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魔法

その日はそれから寝るまで指先のブレは治まることはなかった。


何度も指を触って確認してみるが、触った感じは特に変なところはない。

普通の可愛らしい子供の指だ。自分で言うなって。そうだね。

でも見えないんだけどね。


なんだかブレてるような、揺れてるような変な感じで、たまに大きくズレるって感じに見えるのでじっと見ていると酔ってしまいそうだ。


何なんだろうなこれ?

わけわかんないしもう寝ようかな、たぶん眼が疲れてるだけだろうから明日になったら治ってるだろ。

そういや昔はスマホをちょっと見るだけで目がかすむしぼやけてたじゃないか。

ただの疲れ目だろう。若くなったからからといって過信しすぎたらダメってことだ。


さて、寝ますか。

あ、明かりを消さなきゃな。まだいつもより早いから誰も来ないだろうな。

明かりの魔法具のスイッチはあっちの壁か。遠いなぁ。リモコンないかな。


「えーい、明かりを消えろ!」


その瞬間、ぱっと明かりが消えた。

よしよし消えた消えた。これで寝れるぞ。

・・・・・って、なんで消えんだよ。

誰かが部屋に入ってきてた?


「誰かいるんですかー?明かりを消してくれてありがとうございますー。」

返事は無い。

ふむ、ということは魔法具の故障かな?

確認するにも明かりが必要だな。

明かりが点かないかなと思って、もしやと思って明かりよ点けって頭の中でボソッと言ってみた。

・・・・なんで点くんじゃい。


やべえ俺、明かり限定の魔法少女になったかもしれん。

いや、少女じゃないし。普通にこの世界魔法あるし。


そこに扉をノックする音がして、そのあとにスーリさんが入ってきた。


「ルー様。急にすいません。なんか屋敷中の照明魔法具がおかしいらしく、消えたと思ったら急に点いたりしたんです。この部屋はどうした?あ、もう寝てました。申し訳ありません」


スーリさんはベッドに入っている俺を見て、起こしてしまったと思って謝ってきた。


「いや、まだ起きてたから大丈夫だよ。で、この屋敷中の照明魔法具がおかしいって?」


「ええ、こんなこと初めてですよ。スイッチも押していないのに魔法具の明かりが点いたり消えたり。お昼に魔法具を壊したから、魔法具たちが怒っているんですかね?ふふ」


やっぱそうなるよな。あーどうしようかなこれ。言ったほうがいいのかな?

碌な未来が見えないんだけど。


「ルー様。どうされました?まだ指が痛いんですか?それとも別のところが?」


ふと指先を見るとあの変な感覚は治まっていた。

というかしっくりきたというか、繋がったといった感じがする。


自分でもわかる俺は魔法が使える様になったんだと。あらためて認識した。


「スーリさんごめん。ちょっと頼まれてくれないかな。

 今からちょっと試したいことがあるんだ。

 それを見ても驚かないで欲しいのと、しばらくは誰にも言わないで欲しいんだ」


「またですか。それ1日に2回もやる事じゃないですよ。

 別にかまいませんけど、危ないことはダメですからね。

 あとエッチなこともダメですよ」


それはフリか?フリなのか?してもいいっていうフリなのか?

たしかにスーリさんは可愛らしいし、男爵家だけど貴族家の子女の見習いだから万が一なにかあっても責任さえとりゃいいが。

って、だから俺は7歳だっつーの。時々思考がおっさん化するのは何とかしなきゃな。


「それは魅力的な提案だけど、違うんだよな。

 どういう事かというと、こういう事なんだ」

俺は右手の指先から小さな火を出した。

ライターの火をイメージして、指を上に向け、そこから1cm先のあたりから小さな火を出す。


「え、なに?どういう事ですか?魔法?

 ルー様、神職じゃないですよね?隠してたんですか?

 いや、今までそんなそぶりもなかったですし、急に言い出すのも変です。

 ルー様はいつも変でしたけど。変というかおかしいというか。

 よくわかんないけど、ルー様が変になりました!」


人の事を変、変言いよって。


そりゃ中身がおっさんの子供ってだけで変なのは自覚してるよ。

でも、そんな風に思われてたんだってのを口に出されると、ねえ、ほら。へこむじゃないですか。


「さっき、急に使えるようになった。というか使い方が分かった。 魔法使い爆誕だ」


「す、すぐに旦那様と奥様にお知らせしないと!」


「いや、だから秘密にしてねって言ったじゃない。

 いずれはバレると思うけど、今はまだ神職になるわけにはいかない。わかるね?」


「で、でも。だったらなんで私に見せたんですか?

