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知識とお爺様の本

屋敷の中なら自由に歩けるくらいにまでは成長した。

言葉はなぜか初めから話せていたが、まだ意味不明な単語が時々出てくる。

まだ経験も知識も足りてないからそれは仕方ないか。



ランドさんはあれからすぐに騎士団を退職してうちに再就職した。

お爺様の右腕として騎士団の経験を生かして忙しく働いている。


ランドさんが騎士団を退職するときにはひと悶着あったそうだ。

事務方を務めていた副団長がいきなり退職するのだから仕方がない。

団長であるお爺様が引き抜いた形になるのだから、あちこちから苦情も来たらしい。

国の上層部からも痛くもない腹を探られたらしい。

お爺様やランドさんはあまり気にしていないみたいだけど。


ランドさんは基本お爺様の外向きの仕事えお手伝っているが、俺の守役にもなった。

そのために騎士団辞めたんだもんね。

お爺様も信頼する部下が守役になってくれるということで、安心して任せてくれているようだ。

お爺様は以前より騎士団での仕事が増えたみたい。

ランドさんが抜けた分、後任が育つまで、これまでランドさんがやっていた仕事一部を団長のお爺様がしなければいけいないからね。



俺は、この世界で生きていくには何が必要かを考えた。

前の世界と違ってこの世界には魔物がいる。

戦える力が無いと生きていけないということもないが、無いよりはあったほうがいいに決まっている。

戦える力と言ってもいろいろある。

知識、体力、技術。足りないものはいっぱいある。


まだ小さい俺にできることは少ないかもしれないが、今のうちから準備をしておいて損はないだろう。

ランドさんはあれから俺には子供ではなく一人の男として接してくれている。

まだ子供だからもうちょっと緩くてもいいのにね。

初めにやりすぎたかな。

俺もあの時は焦っていたので、なんとかしなきゃと必死だったのだ。


ランドさんは騎士団の事務方をしていたのだから頭は切れるだろうから、俺の個人教師として色々教えて貰うことにした。

俺は知識を得るためにこの家の本を持ってくるようにお願いした。

話は通じるようだが、まだ違和感はある。

ちゃんと伝わっているのか不安でもあったし、この世界の文字をまだ見たことがない。

この世界の識字率は知らないが本くらいはあるだろう。

まずはこの世界の文字を覚えることから始めることにした。


お爺様に許可をもらって執務室にある本を見せてもらえることになった。

貴族の家とあって本棚があるくらいにたくさんの本がある。

お爺様は武人なので、そこまで持っている本の数は多くはないそうなのだが、それでもたくさんあった。

前世の俺よりよっぽど読んでいるな。

そりゃ騎士団長になるくらいだから頭もいいのだろう。

はたから見ているとただのジジバカにしか見えないが、世間からみれば事務方の仕事もかなり優秀らしい。


お爺様の棚から比較的子供でも読みやすそうな本をランドさんに選んでもらい、読んでいくことにした。

うん。まったく読めない。

会話ができているのだから何とかなるかと思ったが、これはどうしようか。

自分でも何語を喋っているのかわかってはいないが、伝わっているので文法は日本語に近いと思う。


「ランドさん、読めないから読んでもらえませんか?」

俺は精一杯かわいくお願いしてみる。

ランドさんは俺が文字も読めると思っていたようで驚いたようだった。

「ルー様でもできないことがあるんですね。子供らしいところがあってよかったです」

俺を何だと思ってるんだろうこの人は。

中身はおっさんなんだが、まだまだ子供だよ。

ちょっと意味が分かんないな。

そりゃびっくりするか。


ランドさんは俺を膝の上に乗せ抱えるようにして一緒に本を読んでくれるようだ。

なんか懐かしい感じがする。

そういやこの世界でこうやって何かを教えて貰うのは初めてかもしれない。

お爺様もお婆様も優しいけど、頼ったり何かを教えてくれとは頼んだことは無いもんな。


「どうされましたルー様?」

「いや、なんでもないよ。早く読んでよ」

「はい、では初めから読みますね。この本は昔、この国がまだ無かった頃のお話といわれております・・・・    」

文字を指でなぞりながら声に出して教えてくれる。

文法的なものは日本語に近かったようで、頭にするすると入ってくる感じがする。

文字の練習もあとからしなきゃな。単語も覚えていかなきゃ。


ランドさんの読み聞かせの授業はそれから10日間ほど続けて貰った。

単語を覚えるために同時に文字の練習もした。

