40 リッチィさん、巨大蜘蛛に捕まる
「うぅぅ、死ぬかと思った」
いや、実際には一度死んだんだけど。
全身血まみれの体を購入したお水で洗い流す。
「はぁ……」
オリハルコン性の檻の中には複数体のマンティコアの死体が転がっている。勿論、倒したのは私。激しい檻の中での格闘の末……というのは嘘だが、戦闘の末に何とか倒す事が出来た。
「もう二度とごめんですね……」
正に袋のネズミだった。
自分で自作した檻とはいえ、それが仇になるとは誰が考えるだろうか。
「でも、まぁそのお蔭で倒せたんですけど……」
あれはもう二度とやりたくない。
マンティコアに揉みくちゃにされるなか無意識に実行した自爆技、オリハルコンの檻の内側に無数の棘を生やし私もろとも閉じる。分かりやすく言えばアイアンメイデンである。
もう少しよく考えれば他のマシな方法があるだろと言われるかもしれないが、あんな状況でどうやって考えればいいと言うのだ。
「ですが一匹だけ、逃げられちゃいましたね」
あの混戦の中、一匹のマンティコアに逃げられたのだけが少し悔しい。きっちりと私もろとも串刺しにした筈が、刺さりが甘かったのか地面に潜られて逃げられた。
「まぁ、一匹くらい別にいいんですけど」
とりあえず危機は去ったのだ。
何かフラグっぽいけど、去り際にマンティコアの顔が『絶対殺すかんな!』としてたが、まぁ大丈夫だろう。私は不死だし、望む所なので返り討ちにしてやるわ! どんだけ痛かったと思ってんだ! ミラさんに貰った服が穴だらけだよ!
左手の冒険者の証を操作してステータスを表示させる。
「ステータスオープン」
名 前:リッカ・エンマ
年 齢:16
種 族:リッチィ
レベル:13
スキル:
固有スキル:チラシ(改) 土魔法 クリエイトアンデッド
加 護:▲◆◇★
称 号:わぁれの娘だぁ ダンジョンマスター ダンジョン撃破者
「レベル13ですか……」
最初は1体で一気に8も上がったのだが、今度は複数体を倒したのにレベルが5しか上がってない。やはりレベルが上がるにつれて上がりにくくなっていくのだろうか。
オリハルコンをインゴットに戻し、チラシの中に入金する。本当はいつモンスターと遭遇してもいいように持ち歩いた方がいいのだろうが、こんな大きなオリハルコンのインゴットなんて持てる訳がないのだ。
天空に聳える魔王城を目指して再度歩き続ける。
足が凄いしんどいけれど、早く帰らなければまたモンスターに狙われてしまう。本当にもう勘弁してほしい。
レベル1の冒険者の戦闘がマンティコアとかハード過ぎるわ。いや、モンスターに出くわした順番でいえば、ゾンビの大群→エルダーゾンビ→スペクター→炎竜→マンティコアとかどうみても頭おかしいと思う。私よく生きてたな、不死だけど。
やっと焼け野原ゾーンを越えて森に入る。てか今までが森の中であり、やっと森の中だと感じる事が出来たのだ。
ここまで暴れまくった炎竜に本当に恐れを感じる。どんだけ暴れまくったんだよ。大災害ってレベルじゃない。
「……あ、あれ?」
突然、急に体が動かなくなる。
なにこれ、金縛り?
よくよく目を凝らしてみると、何やら身体中に細い糸のような物が巻き付いているのが見える。
「……嘘ですよね」
もう本当に勘弁して下さい。
上を見るとスーっと8本足の蜘蛛さんが降りて……蜘蛛? でかくない?
「ひぇっ……」
ワシャワシャと近寄る巨大蜘蛛。
リアルで見ると本当に恐く、昔見た蜘蛛の映画を思い出す。……もしかして脳みそが好物だとか言わないよね?
錬金を使うにも全身が動かないので不可能。チラシのスキルをタップしてオリハルコンを出すことが出来ない。
クリエイトアンデッドに至っては、すでに私は木上にスーっと運ばれており、いくら作り出しても無意味。だってゾンビが湧くのは地面からであり、先程から作り続けているゾンビが木に登れないと困っている。
そんな中、ワシャワシャと近寄る巨大蜘蛛さんが私を品定めするべく複数の眼球で覗いている。
「?」
どうしたんだろう。
リアル巨大蜘蛛さんが頭を傾げて私を見てる。てっきり直ぐ私を食べるつもりだと思っていたのだが……もしかして私がアンデッドだと分かり困り果ててる?
「??」
あ、やっぱりそうだ。
不思議に思ってか、私をクルクルと8本の器用な足で回しては観察してる。
そ、そうだぞ、アンデッドなんか食べたら腹を壊すだけだぞ……ってこら、一応非常食にしときますかって感じでグルグル巻きにしないで!
「♪」
あ、駄目だこれ。
完全に非常食扱いだ。
誰か助けてー!!
モガモガと叫び助けを呼ぶ私だが、それも虚しく糸でがんじがらめにされて繭玉になってしまった。
◇◇◇
「ふぅ、助かりました」
固有スキルの土魔法、錬金を発動して地面から顔を出す。
「あ、この蜘蛛さんまだ息が残ってますね。──えいっ!」
オリハルコンを鋭い槍に変化させ、地面から串刺しにする。いい経験値だった。体から急激に力が湧いてくる。
『GyaoOOOOOOOO!!』
「あ、まずい、まだ炎竜が近くにいたのですか──《錬金》」
オリハルコンの檻を作り、再び地面へと潜り込む。今度はもう少し経ってから出て来よう。
◇◇◇
「……ふぅ」
錬金を発動させて地面から這い出す。
見渡す限り一面が焼け野原、前にも見た光景である。
理由は簡単。
巨大蜘蛛に非常食にされそうだったからゾンビを再び炎竜にけしかけたのだ。結果、炎竜再び。
暴れに暴れ回った炎竜は辺り一面をまた焼け野原に変えてしまった。
てかこれ、災厄の森全体が焼失したのではないだろうか。地平線の限り焼け野原である。わ、私は悪くない……
「ステータスオープン」
名 前:リッカ・エンマ
年 齢:16
種 族:リッチィ
レベル:18
スキル:
固有スキル:チラシ(改) 土魔法 クリエイトアンデッド
加 護:▲◆◇★
称 号:わぁれの娘だぁ ダンジョンマスター ダンジョン撃破者 炎竜を煽りし者
「レベルがまた上がってる」
一気に5も上がった。
やはりあの巨大蜘蛛は相当な高ランクのモンスターだったのだろう。マンティコア複数体分の経験値、いやそれ以上だろう。
レベルが上がるにつれてレベルが上がりにくくなるのだからどんだけである。
それに炎竜に襲われてもギリギリではあるが生き残ってるくらいだし……私が止めを刺しちゃったけど。
「……はやくお家帰りたい」
お家ないけど。
いや、無事に帰れたら自分でお家を作ろう。外は危険だ。暫くは引きこもる。なんか称号も増えてるしね。炎竜を煽りし者とか何だこれ。炎竜のヘイトを集め過ぎてて怖いよ。
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