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1.記憶

宜しくお願いします!(>_<)ゞ

「……ん、…ねえさん、ルーナ姉さん!」


何…誰か呼んでる?でも起きるのは怠いし、もう少し寝たい。


「ルーナ姉さん!!」


再び自分を呼ぶ声に重いまぶたを開けた。目に一気に光が入ってきて目が痛くなる。


「ルーナ姉さん、良かった!今、使いの者を呼んでるからもう少し待って。」


目が慣れてくると、声の方へ向いた。聞き慣れた声だ。優しく可愛い声。


「レイト…?」

「うん!姉さん!」


レイト…そうだ。私の可愛い弟。


ゆっくり体を起こそうとすれば頭と体全体が悲鳴を上げた。


「ッ…!」

「ダメだよ姉さん!横になっていて!」


確かにこれは起き上がれない。よく分からないが、私は今全身に怪我を負っているらしい。


「頭、いたっ…」


鈍い頭を叩かれたような頭痛がして意識が遠くなる。


「ねえさん?…姉さん!」


レイトが何度も呼びかけてくれる声に応える事もできずに意識を手放した。







目が覚めると、自分の部屋だった。昔から好きな黄色で統一された家具にふかふかで心地良い天窓ベッド、窓の向こうにはテラスが備えつけられている。だけど、いつもとは違うように感じてふわふわする。


体を起こすとまた鈍い頭痛がした。瞬間、頭の中を情報が流れた。


私はルーナ マルチウス。この国アルティフォスの公爵家の娘で11歳。

本当に?

あれ……私…は…。私は…村上 紫音。日本に住んでいた高校生じゃ無かった…?

いや、これは前世。今の私はルーナだ。


「何で急に紫音の記憶なんか思い出したんだろう。」


っていうか、私何で怪我したんだっけ。


体中には包帯が痛々しく巻かれている。


怪我をして頭を打った衝撃できっと前世の記憶を思い出したんだろう。前世、紫音はあまり異世界転生や前世の記憶を持ったまま生きるといったようなファンタジーな話しはあまり好きでは無かった。どちらかというと現実的な科学や言語といったジャンルを好んでいた。実際に起こるとなんて思ってもいなかったし、空想に心ときめかせる事も出来なかった。


けど、実際に起こっちゃったなぁ。


驚いてはいるが、今までルーナとして生きてきたのだ。何かが急に変わる訳でもない。


「気ままにゆっくり生きましょう!」


前世の記憶があるので実質二度目の人生のようなものだ。楽しまないと損しかない!


心をそう決めて胸前でグーを作った時だった。ガチャッと扉の開く音がして慌ててグーを納める。入って来たのはメイドのアンナだった。茶色い髪を団子にして結い上げていて、眼鏡をかけた可愛らしい私の専属メイドだ。アンナと目が合うと眼鏡の中の茶色の瞳をこれでもかと開いた。


「っお嬢様!よかったです!はっ、すぐに公爵とレイト様を呼んで参ります!」

「お願い」


「はい」っと元気よく挨拶するとすぐに部屋を出て行った。

アンナは私と年が2つしか違わない。私が6歳の時から私のメイドとしてついてくれていて、主従関係以前に親友だ。


アンナが部屋を出てすぐにバタバタと走る音が聞こえてきた。お父様にしては早すぎるし、となれば…


「お、お嬢入ってもよろしいでしょうか」


か細く少し震えた声が扉の向こう側からした。


「どうぞ」


扉が開くとそこにいたのは予想したとおりの人物だった。


「ルイス」


「お嬢!良かった…本当に…!」


執事服に身を包み、茶色の瞳を涙で潤ましているのは、アンナ同様、私の親友ルイスだった。アンナと同じ時期に私の専属執事になり、年も私と同じだ。


ルイスは私の側にやって来るなり私をじっくりと見た。


「お嬢が怪我したって聞いて橋に駆けつけたらお嬢、全身のあちこちに酷い怪我してるし、死んだみたいに顔の色薄いし、ずっと眠りっぱなしだったし…!俺、生きた心地しなかったよ!」