文字の書き方もランドさんに教えて貰えた。

俺に合わせて少しづつ内容を変えたり、飽きないように考えてくれているようで、ランドさんは本当に有能なんだなと改めて思う。

俺のわがままで騎士団から引き抜いて申し訳なかったな。

騎士団の副団長と言えばかなりのエリートだろうし、この人にはこれから頭が上がらないかもしれない。

よし、この人のためにもこれから頑張るか。


10日間の授業である程度の本が読めるようになった。

ランドさんもすごいと褒めてくれたし、優秀なんだな俺は。


本が読めるようになったら学ぶのが楽しくなってきた。

最初は避けていた難しそうな本も勝手に持ち出したりして、ずっと本を読むようになった。

昔は勉強が嫌いで、受験勉強の時にせいぜい頑張ったくらいだったな。

あの時勉強もっとしとけばよかったかもな。

ぼんやりとしか覚えていないが、ちょっと後悔していたことを思い出す。

前世ではできなかったことはできるだけやろう。

あらためてそう思えるのだった。



お爺様は俺が本を読むのはどう思っているのかな?

ランドさん経由で聞いた話では。さすが儂の孫だ!って感じだそうだがあきらかに子供が読む本じゃないよな。

もしかしたらこの世界の子供はみんな頭いいのかも。

他の子供に会うことがあったら聞いてみよう。



俺が気にいった本は

魔物図鑑、世界の地理歴史、英雄王の伝説、基礎魔法について、の4冊だ。


魔物図鑑なんかは絵入りでまさにファンタジーって感じで興奮する。

基礎魔法についてという本は勉強にはなったがあまり面白いものではなかったな。

まず魔法は神職しか使えんっていうのが気に入らない。

神様の力を借りるってのはいいとして、じゃあ魔法を使う魔物がいるのはなんでなんだ?

魔物の神様でもいるんだろうか?

全体的に宗教色が強い感じがして好きになれなかった。

家系的に使えるようになる人が多いそうだが、使えると神職にならなきゃダメなのか。

俺は騎士になるつもりだからあんまり関係ないな。

たまに急に魔法が使えるようになる人がいるみたいだけど、よくわかっていないらしい。

だいたい神の奇跡ってことで片付けられている。


「ねえ、ランドさん貴族が神職になったらどうするんだろ?教会の仕事もあるだろうし、そこら辺はどうしてるのかな?」

「そうですね。その家の方針によって違うって感じですかね。3男4男とかでしたら神職まっしぐらでしょうけど。長男とか次男だとよっぽど優秀な魔法の使い手じゃないと兼業みたいな形にしているみたいですよ」

そこら辺はいろいろあるのだろう。

「ルー様は神職に興味があるのですか?」

「いや、なりたくないよ。でも魔法って使ってみたいじゃない。こう手から火がでるとかかっこいいと思わない?」

「そうですね。子供の頃は私も憧れていました。でも大人になるにつれてそんなに便利なものじゃないとわかりましたし、教会や国に仕事を押し付けられるって印象が強いですね」

「そうなのか、俺は騎士になるから別にいいか。ありがとう」


そうしてそれからしばらくの間は本ばかり読んで過ごすことになったのだった。


貴族について

このミルデラン王国は王制を敷いています。

王の下には貴族がいます。

公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵とあり、準男爵と騎士爵は一代貴族になります。

騎士爵以外は基本領地を持っていますが、法衣貴族と呼ばれる領地を持たない貴族の人もいます。

準男爵は代が変わると領地の関係で、その子供が再任されることが多いです。

他にも大公と呼ばれる公爵や辺境伯と言われる爵位もありますが、情勢などによって変わることもありますので、その都度説明させて頂きます。

ルーデルハイン君の家は伯爵で、ランドさんは元騎士爵になります。

ランドさんは元騎士爵でですが、伯爵の側近になりますので準貴族のような扱いになります。

そのうちお爺様から王にお願いして男爵くらい貰えるかもしれません。

それも各家の力関係で常に変わっていきます。



それぞれの後書きにその話にまつわる設定などをちょこちょこと書いていっています。

あとでまとめて設定資料にするつもりではありますが、気になる方は見返していただければ幸いです。


ブックマークありがとうございます。

見て頂ける。評価を頂けることがこんなに嬉しいとは思ってもいませんでした。

更新の励みとなっております。

今後ともよろしくお願いします。


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