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始まり

「あれがベルファスか……。聞いていたよりずっと大きい」


「また師匠にからかわれたんだろうか?」

馬車に揺られながら、遠くに見える巨大な壁をじっと見つめる。


近づくにつれ街の大きな壁がいっそう際立ち、俺の気持ちもつられて高揚していく。


「これからあの街で暮らすのか」


ふと不安になり、懐に手を伸ばして財布を確認する。

中には、家の手伝いで少しずつ貯めたお金と、両親からの餞別。

「気持ちだけだ」と言いながら、師匠が渡してくれた意外とまとまった金額も入っていた。

これからの生活、いや冒険を思い浮かべて少し浮かれつつも

無駄遣いはできないな、と考えていた。



知り合いの行商人のおじさんの厚意に甘え、乗せてもらったこの馬車もここでお別れか。


その街、ベルファスはこの近辺ではそれなりに大きな街だ。

周辺の街を繋ぐ交易の中間点のような立ち位置で、人の往来はかなり多い。

行き来する人も多いが、住んでいる人もそれなりに多い。

初めて地元の村から出てきた俺は、どれくらいの人口がいるかは知らないが多いらしい。

あとで誰かに聞いておくかな。


「ファー坊、そんなに遠くはなかったが、泊まりがけの旅なんて初めてだろう?辛くなかったか?」


「おじさん、“ファー坊”はやめてよ。これでも一応、大人になったんだからさ」


「まだ15歳なんて子供のうちだ。

 どうだ、冒険者なんて考えやめて、親父さんのあとでも継いで、

 おじさんにいい作物でもおろしてくれんか?」


「俺なんてどうせやっかい者扱いだよ。うちには兄さんがいるもの。

 商売のことなら父さんと兄さんに頼んでよ。

 次男より下は農地を自分で開拓するしかないないんだぜ。

 だったら冒険するのとそんなに変わらないじゃないか」


「そうは言ってもなぁ。

 見ただろお前の母ちゃんのあの泣きそうな顔。

 あんな顔しながら『ファースト、いつでも帰ってきていいのよ』とか言ってるの見たら、

 俺も子供のこと思い出しちまってなぁ・・」


おじさんは少し涙ぐみながら、そのあとも俺に考えなさないかと話をする。


愛想笑いを返しながらおじさんの話を流していたが、家族の顔を思い出してしまった。

ダメだな少し気持ちを引き締めなきゃ。



「しかし、ファー坊が冒険者か。

 俺もそういった夢を見て家を出て行ったやつをそれなりに見てきたが、そう甘いもんじゃねえぞ。

 辛かったら動けなくなる怪我する前に家に帰るんだな。

 

 それと、何かあったら俺のところに来い。

 俺もお前とこの親父と長い付き合いだから悪いようにはしねえ。

 この街を拠点に商売を続けているから、いつでも頼ってきな。

 危ない橋以外なら力になってやるからさ」


「ありがとうイロスおじさん。

 なんかあったらその時は頼るよ。


 で、さっそくなんだけど。

 やっぱりさ、最初は冒険者ギルド?ってところに行って登録とかするの?」


「こりゃ先が思いやられるじゃねえか。

 ああそうだな。

 街によって呼び方は違うかもしれんが、それで合ってる。

 何か仕事を紹介してもらうにしても窓口は必要だ。

 冒険者ギルドに登録しといて間違いはない」


「どこにあるのかな?」


「入ってすぐにあるぞ。

 街の入り口にある方が冒険者の出入りにも便利だし。

 不審者の選別や何かしらの危険にも対処しやすいからな。

 だいたい町の入り口付近にある」


「ありがと。それじゃ、まずはそこに行ってみる」


「ああ、そうしろ。

 なんにしろまずはそこで登録してからだな。

 それから宿だ。

 お前さんは宿は決めてあるのかい?」


「いや、街自体初めてだからまだ決めてない」


「そうか。

 ファー坊あんまり安すぎるところはやめとけよ。

 宿に泊まってる中には、危ないやつもいるからな」


「わかった。そうするよ」



話しているうちに街の門が目の前まで迫ってきた。

壁が大きいわりに門は小さいみたいだ。



「行商人をしているイロスです。

 クリークの村まで行って戻ってきたところです。

 こいつはファースト。

 知り合いの息子なんだが、冒険者をしたいっていうんで、

 こいつの親父さんに頼まれてここまで乗せてきました。」


イロスおじさんが門の守備兵らしき人に声をかける。


「やあ、イロスさん!お帰りなさい。

 商売の方はどうでした?

 もし美味しそうなものでも手に入ったなら、ちょっとだけ分けてもらえませんか?

 もちろん、ちゃんとお金は払いますよ」


「おいおいアーネス。

 せっかく新人の冒険者を連れてきたんだから、

 最初くらい格好つけさせてやろうとしたのに台無しじゃねえか」


「はは、ごめんごめん。

 イロスさんに会ったのがうれしくって、ついね。

 で、その子が冒険者になりたいって子?」


「ああ、ファーストってんだよろしくな」


 おじさんがポンっと俺の背を叩く。え、俺も挨拶するの?


「は、ファーストといいます!よ、よろしくお願いします!」

突然声をかけられるなんて、ちょっと緊張するじゃないか。俺はただの田舎者なんだぞ……。


「ああ、よろしく。

 この街の守備兵をしているアーネスだよ。

 よろしくね。

 僕も昔は冒険者にあこがれてこの街に来たんだけど。

 いつの間にかこんな感じさ。

 まぁこの仕事の方がなんかしっくりきてるけどね」


人の良さそうな笑顔を見せながら守備兵のアーネスさんは、じろじろを俺を上から下まで見ていた。ゆるそうな人だけど、仕事はきっちりとやるタイプの人みたい。


「イロスさんの知り合いだから、たぶん大丈夫だろうけど。

 一応職務なんで質問させてもらえるかい?」


「はい、わかりました」


なんだろう?目標とかかな?


「名前は?」


 急に鋭い目つきになり厳しい口調でアーネスさんが問いただしてきた。


「ファーストです」


「身分を証明するものはありますか?」


「はい、これが村の役所からもらったものです」


慌ててポケットから出立前に村の役場で貰った書類を出す。


「ふむ、本物だね。来訪目的はなにかな?」


 書式かなんかを見たんだろうか?


「冒険者になろうと思って・・・」


「なぜ、この街を?もっと大きな街はあるはずだけど?」


「ここが近かったからです。まずは力を試したいと・・・」


くそ、歯切れ悪いな俺。


「なるほど、わかりました。街に入るのを認めましょう」


「あ、ありがとうございます」


「ごめんね。

 一応最初だから厳しくさせてもらったよ。

 でもほかの街だと知り合いもいないと思うからもっと厳しいと思う。

 勘弁してね。これでもだいぶ緩くしたんだからさ。」


「いえ、ありがとうございます。」


こっちは冷や汗出るっての。

でもまぁいい経験させてもらった。

やっぱ魔物もいるし戦争もあるみたいだからそういうもんなのかな。


「じゃ、手続きはこれで終わりだから。頑張ってね」


手をひらひらさせながらアーネスさんが見送ってくれる。


俺はおじさんと馬車と一緒に街に入っていくのであった。


さ、まずは冒険者ギルドってとこだな。


これが投稿としては初めてのものになります。


できるだけ毎日投稿するつもりですので、

長くお付き合いいただければ幸いです。


ブックマークして頂きありがとうございます。

見て頂いた人に評価を頂くのがこんなに嬉しいものかと、更新の励みになっております。


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