恐怖! おキャビアケーキの怪!!
思い出語り。
とある古いゲームを思い出したので、ちょっと失礼。
フェイク増し増しなので、そのままではありません。
とあるゲームの話をしよう。
そのゲームはケーキ屋を経営するゲームで、オリジナルケーキを作り、地域で一番のケーキチェーン店を目指すゲームである。
チェーン店の名目通り、ゲームにはいくつかのマップが存在し、マップ内のどこにケーキ屋を建てるかも重要になってくる仕様だ。
用意された選択肢から、店名、店舗の外見、店員の制服などを選び、マップ内で規定の店舗数になったらマップクリアとなる。
しかもそのシミュレーション要素は凝った作りになっていて、マップ内の町が発展するのだ。
発展(時間が経過)したら大きな商業施設等も建設される事もあり、地価(ゲームの仕様で言えば客足の良さや土地の購入額)も変動する。
変動する前にその土地を押さえてチェーン店を建てて、開店費用を抑えるのも重要。
運良くその商業施設が建つときに、ゲーム画面がその場を映していると、有料だが“絶対に成功する”キャンペーンを行えるミニイベントもある。
なんて作り込まれた、経営シミュレーションゲームなんだ……!!
その時の自分はそう感動していたのだが、事情はいきなり大きく変わる。
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そのゲームは特別なスタッフを雇える。
店長やエリアマネージャーに配属させて使うのだ。
それぞれに能力値が有り、その能力値によって店舗やマップへの補正がかかるのだ。
ライバル店達も含めて人材は共通で、4社位でマップの覇権争いをするには少数しかいないので、スタッフの取り合い。 なんて珍しい現象も存在する。
が、スタッフはそれだけではない効果を持っている。
それは会社全体のイベントの時に発揮される。
会社の慰安旅行だったり、会社の運動会だったり、ボランティア活動だったり。
年に1回、特定の日に起きるイベントだ。
その時に特定のスタッフが居ると各スタッフにつき1度だけ追加イベントが発生し、ケーキの材料として食材を1つ持ってくる。
スタッフによって様々で、ケーキに使うと良さそうな食材を思いがけず入手出来るのは、とても嬉しいものである。
……普通の食材は研究の項目に設定した一定額を毎月投資しつづけて、研究ゲージが貯まったら新しい食材を。 と言ったものである。
これでホッケーマスクを被った特徴的なスタッフが持ってくるものこそ、キャビアである。
こんなものをケーキに入れてどうするのだ。
プレイヤーは必ず一度はそう思うのである。
だが。
だがなのだ。
折角手に入れた新食材。
使ってみようと思ってしまうのが人の業。
自分自身、なぜそうなったのかは分からない。
こんなネタ(にしか見えない)食材を使うなら、いっそハッチャケてしまおう。
なにかの拍子に、そう思ってしまったのだ。
その結果に生まれてしまったのが、タイトルにある“おキャビアケーキ”だ。
基本的なスポンジ以外の項目で、キャビアを選べる枠に全部キャビアを詰め込んだ狂気の逸品。
当初は商品名を“やまもりキャビア”とかにしていたが、この後に記す出来事が有ってからは、おキャビアケーキへと改名した。
このおキャビアケーキで何があったのか?
それは、バカ売れである。
新作のケーキを出すと、少しの時間経過の後に新作ケーキへのアンケート結果が出る。
そのアンケートによるおキャビアケーキの評価は、
悪評。
見た目が悪い。
高い。
大体がそれで埋まり、自分も「そりゃそうだ」と納得するのだ。
そしてひとしきり納得した後に、資金の項目が目に入った瞬間、驚愕するのだ。
今まで見たことのないペースで儲かってる!!?
悪評なんてなんのその。
アホほど売れる。
利益が出る範囲内で値下げをしてみたら、もっともっと売れる。
キャビアのどこにそんな影響力が有るのかと思う位には売れる。
他のケーキの売り上げが下がるレベルで売れる。
ライバル店の客を根こそぎ奪い、早期に資金難へ追い落として撤退させるまで売れる。
このゲームの全マップを通じて、どれだけ客達はキャビアに飢えているんだよと怖くなる勢いで売れる。
今までのしっかりしたシミュレーションゲームはどうした。 そう思えるほどに売れる。
細かく念入りに錬られた出店計画なんて消え去った。
商業施設が建つ瞬間に運良く立ち会えて、資金が増えるイベントが起こせるかどうかで一喜一憂していた時代が終わる。
金が唸るほど得られる。
地価の高い所を取り敢えず全部押さえてしまえ。
どうせ使い切れない額が有るのだから。
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こうしてキャビア様の力で全ては平定された。
ケーキのスポンジをパイ生地に変えた、おキャビアパイも超人気。
ドーナツをベーグル風に使ってキャビア様を入れた、おキャビアドーナツも完全大成功。
調子に乗って食材として手に入れた他の3大珍味を使った“おフォアグラケーキ”や“おトリュフケーキ”等も作ってみたが、それはなぜか売れなかった。
まあケーキのスポンジにフォアグラの塊を4つも5つも載せられたって、全高が高くなりすぎてそのまま食べられたものではないのだが。
それなら薄切りトリュフの方はと言えば、コレといった良い評価も悪い評価もなく、おキャビアケーキを売り出す前みたいな売り上げしか出せなかった。 謎だ。
かくしてこのゲームは稀代のキャビアゲームとして通の間で知られ、プレイ動画ではキャビアを使うか使わないかをタイトルや概要、動画の冒頭へ添えるべき要素として扱われる様になる。
現在は権利元の会社が潰れてしまい、譲渡などもされないままだったので権利は虚空へ消えた。
だが著作権の関係上、著作権元以外が勝手に権利を主張したり使用しても違法になるだけ。
こうなると再発売は不可能になる。 リメイク、リマスター含め。
権利を持っていた原作者のひとりである法人が居ない。
その影響力が大きいのだ。
幸いだったのは、これはデータ配信のゲームではなく、ディスクによる記録媒体で発売されたゲームである事だろう。
随分古いゲームでプレミア価格が付くものとなったが、探せばまだ見つけられて買える程度だ。
配信のみだったなら、会社が潰れた時点で配信がストップし、ダウンロードで二度と入手出来なかったことだろう。
今もそのゲームを愛好し手元に残している諸氏は、時折思い出しては再プレイしている事だろう。
あのキャビア無双の快感を、自分ももう一度味わいたいものだ。
キャビアが強すぎた。
このゲームには2もあるのですが、そっちでも少し弱くなってますが十分に強くて、入手出来ればほぼ勝確。
この会社の開発さん達、どれだけキャビアが食べたかったのか……。