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「くそ師匠!絶対ロクな死に方しねえぞ。いや、俺がさせねえ!」

森の中を裸で駆け抜ける。そう真っ裸でひたすらに駆け抜ける。

いや靴だけは履かせてもらっている。靴だけだ。木々の枝葉や草木で体中に切り傷ができる。

「いてーよ、特に草!!」

なんでこんなことをしているかというと、もちろん師匠の無茶ぶりというか修行の一環だそうだ。


さかのぼる事2日前。

「ファースト。お前、服を全部脱げ」

「は!?何言ってんだよ嫌だよ。師匠そんな趣味あんのか?」

「バカヤロウ!つべこべ言ってないで早く脱げ!そのまま森に行って3日過ごせ。帰ってこれないように結界張っとくから安心しろ」

「はあ!無茶苦茶言うな!子供に何させるんだよ!」

「ほら、さっさと行け!」

嫌々脱ぐ俺を逆さまにして服を引っぺがし、森の方へ俺を放り投げた。

「靴だけは使っていいぞ、うれしくて涙が出るだろ。あとは頑張れよ。俺は学び舎に行くから」

「おいおいおいおい、待ってよ師匠。無理無理無理」

まじかよ。子供を裸で森に捨てるなんて鬼畜かあいつは。

この国には子供の人権てもんは無いのか?




俺はルーデルハインとかいう人の弟子になった。

最初は詰め込み授業。

3日間必死で読んだ本を忘れろと言われ。

次に渡された本は基礎といえるような内容の本だった。

最初の本とは趣旨からして違う。普通に売っているような魔法の入門書だ。普通に売ってるのかは知らんが。

おそらく師匠が昔使っていた本なのだろう。

ところどころに書き込みがある。驚いたのは書き込んである字が最初の本と同じ筆跡に見えた。

おそらく最初の本は師匠が書いたのではないだろうか?

研究の末にたどり着いた結論をまとめた?


ああ見えて師匠は中央で名の知られた英才だったようだ。

その才を買われ中央の教会で出世争いをしている時に何かあったんだろう。

もしかしたらあの本が原因なのかもしれない。

だってあの本が本当なら神様なんていらないというか、いないってことになる。

ただ力があるだけ。力の具現化されたものが現象であり精霊であり、そして魔物である。

こんなの異端に違いない。子供俺でもわかる。

少なくとも教会の教えとは違っている。


たぶん師匠は出世争いから脱落したのかどうかはわからないが左遷されて田舎の村に派遣された。

そんなところだろう。

師匠には悪いが俺にとってはありがたいと思う。

こうして学ぶ機会ができたんだからな。


俺の授業はいつも学び舎が終わってから。

他の子供が学んでいる間に家の仕事を手伝って、夕方から師匠の家に行く。

なんか損した気分だ、もちろん親は喜んでいるようだが。


「魔法を戦闘で使うやつはバカだ」

「なんでさ!?炎で攻撃とかできたらかっこいいじゃん」

「バカヤロウ。魔法使うときは集中しなきゃいけないだろう。そんな余裕がどこにある?1対1じゃ絶対無理だ。パーティでだって怪しいもんだ。後ろでボーっと突っ立ってるやつがいるのを守りながら戦うだなんて現実にあると思うか?殺し合いだぞ。弱いところトロいところから狙われるに決まってるだろ。軍隊で分業されているとかでないと無理だな」

「じゃあいつ魔法なんて使うんだよ?」

「生活で使え。どうしても戦いたいなら軍隊の魔法部隊に入って騎士や兵士に盾になってもらって使うしかない」

「つかえねー」

「そうだ、魔法なんてそんなもんだ。生活に役立てるか。せいぜい遠くの敵に届くような大きな魔法を覚えて大勢の人を殺すしか能がない。それが現実だ」

「魔物退治には使えないの?」

「難しいな。魔法が当てられそうな的になる大きな魔物は昨今見聞きしないし、小型の魔物なら弓矢の方が早い」

「やっぱつかえねー」

「バカヤロウ!だから土木工事とか生活で使えって言ってるだろうに。まったく何が使えないだ。剣しか振れないやつよりよっぽど生産的だろうが」

「そうだけどさー、やっぱ冒険とかあこがれるじゃん」

「なんだお前は冒険者にでもなりたいのか?」

「うーん。なりたいというか。憧れるというか、農家したくないなーって」

「バカヤロウ。さっさと冒険者でもなんでもなって死にやがれ」

う、なんか怒らせてしまたみたいだ。

でも憧れてるんだもの冒険したいよね。

「だったら冒険に役立つ魔法の使い方を教えてやる」

「え、まじで!?やった。そろそろ勉強ばっかで飽きてきてたんだよなー」

「ほーう、そうか。そうなのか。では明日は朝から来い。冒険に役立つ修行をさせてやろう」

「よっしゃ。朝からだね。わかったよ・・・・・・・・・・・」


って言った俺のバカヤロウ!

なんでこんなことになってんだよ。


そんなこんなで1日目は村がまだ見える森の入り口の木の上で過ごした。

師匠の奴、マジで結界張れるのね。

なんか見えない壁があってそれ以上村には近づけないでいた。

2日目は少し冒険してちょっとだけ奥に入る。

腹が減ったな。この草食えるのかな?

いや腹壊したら目も当てられんし、やめとこう。

水だけは近くに流れる川から補給できた。


そして3日目。今日で終わりか。ただの嫌がらせじゃないのかこの修業は。

まだ暖かい時期だったからよかった。

冬だと凍死。夏でも虫や毒のある生き物に刺されるか咬まれて、下手したら死んでたかも。

そこらはまだ師匠の優しさだったのかな?

いや、違うな。

たぶん思い付きだろうし。


あと半日くらいかと思った時に何かの視線を感じる。

子供の裸を見るのが趣味な人でもいるのかしら。

・・・・・・・

というかあそこでこちらを見ているのはオオカミさんではないでしょうか?

「アオーーン!」

うわわ、遠吠えってことは仲間とか呼んじゃってるの?

裸の子供の獲物がいるぞーって。

やめてください、マジで勘弁して。

狼から遠ざかるように必死に反対方向に逃げる。

狼はすぐには襲ってこないらしい。

体力が尽きるのを待ってから襲うつもりなのだろうか?



で、最初に戻るわけだが。

腹は減ってるわ草木は痛いわで泣きそうなんですが。

誰か助けて。まじで食われる。

その時足が木の根っこに引っかかったのか、すっ転んでしまった。

もちろん裸なので擦り傷だらけになる。

「痛たたた。くそー。」

しまったオオカミさんがいるんだった。まずいな。


気が付くと5メートルくらいの距離に狼が3匹俺を囲むように、ゆっくりと回りながらこちらを狙っているのが見えた。

ルーデルハインさん。いきなりやらかしてますね。


こんな性格なので中央でいろいろあったのかもしれません。

魔法は使えますが、魔法に頼るのを嫌っているような感じがします。

何か理由があるのでしょうか?


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