植物族魔族 ニコチン
「最後に、とっておきの策があります。」
「ほう、これまでも、検証が必要だが、凄まじい策を考案したのに、とっておきの策、とな。
楽しみだ。」
「確認しないといけない事がありますので、そちらが可能でしたら、必ずや、御期待に答えてみせます。」
「植物族魔族女王様。」
「二代目菌王候補、チューズローハ殿。」
「お伺いします。
とある毒を、それを精製する植物の中で濃縮したり、別の関係無い植物に移したり出来ないでしょうか。」
「それぐらい、女王であり、植物の母と称される私にとって、造作も無い事です。」
「お答えいただき、ありがとうございます。」
「魔皇様、前世において、人間キラーと呼べるほどの可能性が有りながら、嗜好品としての立場を築き上げた毒が有りました。」
「それは、濃縮させると、人族を絶滅させるような毒、ということか?」
「それもありますが、他にも、人族を操ることも出来ると思います。」
「………ふむ、確かに、最後に持ってくるべき、素晴らしい内容だ。」
「それで、毒の効能は?」
「はっ。」
「1つ目として、骨や筋肉を構成するのに必要な栄養素を破壊します。」
「2つ目として、心臓と肺機能を損傷させます。」
「3つ目として、えっと………、健康体に治癒魔法を掛け続けると、逆に、身体を傷つける事がありませんか?」
「ある。」
「その現象を、病として発病します。」
「4つ目の前に、説明させて頂きたい事があります。」
「人族は、特定の条件下において、体内に放出される物質があり、前世では【ホルモン】と言いました。」
「例えば、死にかける時に痛みを緩和したり、とてつもない力を発揮したり、とかですね。」
「そのホルモンの中に、特殊な条件下でのみ放出されるものが有りまして、それが毒と相性が良かったのです。」
「ただし、濃度が低かったようで、殆ど効果が無かったようで、知っている人は少なかったようです。」
「それで、相性が良いとどうなるんだ?」
「女性は、依存と男狂いになり、思考能力も低下すると思います。
男性の方は、そのホルモンが分泌するか判らないので、何とも言えません。」
「さっき毒を移せるか訊いたのは、ここに繋がるのか?」
「はい。
誘発剤に成り得る、媚薬、麻薬、覚醒剤などの精製に使われる植物に、濃縮した毒を移させようかと思います。」
「そうなると、最低でも、後方にいる、口先ばかりの鼻持ちならないバカ貴族にダメージを与えられるな。
あいつら、こちらが必死になって戦っているのに、媚薬や麻薬で遊び呆けているからな。」
「まったくです。
そいつらの我儘で指揮の低下した、人族の大軍と戦うこちらの身にもなってほしいものです。」
「それと、勇者にも有効だな。」
「嗜好品として使われていたのなら、抵抗はありませんし、バカ貴族のように遊び呆ける勇者も多いですから、十分に有効だと思われます。」
「素晴らしいな。
それで、その毒とは、なんて名前だ?」
「前世にて、【ニコチン】と呼ばれていました。」
「どのような植物に含まれているかも知っていますので、こちらの植物にも入っているか調べて、人体実験します。」
「これで、今回御持ちしました策は、全てになります。」
「ふむ、ご苦労だった。 2代目菌王、チューズローハよ。」
「!! ありがとうございます。 魔皇様。」
「まだ検証が必要だが、お主の有用性は、ここにいる誰もが認めている。」
「これからは、魔皇軍の一員てして、不定形四天王の一人として、精進するように。」
「ははぁ、これからも精進いたします。」
「これにて、謁見を終了する。
皆、ご苦労だった。」