 秘密にするなら誰にも言わなければいいのに。

 私、隠し通す自信なんかありません!」



「いや、バレる時期を自分でコントロールしちゃわない方がいいかなと思って」


「へ、なんでですか?」


「俺は明日から魔法の修行とその原理を探る。それも、徹底的にするつもりだ。

 いずれ俺はおかしくなってしまうかもしれない。

 そうなる前に止めてもらいたいってことかな。うん、そうしておこう」


「よくわかんないですけど、とりあえず隠しておけばいいんですね。

 もしかしたら明日にもばれちゃうかもしれませんよ」


俺はかまわないとスーリさんに言う。今日はもう寝ることを告げ、出てってもらった。

明日から研究ね。

実はもう構想というか理屈はわかっている。

研究なんてものは仮説の実証なんだから。まさしくそうなんだろう。




この世に神様はいない。

いやその言い方は違うな。

皆が考えているような神様はいない。というところか。

もしくは神とは違う何かが存在しているということか。


魔法、いや、魔法だけでなく師匠のように超常の動きをする力を引き出す時に一気に情報が入って来る感覚がある。

それがブレて見える原因だと思う。自分の常識と違うからだ。

出せると理解していても、出せないと常識が邪魔をしている。それでブレる。

つまり俺は昼からずっと何かの力を引っ張り出し続けていた、もしくは蛇口が開いた状態だったという事だ。

原因は間違いなくあの魔法具の魔法陣に触ったことがきっかけのはずだ。

そのおかげで魔法も使えることが理解できてしまった。


でもれまでやったことがある人魔法陣に触れたぐらいでそんなことが起きた?

これまでも触れた人はたくさんいたはずだ。

なぜ俺だけ?

やはり転生者だからだろう。

それくらいしか理由が思いつかない。



気が重いな。


俺の頭がおかしくなる前に頼むぜスーリさん。



スーリさんは意外と頑張った。

結論から言うと、スーリさんが原因でバレることは無かった。


先に俺の頭がおかしくなった。いや一時的にだよ。

ずっと力の扉を開け続けていたもんだから、制御ができなくなってまた壁をぶち抜いちゃった。

今度は素手でレーザー的なものを出しちまった。

勢いあまって王城の壁まで壊しちまったもんね。



「やっちまった。あれ、城だよな?

 壁に穴開いてるような気がするんだが、マジでやっちまったかもしれん」


たしか日本だと政府転覆、偽札製造は殺人なんかよりはるかに重い罪だったはず。

城にレーザーぶっぱなすなんて、国家反逆罪に問われても仕方ない。死んだなこれは。


どうしよう?逃げるか?

だってレーザー出してみたかったんだもん。


そんなことを考えているうちに、例のごとく執事の人が来て

「ルー様がご乱心!」とか言い出す。メイドは泣き出す。

お婆様もさすがに頭を抱えて、床に座り込んでひっちゃかめっちゃかになってしまった。



そのうちに城の方から馬の音やら、大勢の人数が異動する音やらが聞こえてきた。

騎士団かな?意外に早いな。とりあえず駆け付けた感じかな。


先頭にお爺様とランドさんがいる。

「ルーデルハイン!アデリナ!大丈夫か!」

「ルー様!奥様!ご無事でしたか!」

とか言いながら走りこんで来るのが見えた。


あ、先にランドさんが何かに気付いたみたい。

なんかデジャブ的な感じがする。あの走りながら崩れ落ちていく感じ。


お爺様は俺が無事そうなのを確認すると、お婆様を抱き上げている。

おお、お姫様抱っこだ。いいね。ひゅーひゅー。

ってか言ってる場合じゃない。


お爺様がお婆様を近くにベッドに降ろし、こちらへ何があったのか聞きにゆっくりと歩んできた。


「ルーデルハイン。何があった?

 アデリナの言っていることは本当なのか?

 お前が光の矢、いや矢というには強すぎるな。

 光の滝みたいなもので王城を攻撃したというのは」


「結果的にそうなってしまいましたが、私は王城へ攻撃を加えるつもりで魔法を使ったわけではありません。

 壁に向かって新しい魔法を試してみたら、それが予想以上に強力だっただけでございます」


「それが事実かどうかは今は関係ない。

 お前が魔法を使えたことを隠していたこと。

 結果的にであろうが王城に攻撃を仕掛けたこと。

 どちらもこの国では許されないことだ。それは知っているな?」


「はい、存じております」


「そうか、では役目においてルーデルハイン。貴様の身柄を拘束する。

 お前は現時点より貴族の権利を一時停止される。

 また、魔法による脱走その他を防ぐために、頭に魔法が使用できなくなる環錠を取り付ける。

 まだ子供ゆえ身体の拘束まではしないが、いつでもそなたの身は騎士によりうち滅ぼされる可能性があるものと思え。

 国家反逆罪の疑いがあるので、弁護人は付けられない。

 以上だ・・・。

 

 おい、この者を捕らえよ!」


こうして俺は犯罪者になった・・・・。



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