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初めての剣?

5歳になりました。


お爺様の蔵書もあらかた見終えた頃になると、知識量も増えいろんな分野の専門的な話もランドさんとできるようになってきた。

ランドさんとの関係はあれからも良好に続いている。

最初に見られた俺への恐れのようなものも消え、逆に子供として接してくることも多くなってきた。

普通は逆だと思うんだけどな。



ランドさんはやっぱり優秀な人だった。

総勢1,000人にもなる騎士団の運営をそつなくこなしていたので、経理関係や書類の作成はもちろん。

各分野への伝手も幅広く持っていたようだ。

騎士として各地に遠征に行くこともあったので、その土地の風習や名産なども知っていたし、本当に得難い人物だと思う。

そんな人を引き抜いた形になったんだから、上からは嫌味の一つくらい言われても仕方なかったのがわかる。



ランドさんの名前はランド・アンデションと言うらしい。

最近知った。

始めの頃「私は孤児ですから」と言っていたので、てっきり農家か町民の出身なんだろうと思い込んでいたら準男爵の家だったらしい。

母親は早くに亡くしたようだが、父親は12歳まで健在だったそうだ。

隣の領地の魔物討伐に近所のよしみで参加したところ、帰らぬ人になってしまったそうだ。

その時、騎士団から派遣されていたのが当時まだ若かったうちのお爺様で、突然領主がいなくなってしまったランドさんの実家の後始末に関わったらしい。


「団長には本当にお世話になりました。

 準男爵とはいってもただの田舎の古い家だったものですから、

 財産なんてほとんど無かったですし」

準男爵は一代貴族だ。

当主が亡くなったり、代替わりするときに跡継ぎが育っていれば世襲できることが多いが、ランドさんはまだ領地の運営ができる年ではなかった。

領地は別の貴族が領主として入ることになり、前の領主の子供であるランドさんは身の置き場が無くなってしまったそうだ。


それを見かねたお爺様が面倒を見ることになったらしい。

最初はうちの家で働いてもらおうかと思っていたが、当人が恐縮して軍属として騎士団の宿舎で住み込みで下働きをすることにしたそうだ。

そんな縁もあってうちの家にも何度か遊びにきていて、お婆様や俺の母親とも面識があったということだそうだ。

うちの家に再就職を決めたのも、その縁があったのも関係している。


元々、お爺様の懐刀という見方を周りからもされていたようだった。

「おそらく私は元々団長とルー様にお仕えすることが決まっていたのですよ。

 ルー様に出会ったのも運命だと思いました。

 やはり人生はなるべきようになるものなんだな。と」



ちなみにうちの家名はフルスエンデというらしい。

お爺様はジルベルト・フルスエンデ

お婆様はアデリナ・フルスエンデ

お母様はマリー・フルスエンデ

といった名前らしい。

俺はルーデルハイン・フルスエンデというわけだ。

家族と暮らしていると家名なんて使わないしな。

お爺様とお婆様も「おまえ、あなた」って呼び合ってるからあまり気にしたこともなかった。

そのことをランドさんに言うと、そういうところは子供なんですね。と笑われた。

いいじゃないさ別に。

気にならなかったんだから。



「あら、今日はお外で遊ばないの?」

最近はお婆様が笑いながらそう言ってよく話しかけてくる。

あらかた本を読んでしまってからは、もっぱら外で遊びながら体力作りをしていたので、

最近は日に焼けて健康的な子供の姿になっていた。

俺が遊びと称して武技のまねごとをしているもんだと思っているようで、微笑ましく思っているようだ。

まだお爺様とお婆様の前では瞬歩などの技は使わないようにしている。


甘えていると思われるかもしれないが、俺はまだ子供でいたいのだ。

この世界で武技を使える子供がどれだけいるか知らないから、というのが一番の理由だ。

他の子供には残念ながらまだ会っていない。

いや、正確には俺の遊びについてこれる子供にはまだ会っていないと言った方が正確だろう。

何度か他家の子供と遊ぶ機会もあったが、中身がおっさんの俺と話が合うはずもなく。

運動神経も普通の子供たちばかりだったので、仲のいい友達ができるということもなかった。

もちろん武技どころかまともに戦えそうな子供もいなかった。


力があることを知られると、どんな災いを呼ぶかわからない。

教会が幅を利かせているこの世界では、中世の魔女狩りのような事も絶対ないとは言い切れない。

危ないことをさせるなと、ランドさんが叱られるのも嫌だった。

そういった理由でまだ家族の前で力は見せないようにしていた。


でも、薄々気付いてはいるんじゃないかな?