ルイスの今にも泣き出してしまいそうな顔にこんなに心配をかけてしまっていたのかと、心が痛くなる。


「心配かけてごめんなさい。その、あんまり怪我をした時の事を覚えて無くて教えてくれないかしら?」


「…グスッ……ああ」


ルイスの話しによると、私が弟のレイトと庭で遊んでいたときに起きた事故だったらしい。マルチウス公爵家の領地は大きく、家の庭も大きい。庭には川が流れており、その日はその近くで遊んでいたらしい。川には橋が架かっており私とレイトがその橋を渡ろうとした時、橋が急に壊れたらしい。それで川に落ちたらしいが近くにいたメイドに助けてもらった。幸い、川の水位は浅く流れることや溺れる事は無かったが川の堀は深く橋の高さがまぁまぁあった為こんなに怪我を負ったらしかった。特に私は打ち所ご悪く頭を打った為なんと3日も眠っていたそうだ。


それは心配になるわね。それにしても橋が急に壊れるなんてことがあるのか。怖いな。


「レイトの怪我は大丈夫なの?」

「坊ちゃんの怪我は足を岩で切ったぐらいだ。どうしたら橋が壊れただけでそんな怪我を負うのか、お嬢が不運なんだよ。」

「それは、否定出来ないはね。」


不運どころではない。弱すぎる。この世界では、女の子は可愛く弱く男の子に護られる立場だと思っていたが前世の記憶を思い出した今、そんな事は決してないと思う。日本では、活躍している女性は多くいるし強くかっこいい人だって沢山いるのだ。だから、


私、鍛えた方がいいのかしら…?


「ありがとうルイス。事故前後の記憶が無かったから助かったわ。それと、お父様が来る前に髪だけ整えてくれる?」

「分かった」


一言返事すると、化粧室から手鏡とくしを持ってきた。ベッドに座ったまま、ルイスに髪をといてもらう。3日も寝ていたのだ、ベタベタする。本当は風呂に入りたい気持ちをお父様が来るまでの我慢だと思い、手鏡を覗き込む。


前世の私、紫音は黒髪黒目のごくごく一般人だった。今鏡に映るルーナとの違いに苦笑いが漏れる。ルーナは前世とは真逆で派手な髪色をしているし、前世と比べるとだいぶ可愛い。薄い紫のさらさらな腰まで伸びた髪に緑の瞳。それが鏡の中のルーナの姿だった。しかしこの瞳は偽りであり、元々は美しい黄金の瞳を持っている。まぁ、理由は色々とあるのだが。体型は細身で白く透き通る雪肌。うん、前世と比べものにならない。


まぁ、自分の容姿は前世でも特に気にしていなかった。可愛いものは、好きだし愛でていたいが、自分自身の事となると途端に興味が無くなってしまうのだ。


「はいお嬢、出来た。」

「ありがとうルイス」


へへっと笑うと手鏡とくしを直しにルイスは化粧室に行ってしまった。


しばらくするとコンコンと、扉をノックする音がした。


「ルーナ、入ってもいいかい?」


この声は父だ。優しく落ち着く、昔から大好きな声。


「はい、お父様。」


返事すると、お父様とレイトが部屋へと入って来た。二人は私と目が合うと安堵したような心配そうな顔をした。


「ルーナ、本当に目が覚めて良かった。もうこのまま目が覚め無かったらと思うと恐かったよ。」

「ご心配をおかけしました。レイトもごめんなさい。怪我は大丈夫?」

「姉さんが謝る事じゃないよ。それに僕の怪我なんか大した事無い!姉さんは自分の心配をして…」


泣きそうな顔で言われてしまい、「分かったわ」と返すしかなかった。お父様も酷く心配してくれている。


「疲れているだろうし今日はこの辺にするね。ルーナの無事も確認出来た事だし。ゆっくり休むんだよ。」

「はい、お父様。ありがとうございます!」


父は頭を撫でると部屋をあとにした。

レイトは残りじっと、私を見た。すると、いきなり抱きつかれた。怪我を配慮するように優しく。


「姉さん、本当に生きてて良かった!あの時僕が守ってあげられなくてごめん。」


「それこそ謝る事じゃないじゃない。」


だって、誰も橋がいきなり壊れるなんて予想出来ない。


「今日は姉さんも疲れているだろうし部屋に戻るよ。明日また来るね。」

「ええ、待ってるわ」

読んでいただきありがとうございます(*'▽'*)

次も何卒よろしくお願いします!

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