシールさんが答える。


「やっぱりダミールでしたね。

 追いかけましたが、見失いました。申し訳ありません」



「どういうことか説明して頂けませんでしょうか?

 ルクスさん、ルシールさん」


「はい、あなたを巻き込んでしまったみたいですし。お話しします。

 いや、元々ダミールはあなたが目的だったのかも。

 何か狙われるようなことが?」



それについても話をすることになり、いったん宿に戻りダーレスさんとドルガンさんをたたき起こした。

女性陣はまだ起きていたようだった。

部屋に呼びに行った俺をキキョウさんにはゴミを見るような目で見られたが・・・


「こんな夜中にどうしたんだ?

ルシールさんもいるし、ファーストはボロボロだ。なにがあったか聞かせてくれ」



ルクスさんは俺から話すように促してきた。

たぶん俺が話して補足するつもりなんだろう。


「今日、ルクスさんとルシールさんが街に出かけたは覚えていますよね?」


「ああ、仲良く出かけて行ったな」


「さっきまで帰ってきませんでした!」


「ルクス!ルシールさんに何もしていないでしょうね!

 もしかして、集まったのはその話を聞かせるためじゃないでしょうね!?」


「おい、ファースト君。変な振り方はやめてくれ。

 たしかに出て行ったが、それだけだ、まだ何もしていない」


まだなんだ、そこは。


「まあ、それはいいんですけど。

 あまりに遅いからちょっと心配になって、外に散歩がてら探しに行ったんですよ」


「あんたそれ、ちょっと変だわ。男女のデートの行方を捜すとか」


「まあ、そう言われたらそうなんだけど。

 なんか引っ掛かってね。

 申し訳ないけどルシールさんをすぐに信用する気には俺は慣れなかったんだ」


「たしか、昼もそんなことを言ってたな」


「ええ、それで公園のあたりを歩いていたところ襲われまして。俺が」


「なんだって!それで、無事だったのか?」


「はい、まあそこはルクスさんが危ないところで相手に矢を放ってくれて、何とか無事だったんですけど」


「で、相手は誰だったんだ?」


「ダミールさんでした。

 ちょっと、会話というかやり取りをしたんですが、俺を狙っているようでしたね。


 先日ハイデルンで俺とルナが倒した4人がいたじゃないですか?

 あの中に弟がいたと言ってました

 

 おそらく、弟の仇が夜中に一人でフラフラ出歩いてるのをみてチャンスだと思ったんでしょうね」


「そうか、それは災難だったな。

 で、ルクス。お前の方はどうなんだ?偶然にしちゃ出来すぎてないか?」


「はい、それなんですが。

 まず、ルシールさんですが。彼女は隠密でした」


「え、そうなの?

 お爺様のところのひと?キキョウ知ってた?」


「知らない。ニセモノ」


「キキョウは知らないかもしれませんね。裏籠目といいます。

 ソウハク様に今度聞いておきなさい。私からお伝えしてておきます」


「むう」


隠密隊にもいろいろあるんだな。

隊員にも知られていない裏の隠密『裏籠目』か。



「で、あなたがその裏籠目の人だとして、どうしてルクスと夜出歩いてたの?」


「ダミールの動きを見張っていたんだ。

 トーセンの隠密、裏籠目は召喚事件の捜査でダミールの存在が怪しいとにらんでいたそうだ。


 奴は普段は冒険者として活動している。

 そして尻尾をなかなか現わさない。

 そこでルシールさんが神職として奴のパーティーに潜入し探っていたらしい」


「案の定、彼のいるハイデルンで事件は起こりました。

 おそらく何らかの手を使って冒険者たちを先導したのも彼でしょう。

 残念ながら証拠はありませんが。


 しかし、事件後から彼の行動が少し変わりました」


「おそらく奴は自分の任務を遂行しながら、復讐の機会をうかがっていたのだと思う。

 それで俺たちが出立するタイミングに合わせて護衛の仕事を受け、一緒にハイデルンを出ることにした」


ルクスさんとルシールさんが、交互に話をする。


「彼の仲間たちはたぶん何も知らなかったでしょう。

 この街で解散することをハイデルンで言い出した時は驚いていましたから。

 そして私は彼がこの街で復讐を決行するだろうと思ったのです」


「俺はルシールさんから事情を聞いて、一緒にあいつの動きを見張ってたってわけだ」


「で、ダミールはどうなったんだ?殺したのか?」


「いえ、逃げられました。撤退の判断が早かったです」


「おそらくですが、彼は我々隠密と同じような訓練を受けていると思われます。

 逃げた際も痕跡を残さないようにしていましたので」


「そうか、やっかいなやつに目をつけられたな。

 こうなったら一刻も早くトーセンに行くべきだな」


その日は念のため俺とルクスさんは、ダーレスさんとドルガンさんと同じ部屋で寝ることにした。

ルシールさんはまだ身元の確認ができてないんで、念のため空いた俺たちの部屋に泊まることにした。その方が部屋が近いからね。



というか、めちゃくちゃいびきがうるさいんですけど。

これで寝れるのかな?


ブックマークありがとうございます。

見て頂ける。評価を頂けることがこんなに嬉しいとは思ってもいませんでした。

更新の励みとなっております。

今後ともよろしくお願いします。


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