遊んでいたにしては庭の荒れ方がひどいのだ。

何も言わずに、庭師を何度も呼んでくれているので、もうバレているかもしれない。

庭の一部はもう芝生がないグラウンドみたいに均されているんくらいだ。

ここでなら何やってもいいわよと言われているようでむず痒い。


ランドさんは相変わらず心配そうな顔で俺に付き合っている。

彼も最近、武技の失敗が無くなり、動きもだいぶ良くなってきたということだ。

先日などお爺様から一本取れる手前までになっていたらしい。

よかったねランドさん。

たぶん俺の動きを見て自分もできるんだと思えるようになったことが、理由じゃないかなと俺は思っている。




しかし、そうやってこそこそ特訓をしていたのも、ある日あっけなく終わてしまった。


その日はランドさんがお爺様の用事で街に出かけていた時のことだった。

俺は慣れもあって気が緩んでいたのだろう。

メイドの目を盗んで、誰もいないことをいいことにグラウンドで瞬歩の練習をしようとしていた。


「ん?あれは?」

ふとグラウンドの端に何か落ちているのを見つけた。

うちの庭は庭師がよく整備に来るので、物が落ちていること自体が珍しいことだった。

木の枝か。なかなか大きいなこうやって持ったら剣に見えなくもないな。

おそらく昨日の夜は風が強かったので、どこからか落ちてきたのであろう。

剣というものに憧れはあったが、まだ危ないということでこの手の遊び道具などはまだ与えて貰っていなかった。

ちょっと剣のまねごとでもしてみるかな。


「ふっ!はっ!やあ!」

昔見たテレビの時代劇のチャンバラシーンを思い出しながら、剣を振る。

楽しい。やっぱ体が子供だとこういった遊びは楽しいもんなんだな。

「とりゃー!」

俺はばっと立ち止まり剣を正眼に構える。

そういや本の中の勇者や英雄はここで叫びながら必殺技を出して敵を倒すんだよな。


よし、誰も見てないし声に出してやってみるか。

たしか昔見たヒーロー物でたしかこんなのあったな。


「シャリ〇ン・クラッシューーーーー!」

テレビの特撮では赤い太陽を背に敵を切り倒して、敵が爆発するみたいな感じだった。

それを思い描いて剣を思いっ切り振った。


その瞬間、剣から閃光が走りすさまじい勢いで屋敷の壁をぶち破った。


穴の開いた壁からもうもうと煙が立ち上がっているのを、俺は唖然とした表情で見ていた。


数瞬後、はっと我に返った俺はすぐに壁に向かい向こう側に誰かいなかったか確認しに走った。

やばいやばいやばい。どうするどうする?


幸いにも人はいなかったようで、壁が壊れただけだったようだ。

しかし壊れた壁は元には戻らない。

庭には俺しかいないし、これは間違いなく怒られるし、俺の力もバレるだろう。

バレたのはいいとしてこれからどうなるんだろ俺は?


「何事ですか!ええええっ・・・」


最初に家の執事が飛んできた。

続いてメイド達が現れる。

みんな口を開けて壁と俺を交互に見返していた。


最後にお婆様が現れた。

「奥様。まだ危のうございます。下がってくださいませ」

「ルー。ルーデルハインは無事なのですか?!」


ああ、お婆様は優しいな。

状況から見て俺がやったかもしれないのに、俺のことを心配してくれているんだから。


「はい、お婆様。私は大丈夫です」

「ああ、よかった。ルー。そこは危ないからこっちへいらっしゃい。早く!」


そこに、外出していたランドさんが駆け込んできた。

「ルー様。大丈夫ですか!何があったんですか?!」

慌てて駆け寄ってくるランドさん。

しかしランドさんは駆け寄ってきながら、俺の手に持っている木の棒と壁の大穴を見て、途中で額に手を当てて座り込んでしまった。

ごめんねランドさん。俺やっちまったよ。


お婆様はそんなランドさんの姿を見て何かを悟ったのか、落ち着いた口調で言った。


「何か事情があるようですね。落ち着いたら二人とも私の部屋に来てちょうだいね。あと、みなさんこのことは他言無用でお願いします。かなり大きい音でしたので、外の人が聞きに来るかもしれませんが、ちょっとした小火だとでも言っておいて下さらないかしら」

「はい、奥様」


主人が落ち着いており、一旦指示が下ると。執事やメイド達は黙々と片づけを始めた。

凄いなお婆様は。かなわないや。


俺とランドさんはとぼとぼと屋敷に戻る準備を始めるのだった。


剣技の元ネタは某宇宙刑事シリーズの第2作目宇宙刑事シャ○バンからお借りしました。

シャリ○ンの武器レーザーブレードで必殺技・シャ○バン・クラッシュを繰り出して敵を倒す。

ルー様の中身の年代と同じ年頃の人は覚えがあるのではないでしょうか?


それぞれの後書きにその話にまつわる設定などをちょこちょこと書いていっています。

あとでまとめて設定資料にするつもりではありますが、気になる方は見返していただければ幸いです。


ブックマークありがとうございます。

見て頂ける。評価を頂けることがこんなに嬉しいとは思ってもいませんでした。

更新の励みとなっております。

今後ともよろしくお願いします。


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