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リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


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1 リッチィさんと閻魔大王

 

『二番線、ドォアが閉まりますぅ』


 車掌さん独特のダミ声と共にベルが鳴り出し、電車のドアが閉じていく。


「ちょっ、ちょっ待って! 乗ります、乗りますからっ!!」


 改札を慌てて通り抜けた俺は、階段を三段飛ばしで何とかドアが閉じる隙間に体をねじ込んだ。


『駆け込み乗車はぁ、危ないのでぇお止めくださいぃ』


「はぁはぁ、間に合った……」


 季節は夏。

 項垂れるような外気の中を走ってきた俺は、スーツの前のボタンを外し、電車内の冷房が効いた空気を取り入れる。


「あっぶねぇ、これ逃したら朝の会議に間に合わない所だった……あ、携帯ちゃんと入ってるよな」


 今日は朝から緊急の会議が入っている。

 昨夜、夜遅くに上司の西さんから緊急連絡が入った。『夜遅くにごめんな、りっか。明日遅番のシフトのところ悪いが、朝一で出てきてくれ』内容は夜も遅いとあって聞いてはいないが、詳しくはメールで朝送るから確認しろと言われていた。

 もし携帯を家に忘れてメールを確認できませんでしたとなったら一大事………と言う訳でもないが、上司から小言の一つは貰ってしまうだろう。

 ちなみに、りっかとは俺のあだ名。本名は六花祐雪(ゆき ひろゆき)。六花と書いてユキと読むのだが、初対面の人は必ずりっかと読んでしまうのでこうなった。


「あった、あった、これだ。えーと、なになに……」


 ビジネスバックから携帯を取り出し開いた添付メールには、『製造過程で起きた携帯機種の問題、過程、動作不良、改善策』等が書かれている。


「アップデート後に電源ボタンが入らず、電波が立たない事が確認されている………更に初期に画面のノイズが……」


 俺が勤めている会社は某有名携帯会社ショップの代理店。いわゆる商社系代理店。

 掲げているお店の看板はこそはデカイが、実際は某有名会社から契約させてもらって運営している名も知らない中小企業でしたと言うおちである。


「希にMicroSDを入れたら再起動からの強制初期化………なんだこれは……」


 つんでいる。

 と言うか20日前に発売したばかりなのに終わっている。


「くそっ、なにが不具合だよ。明らかにこれ、欠陥品だろうが……」


 全部回収しろよと願うも、メールの添付ファイルには『修理対応のみ』と書かれている。


「こんなの消費者からしたら悪夢だろうが………何で買ったばかりの携帯が不良品で、しかも取り替えじゃなく後日修理してお返しとか………お客さん納得しないぞ、これ」


 俺でもこんな携帯つかまされて、後日修理して返すから納得してくださいとか言われたら切れる自信がある。


「今日の緊急会議はこれか。朝からクレーム対応の嵐だな」


 頭の中でどうしたらお客さんへ納得して貰えるような弁明があるかを考える。


「……ねぇよ」


 そんなものは思いつかない。

 こんなのどうみても不良品でしかない。自分でもそう強く思うのだから仕方ない。


「……あぁ、働きたくない。お金があれば働かなくてすむのになぁ……」


 これから向かう職場、携帯ショップに鬼気として並んで待つお客さんの事を思うと、胃がキリキリと締め付けられる。


『地獄のドォアが開きますぅ』


 車掌さん独特のダミ声と共にドアが開く。


「………は?」


 ドアが開いたと思うと、急に広がった真っ黒闇の空間。


『よぉこそ、人間よぉ』


 突如として何処からか声が響き渡る。この声は何処かで聞いた覚えが………車掌さん? いやいや、それよりも馴染みあるこの声は。


「ふぅむ。惚けている所悪いのだぁがぁ、お前さんには今、勇者召喚の呼び出しが掛かっているのだぁ」

「呼び出し、ですか?」


 背後から声がハッキリと聞こえた。

 呼び出しとは何だろか。

 突然の事で全く分からない。

 確か、俺はさっきまで会社に向かう途中で電車に乗っていた筈なのだが………と言うかこの声、謎の皇帝とも注射器とも穴子とも言えるこの声。

 まさかまさか、この声の持ち主はと後ろを振り返るとそこには―――赤いスーツを着た髭のおじさんが佇んでいた。


「……誰、ですか?」

「わぁれが誰だとぉ? よかろぉ、教えてやるぅ。わぁれこそは、影なる地獄ぅの支配者ぁ! 閻魔大王なるぞぉ!!」

「え、閻魔大王!?」

「そうだぁ!!」

「嘘だぁ!?」

「嘘ではなぁい!!」

「なんでスーツなんですか?」

「気にするなぁ……」

「いやいや、気になりますよ!?」


 特に何でそこでテンションが下がるのか、凄く気になる。


「ちなみにイタリィの高級スーツだぁ」


 ぶるじょわああああああ!!


「……あれ? ていうか何だろう、俺の声が高くなってるような……」


 透き通るような声が自分の声から漏れる。

 異変を感じた俺は喉を確認しょうと首を掴む。すると肘の辺りに妙な抵抗ある柔らかい感触が……


「え、あれ、何で!? 何で俺に胸がついてるの!?」


 山が出来ていた。

 大山とはいかないが、小山との中間辺りの山が胸にそびえている。


「……まさか」


 そんな筈はと下を確認。


「え………ない、なくなってるぅぅ!!!!」


 30歳独身。

 数日前に魔法使いと言う不名誉な称号を与えられ、一時期自暴自棄になってこんな相棒不要だと神に喚いていた俺だが。


「まぁて、落ち付いて話を……」

「ある、ない。ある、ない。ある、ない」


 返して下さい!

