8 リッチィさん、宿屋へ
「リッカさん、ここに服を置いときますから着替えて下さいね」
冒険者ギルドでの登録が終わった私は、おじさんの紹介を頼りにミラさんのお母さんがやってる宿屋へとお世話になることになった。
「すみません、何からなにまでお世話になることになって……」
「いいんですよ、リッカさん、気にしなくて」
本当に申し訳ないと言う気持ちが溢れるなか、ミラさんは慈愛に満ちた表情で此方に微笑みかけ、部屋のドアを閉めて出て行った。
あの後、ギルド長との短い話し合いが終わった私は早速とおじさんから『力になってくれるから』と紹介してもらった受け付け嬢のミラさんを訪ねてみた。
門番をしてるおじさんから紹介してもらったと最初に説明し、手紙を渡した当初はとても困惑していたミラさん。
だけど、話の途中に私が着ているローブがおじさんのだと分かり『そのローブどうしたんですか?』と聞いてきたので『とても素敵な好感が持てる人から貸して貰いました!』と、感謝の気持ちをこれでもかと込めて微笑みながら説明した。
そこで『あの、なんでローブの下が裸なんですか? 寒くないんですか?』と聞かれたので『私にはおじさんから貰ったこのローブだけで十分です。それに優しく温まるもの(生姜湯)も貰いましたし!』と、おじさんをこれでもかとヨイショすると『リッカさん? 今日泊まる宿は決まってないんですよね、なら家に来ませんか? いえ、お父さんも含めて一緒にお話したい事があるので来てください』と誘われた。
何故か物凄い笑顔で額に井形を作りながら誘うミラさんに危機感を覚えた私は『い、いえ、何からなにまでお世話になるのは悪いですので』と遠慮したのだが、側で話を聞いていたギルド長が『お前、行くとこないなら家にくるか? 旨そうだし来い』と言って来たので丁寧にお断りを入れてからミラさんにお世話になることにした。
おじさん、本当にご迷惑をお掛けします。すみません。
コンコンとドアをノックされる音が鳴る。
「リッカさん、もう着替え終わりましたか?」
「あ、はい、大丈夫です」
ドアを開けてミラさんが入ってくる。
「少し大きいかなと思ったんですが、丁度いいみたいですね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、お母さんが下で夕食を用意してるのでいきましょうか」
「はい」
ミラさんのご家族のご厚意で貸して貰った宿屋二階の部屋を出る。
「リッカちゃん凄く可愛い! よく似合ってるわよ!」
「あ、ありがとうございます……」
階段を降りて一階に行くと、ミラさんのお母さん、アリアさんが抱き付いて出迎えてくれた。
私が今着ている服はミラさんからのお古の借り物で、下は短パン、上は薄いシャツに少し長めのカーディガンを羽織っている。
初めは『リッカさんならこれ絶対似合います!』と、今流行りのフリフリの服を着せようとしていたのだが、そこは丁重に断った。短パンについてはスカートしかないと言われたので諦めた。少し小学生時代を思い出す。
ちなみにアリアさんの宿屋は食堂も兼任しているらしく、一階は食堂、二階から四階までは宿屋をやっているそうだ。
抱き付くアリアさんに運ばれる形で食堂に到着すると、
「……よお」
日が暮れて夕飯時にもかかわらずガランとした食堂に、顔を腫らした門番のおじさんが座っていた。
「……本当にごめんなさい」
「本当にな、お前一体どんな説明をうちの女房と娘にしたんだよ」
少し前、ミラさんに引き摺られるように宿屋に向かう途中、何処か怒っているように感じるミラさんに『ミラさん、なにか怒ってますか?』と聞く私に『怒ってませんよ?』と、腕に手がくい込むくらいの返事を返してくれるミラさんのお母さんが経営する宿屋についた。
嫌な予感を感じながら宿屋に入ると『お客さんかい、ミラ?』と、宿屋の奥からミラさんそっくりの美人さんが出迎えてくれて『お客さんじゃないよ、お母さん。この娘はお父さんのアイジ……客人だよ』と、何かおじさんとの関係を激しく誤解しているミラさんの言葉で宿屋は急遽閉店となった。
閉店と言っても、既に泊まっているお客さんもいるので宿屋は営業中なのだが、食堂は閉められた。
時偶に上の階のお客さんが食堂を食べに訪れたのだが、私と向かい合って座る無言のアリアさんとミラさんの姿を見て、すぐさま二階へと避難していった。
そこからは『今帰ったぞ、腹へったから飯をくれ』と言って帰って来たおじさんに、アリアさんが『これでも食ってろ、ロリコン野郎!』と腹パンを喰らわせ、『不潔です!』とミラさんがビンタを頂戴していた。
倒れ行くおじさんは視線の端に私を捕らえると『お、お前か……』と、地面に突っ伏した。
そこから誤解をしている二人にここまでの事を一部始終説明し、お墓で追い剥ぎに合って墓地を裸で彷徨いていたらおじさんに助けられ、ローブと温かい飲み物、紹介状を書いて貰ったと言ったら凄い呆れられはしたが、意外とすんなりと納得して貰えた
「いいのよリッカちゃん。紛らわしいこの人が悪いんだから」
「お、俺が悪いのか!」
「そうですよ、お父さん」
「み、ミラまで……」
悪いのは全て私の筈なのに、アリアさんとミラさんから責められるおじさん。
「い、いえ、紛らわしい言い方をした私が悪いんです。おじさんは悪くないんです。おじさんは寒くて震える私に優しくしてくれて……それに、何処かおじさんは初めて会った気がしないのです」
「だからそれが紛らわしいって言ってるんだよ! お前、わざとやってるだろ! お、おい、待て、違うんだって、こいつ信じられねぇけど素でやってるんだって……」
ガタリと急に席を立つアリアさんに、おじさんが必死に弁明をする姿を見て頭を傾げていると、ミラさんが、
「私、リッカさんの今後が物凄く心配です」
何処か残念な子を見るような目で心配された。はて?
それにしても、響くような渋い声に頼りになる雰囲気……やっぱりおじさんは何処か似ている。
そんなこんなで四人で夕飯を食べる事になった。
「なんかすみません、夕飯まで頂いてしまって……」
「いいのよ、リッカちゃん。遠慮しないで食べてね」
目の前私の席の上には沢山の料理が並んでいる。
もしかしてこれ全部、私一人分なのだろうか。
赤い辛子のようなものを一絡めたステーキ、特大のベーコンを挟んだフランスパン。平皿には特大お肉の角煮とソーセージが刺さった串料理。側には大量の肉春巻きが……。
更にミラさんが大量に注いでくれた肉入りの白いスープを渡してきたので受け取る。
「はい、どうぞ。リッカさんの大盛りです」
「あ、ありがとうございます……」
こんなに食べられるだろうか。
「あの、そんなに沢山は……」
「遠慮すんな」
おじさんが肉春巻きを追加してくる。
「遠慮しないでね、リッカちゃん」
「はい……」
アリアさんがジョッキで甘い香りのする飲み物を私に渡してきた。
これは何かの冗談なのだろうかと三人を見れば、そこには私と同じくらいの量の料理が置かれている。
アリアさんとミラさんの笑顔が辛い。おじさんの何処か知ったふうなニャニャとした笑顔が少し腹が立つ。
気合いで食べよう。
すみません、前半部分が誤って消えてしまい、一から書く気力が湧かなかったのでギュッと短縮してます。
読みにくいかもしれませんが、許してくださいすみません。




