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この街に来てから2週間が経ったある朝、冒険者ギルドでルクスさんに呼び止められた。


「ファースト君、ちょっといいか?」


いつになく険しい表情だ。肩で息を切らし、真剣な目で俺を見つめている。


「なんですか?そんなに慌てて……ルクスさんらしくないですね。何かあったんですか?」


「ここでは話せない。悪いが、一緒に来てくれないか。」


その口調から察するに、どうやらただ事ではなさそうだ。俺は少し戸惑いつつも、黙って彼の後をついていく。


ルクスさんとは、例の一件以来、何事もなかったように普通に接している。彼のパーティーの他のメンバーも変わらず接してくれるから、俺とのことは黙っていてくれているのだろう。俺もルナとは少し距離を置きつつ行動していたので、彼らも安心しているのかもしれない。


ルナ自身は何度か文句を言いに来たけど、まぁ、こちらとしては仕方ない。


人気のない路地に入ると、ルクスさんが振り向き、真剣な表情で口を開いた。


「頼む、力を貸してくれないか? 詳しいことは今は言えないが、終わったら話す。いや、話さなければならないだろう。」


「……つまり、俺をルナの家の厄介事に巻き込むということですね?」


「結果的にはそうなる。だが、きちんと報酬は払うし、悪いようにはしない。どうだろう、手伝ってくれないか?」


「ギルドに頼むという選択肢は?」


「できれば他領の公的な力は使いたくない。公にしたくない事情があるのと、余計な借りを作りたくないんだ。」


「……わかりました。で、どうすればいいんですか?」


「本当にいいのかい? てっきり断られると思っていたけど……。」


「いいですよ。知らない人ならともかく、ルナは友達ですし。ルクスさんも約束を守ってくれています。これで知らん顔をしたら、ただの人でなしじゃないですか。」


「……ありがたい。恩に着るよ。」


ルクスさんは軽く会釈をして、用意してあった馬へ俺を促した。どうやらすぐに出発する準備をしていたらしい。俺は馬に乗るのはあまり得意じゃないが、田舎で少しだけ練習した経験があるので、なんとかついていけそうだ。


「詳しい話は向かいながらさせてくれ。まずは街を出よう。」


南東門の近くに繋いであった馬を引き、門へ向かう。守備兵に冒険者証を見せて門を抜ける間も、ルクスさんは焦りを隠せない様子だった。


「門を出たらすぐに馬に乗ってくれ。あとは俺についてきてほしい。」


「わかりました。でも、久しぶりだから、最初はゆっくりで頼みますよ?」


俺の言葉が聞こえなかったのか、あるいは無視したのか、ルクスさんは馬にまたがると勢いよく走り出す。


「むおぉっ! 久しぶりなんでちょっと怖いんですけど! 速い速い!」


なんとかついていく俺。正直、これで大丈夫なのかと少し不安になりながらも、全力で馬を走らせた。


馬を走らせる道中で、ルクスさんは話を続けた。


「実は、我々のパーティーは王都への護衛依頼を受けていた。そしてその依頼自体は無事に完了したんだが……ベルファスへ帰る途中で、妙な一行とすれ違った。それが全ての始まりだった。」


「妙な一行?」


「そうだ。その一行が通り過ぎた直後、突然霧が深くなり、道が全く見えなくなった。普段はそんな場所で霧が出るはずもないのに、まるで何かに誘われるように森の中へ迷い込んでしまったんだ。」


「それで迷った挙句、何かに襲われた……とかですか?」


「そうだ。森を彷徨ううちに開けた場所に出た。その場所で、奴に遭遇したんだ。」


「奴?」


「地竜だ。」


「……竜!? なんでそんなものがこんな近くに!?」


「地竜といっても下級種だ。だが油断はできない。出会い頭に不意を突かれ、何も対処できないまま戦闘になった。隊長のダーレスとドルガンが初手でまともにやられ、戦線を維持するのが難しくなったんだ。それで他のメンバーは近くの洞窟に隠れた。」


「なるほど……で、ルクスさんは?」


「俺は避ける方向が逆になって、なんとか森を抜け出せた。すぐに助けを求めようと戻ってきたわけだ。」


「それって、いつの話ですか?」


「昨日の昼過ぎだ。」


「……20時間くらい経っているってことですね。怪我がひどいなら、持つかどうか……。」


「だから急いでいるんだ。申し訳ないが、力を貸してほしい。」


「わかりました。とりあえず現場へ行きましょう。もしかしたら地竜はいなくなっているかもしれませんし。」


「そうだな。それを祈ろう。」


森が見えてきたのは、そこからさらに2時間ほど馬を走らせた後だった。


「あの森だ。気を付けてくれ。」


俺たちは馬を降り、森の中へ慎重に足を踏み入れる。ルクスさんの後をついていくと、木々の間に広場が見えてきた。


「いないな……地竜は。」


一瞬安堵しかけたが、ルクスさんが指差す方向を見ると、その広場の端に洞窟があり、その前には地竜が寝そべっていた。


「あいつだ。いけるか?」


「たぶん大丈夫だと思います。でも、まずは洞窟の中の4人の安否を確認できませんか?」


「……そうしたいが、奴が邪魔だな。」


「やっぱり、先に倒すしかないですかね。」


「そうなるな……おっと、気づかれたか!」


地竜が突然後ろ脚で立ち上がり、大きく咆哮を上げた。


「グオォォォォォアーーー!」


その迫力に、空気が震え、身体にビリビリと衝撃が伝わる。


「来るぞ!」ルクスさんが叫ぶ。


地竜が勢いよくこちらに向かって突進してきた。


「くっ……やるしかないか!」

馬に乗るのは難しいです。

主人公は運動神経いいですね。うらやましいです。


出てきました。地竜です。

小型ですがかなりの強敵ですね。

街の周りに出ることはまず無いので、かなり危険です。


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