目覚め
意識が覚醒して直ぐに感じたのは、足裏のみが何かに触れた感覚があったこと。
赤子に転生したのなら、寝転んでいるはずだから、体の片面に感覚があるはず。
魂が入るのが、産まれる前の母体の中にいるころだとしても、足裏だけなのはおかしい。
それが憑依転生、入れ替わり転生だとしてもおかしい。
目を開けると、日光のよく入る部屋、だけど、湿気がひどい。
熱帯植物のある植物園かな?
次に気になったのは、影。
どうやら、俺は帽子を被っているようだ。
だけど、その帽子の影の大きさがおかしい。
デカ過ぎる。 笠のようだ。
手を伸ばして縁を触るが、触感もおかしい。 弾力がある。
次に確認したのは、体。
体表は緑色で、あちこちに蔦が生えてる。
どうやら、人型だが、人間以外に転生したようだ。
そうやって体を調べていると、部屋に誰かが入ってきた。
見た目は老執事、それも、かなり仕事ができるような。
ただし、顔色が青白い。
挨拶をしたらいいのか、戸惑っている演技をしたらいいのか悩んでいると、老執事が跪き、
「御生誕のほど、心よりお慶び申し上げます。 我らが王よ。」
「………はい?」
やべ、思わず返事してしまった。
「ああ、貴方様が転生者だということは、私を含め、多くの者が御存知ですので、普通に会話していただいても大丈夫ですよ。」
「はあ。」
「それと、王はご自身の現状を理解してないと思いますので、私から説明させて頂きましても、よろしいでしょうか。」
「お願いします。」
「承りました。
まず、王が転生しましたのは人族ではなく、魔皇軍、不定形四天王が1つ、菌に関する種族の王、2代目菌王となります。」
「はぁ、………つまり、俺の体は菌でできている?」
「違います。」
「?」
「貴方様は、魔皇軍陸の四天王が1つ、植物族の女王様から株分けしていただいた個体に、先代故菌魔王様が寄生して生まれました。
つまり、菌と植物の2つの魔族からできております。」
「………なぜ、そのようなことを?」
「先代、故菌魔王のお力が、強すぎたからにございます。」
「魔皇軍四天王に就任できる条件は、部下の種族の持つスキルを使えることになります。」
「菌族には現状3つの種族があるのですが、それぞれが特化型でして、それらと力の強すぎる故菌王様が子供をつくりましても、更に特化型が生まれるだけで、全てのスキルが使えるお子は生まれませんでした。」
「又、他生物に寄生して子供をつくろうにも、そのお力に耐えることができず、生まれる前に死んでしまいました。」
「そこで、故菌王様と同じ時を生き、強大な力を持つ植物族の女王様に株分けして頂きました個体なら、その力に耐えれるとお考えになり、試して、お生まれになられましたのが、貴方様です。」
「なるほど。
それで、俺はこれから、王に必要な戦闘力と教養を学べばいいのか?」
「それだけでは足りません。」
「現状、魔皇軍は何百年も、異世界より召喚された勇者に苦しめられています。」
「なので、勇者に対抗できる策を考えて頂き、それを魔皇様と、陸/海/空/不定形の、合計15名の四天王様方に認めていただかない限り、貴方は処刑されます。」
「………はぁ!!」
「それも、見せしめに、全魔族の見える中で、最も残忍な方法で。」
「イヤイヤイヤ、何で、」
「それだけ我々は苦しめられてきたのです。」
「正直に申しまして、貴方様が生まれたときにも、もめました。
ですが、故菌王様が各方面を説得しまして、それをなんとか鎮めましたが、今もなお、貴方様の処刑を望む声が出ているのです。」
「ゆえに、役に立つところを見せないと、本当に処刑されます。」
「……。」
「そして、その時は我々菌族も統率者である王を失い、バラバラになるでしょう。」
生まれたばかりで他の種族がわからないから、よくわからないけど、自分が死ぬのは避けたい。
「ちなみに、猶予はどのくらいに。」
「2〜3年ですね。 ご自身の意志で早めることもできます。」
「わかりました。 なんとかやってみます。」
「それと、先代はなぜ、お亡くなりになられたのですか?」
「寿命でございます。」
「………心より、ご冥福を申し上げます。」
魔物の定義があやふやで、冥府で生活しているのかそうでないのか、設定できないので、ここできらせていただきます。