80 リッチィさん、お風呂へ
すみません、前話にあげた魔王さまの閑話を一時的に削除させていただきます。
閑話の続きが時系列におかしくなりそうなので、閑話は後日にまとめて載せようかと思います(6話くらい?)
「ふわぁ」
あまりの心地好さに声が漏れる。
「気持ちいい」
暖かいお湯が全身をゆっくりと温める。
現在、私は魔王城の広いお風呂でお湯に浸かっていた。
久しぶりの広いお風呂だ。
ダンジョンにあるお家にも勿論、土魔法でお風呂は作ってあるのだが、あちらは水を張ったりとお湯を沸かしたりと色々と面倒なので、簡単なドラム缶風呂なのである。
「ぁああああ」
全身を伸ばして入るお風呂は最高だ。
日本人ならやっぱり広い湯船にゆっくりと浸かりたいよね。
「はぁ……」
それと同時にため息も出る。
お風呂に入ってから体を洗っていると、まざまざと自分が女の子だということが思い知らされた。
透き通るような白い肌。
髪は漆黒の闇のように黒く、ツヤとハリがある。
お肌はピチピチで水を弾き、毛穴などまるで見えない。
スタイルはスレンダーながらも恐ろしいくらいにバランスがいいし、胸も小さくはないが大きくもない。
実に着物姿がとても似合いそうな日本人好みの大和撫子だ。
流石は閻魔大王様渾身の自信作ボディだ。
良い趣味してる。
この体が私自身じゃなければね……あははははは……
「やめよう……」
もう済んだ事だ。
これ以上考えていたらネガティブで闇落ちしてしまいそうだ。既にアンデッドだけどね。
気持ちを切り替える。
私はあの後、無事に魔王様を泣かし執務室に縛りつけお風呂に来ていた。
本当は直ぐにでも帰るつもりだったのだが、ソラが何か途中で用事――必要な物を思い出したらしく、『待ってて』と私にお願いし、用があるという自分の研究室、魔王城の奥へと消えていった。
ちなみにソラは魔王城では普段から姿を《幻術》魔法で消しているらしく、あのまま宰相様と魔王様に気付かれる事なく去っていった。
一応は宰相様――おじいちゃんに挨拶しなくてもいいのかと聞くも、『だれ?』と本気で首を傾げていたので『あなたの祖父ですよ』と教えてあげた。暫く考え思い出したソラは『だった』と頷き、『めんどう』だと口にし去っていった。なんて親不孝ならぬ、爺不幸なんだろうか。そんな言葉はないけれども。
それにしてもソラの話では、魔王城の奥に隔離された自分の研究室に行くと言ってたけど……何でだろう、凄く嫌な予感がする。
あの娘、研究室に何を取りに向かったんだろう。
どうか変な物をダンジョンに持ち込みませんように。
これ以上、あのダンジョンがカオスな状況になっていくと、流石にダンジョンマスターの私でも管理しきれない。
野菜のモンスターは一応、私の管理下にはあり命令は聞いてくれるのだが、如何せん数が多過ぎて正確な数や行動範囲が把握出来ていない。
ダンジョンコアであった、変態ヤンデレストーカーコアがいれば話は違ってくるのだが、今の所はアレを復活させるつもりは元々ないし金もない。1億とか絶対無理だわ。てか、アレを復活させたらまた暴走しそうで本当に怖い。
もう少しマトモな人格ならぬコア格ならば良かったんだけどなぁ。
そしたらチラシに入金したりしなかったのに。
ちなみに、ダンジョンコアの事を閻魔大王様に抗議ならぬ何だアレはと聞いてみた所、どうもダンジョンの存在自体が意図して生み出した物ではなく、本当に偶然の産物で生まれた物だそうだ。
閻魔大王様もこれにはビックリしたと驚いていた。
「あふぅ」
まぁ、そんなことは今はどうでもいいとして、ゆっくりと広いお風呂を堪能しよう。
全身の力を抜いて湯船に浮かぶ。
本当に気持ちがいい気分だ。
お湯加減も丁度良いし、湯船の広さも申し分ない。というか25メートルプール並に広くて少し持て余しているくらいで、一人で入るのがもう訳ないと感じてしまうくらいだ。
ぷかぷかと湯船に浮かびながら考え事をしてると、段々と眠気が襲ってくる。
魔王様のお陰で3日間徹夜で執務をしてた影響もあり、本当にこのまま眠ってしまいそうだ。
うつらうつらと瞳が閉じていくのを感じる。
もう睡眠という欲求に耐えられないと湯船に沈んでいく私だったが、
「リッカ様、何かご不便な事はございませんでしょうか?」
「ふぁっ!? だ、大丈夫です……」
お風呂の向こう側で待機するメイドさんから声が掛けられ意識がはっきりと覚醒する。
ヤバい、危うく溺死するところだった。
あ、いや、私はリッチだから別に大丈夫なのか。息しなくても死なないしね。死ぬほど苦しいけども……ぶくぶくぶくぶく.。o○
「宜しければお背中を流しましょうか?」
「いえ、既に洗い終わったので大丈夫です」
これでも日本人なので、湯船に入る前の作法は心得ている。体を洗わずに湯船に浸かるなんて行為は絶対にやってはいけない。
「そうですか、何かご用がありましたら何なりと申し付け下さいませ」
「は、はい、ありがとうございます」
メイドさんにお礼を言って頭を下げる。
扉を挟んで姿が見えないのに、頭を下げてしまうのはやはり前世の影響だろうか。電話越しでお客様に頭を何度も下げていた頃を思い出す。
そう言えば、皆は一体どうしているだろうか。
私が突然消えて迷惑を掛けたかもしれないけど、あれは流石に私でもどうしょうもなかった。誰がリアルで勇者召喚で異世界に拉致されることになると予測出来ただろうか。
しかも女勇者限定の召喚とか本当に謎すぎる。てか何でそれに男の私が引っかかったのが本当に分からない。そのせいで性別を無理矢理変えられたし、何故かリッチ(金持ち)を願ったらリッチィ(アンデッド)にされるし……本当に人生とはどうなるかなど分からないものだ。
「リッカ様、よろしいでしょうか?」
再度メイドさんから声が掛けられた。
何だろうかと思っていると、少し慌てているようで答えてくれた。
「魔王様が御一緒に入ると来ているのですが、よろしいでしょうか?」
「はい?」
魔王様が御一緒に?
突然の事に思考が停止していると、私の返事を待つことなく扉が開いた。
「ワシも一緒に入っていいかや?」
マジ勘弁してください、魔王様。
読んでくれてありがとうございました!