 俺の相棒を!


「あー!! あ!! あ!!」

「だぁから、少し落ち着けとぉ……」

「あー!! あー!! あー!! あ!! あ!!」

「落ち着けと言うとろうがぁあああああ!! ぶぁかぁものぉおおおおお!!」

「―――あんぎゃっ!?」


 物凄い衝撃の拳骨が頭に落ちる。

 なにこれ超痛いんですけど……


「まぁずは、落ち着いてぇわぁれの話を聞かんかぁ」


 いつの間にかサラサラな長髪へと変貌していた自分の頭を押さえながら、涙目で閻魔大王を睨む。て言うかなにこれ、超痛いんですけど……。


「お前は今、異世界かぁらぁのぉ、呼び出しが掛かっているぅ」

「うぅ、ぐすっ………異世界、ですか?」

「そぉだ、勇者召喚の詳細は詳しくは知らないが、恐らく魔王討伐絡みで間違いないだろぉ」


 凄く透き通る自分の涙声に驚きながらも、閻魔大王の口から聞こえた事実に更に驚く。

 テンプレか!!


「あの、一つ聞きたいんですけど……」

「なぁんだぁ」

「俺はまだ生きてるんですか?」


 魔王討伐、異世界召喚のテンプレならば、大体は日常生活を送っている時に召喚されるのが定番だろう。

 だが、


「ここって『地獄』って言いましたよね?」


 この真っ暗闇の空間に来る前、確かアナウンスで『地獄のドォアが開きますぅ』と聞こえてきた覚えがある。


「もしかして……俺は、死んだんでしょうか?」


 閻魔大王は腕を組みながら答える。


「それは間違いだぁ。お前はちゃんと生きているぞぉ」


 閻魔大王は続けて、


「わぁれは、お前が不当な召喚の呼び出しをされる前に少ぉしだけ時間に干渉するために一時期的にここへ、『地獄』に連れて来たのだぁ」

「そうなんですか?」

「そぉうだぁ。お前をあのまま召喚させるには、少ぉし不憫だと思ってなぁ」


 憐れな子羊を見る目で此方を見詰める閻魔大王。


「不憫………あの、閻魔大王の力で何とか出来たりとかは……」


 異世界勇者召喚は憧れるが、いきなりリアルで魔王を討伐しろと言われても生き残れる気がしない。


「そぉれぇは無理だぁ。わぁれは地獄の閻魔大王であるからしてぇ、かぁみではなぁいのだぁ。死後の事ならまぁだしも、生きてるとなればわぁれにはどうする事もできん。干渉するにも、少ぉし時間を稼ぐのが背一杯だぁ」


 何となく分かってはいたけど、やはりそれは無理なようだ。にしても、閻魔大王がいると言う事は、神様もちゃんと実在しているのか。


「そこでわぁれが、不憫なお前にチィートとなるモノを授けるためにここへ招いたのだぁ」

「あなたは神様ですか?」


 何この人、凄く好い人だ。


「わぁれがかぁみだとぉ? よかろうぉ、教えてやろうぅ! わぁれこそは、影なる地獄ぅの支配者ぁ! 閻魔大王なるぞぉ!!」


 はい、ありがとうございます。


「でぇは、チィートなる願いを言うがいいぃ。何でも一つだけならば叶えてやろう」

「………何でも一つ」


 何でも一つとは言うが、恐らく帰りたいと言う以外の願い限定だろう。


「あの、その前に一つ質問しても宜しいでしょうか?」

「なぁんだぁ。時間は手短に頼むぞぉ」

「はい、先程から物凄く気になってたのですが、俺は何でそもそも異世界に召喚されるのに女になっているのですか?」


 死んだんなら未だしも、何故に召喚で性別が変わるのだろうか。


「…………」

「あの……?」


 何故か俺の質問に押し黙る閻魔大王。暫くすると、何か言いにくそうに喋り出す。


「ふ、ふぅむ。わぁれも詳しくは知らないが、この召喚魔法の術式からして、呼び出す者を女性限定に定めているようだぁ」

「………え?」


 なにそれ。


「女性、限定ですか……?」

「そ、そぉだぁ」


 此方と目を合わせない閻魔大王。


「ちなみに、俺を呼び出そうとしている人ってどんな人ですか?」

「とある王国の王侯貴族だぁ」


 定番だ。

 勇者召喚となれば、魔王討伐が果たせるかで国の未来を左右しかねないし、お偉いさん方が関わっているのは当たり前だ。だが、それなら何故に性別を固定するのか。しかも女性に。


 ふと頭にとある悪い方のテンプレが過る。


「あの、もしかして、その召喚の魔法って、他に何か変な仕掛けとかされてないですよね? 例えば、強制的に召喚される者の自由を縛るとか……」

「わぁれが、調べた限りではそのような細工はされていないようだぁ」

「そ、そうですか。少しあ―――」

「―――ただし」


 少し安心したとホッとするのも束の間、閻魔大王は渋い顔で遮る。 


「どうやら相手は首輪を持って待ち構えているようだぁ」

「今すぐ帰らせて下さい! 何でも一つ叶えてくれるなら今すぐ俺を日本に送り返して!」


 こんなん十八禁展開のテンプレじゃないですか!

 死んでも行きたくないです。

 しかも男が女になってあんな事やこんな事とか、誰得ですか!



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― 新着の感想 ―
[一言] すいません、小鳥遊と書いて鷹いないから小鳥が遊ぶで『たかなし』と読んだり、月見里と書いて、山がないから月がよく見えるで『やまなし』と読んだり、六花で『ゆき』はどういう意味で六花ですか?もしか…
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