世界設定 前語り
何故、魔皇軍四天王が幼いか、前任者はどうしたか。
答えは、前任者が死んだ。
それも、後任者が産まれてすぐに。
前任者、故菌王には悩みがあった。
寿命が近づいているのに、後任者が生まれていなかった。
魔皇軍が四天王を認める条件の中のには、どうしても守らないといけないものがあった。
この世界の魔皇軍四天王とは、一人一人が魔族の中の一種族の王を勤めている。(植物族 菌族 スライム族など)
それゆえに、四天王自体にも、陸/海/空/不定の4つが存在している。
そんな魔皇軍で後任者を選ぶ最重要条件とは、
【自身が統べる種族が持つ代表的な力(=スキル)を持つこと】
例外はあるけど。
菌王になるのに必要なスキルは、
①吸血族の、【魔力操作に長けた力】
(純血=生物を乗っ取り、融合 雑種=死体を乗っ取る)
②人狼族の、【生体電気の操作(=気力操作)に長けた力】
(純血=生物を乗っ取り、融合 雑種=死体を乗っ取る)
③茸人族の、【菌の特性(寄生/胞子/etc)に特化した力】
の3つ。
本来なら、各種族のまとめ役の親族と子供をつくれば問題が無いはずだったが、故菌王はできなかった。
理由としては、
①部下の種族が特化型の種族だったこと。
②故菌王が長く生きて、自身の力を強化し続けてきたこと。
この2つのせいで、生まれてくる子供は、母親の種族の力がさらに特化した子供だった。
何人つくっても。 何年立っても。
やけになって、島に住む、菌と相性の良い種族(鼠人族と植物種族など)ともつくったが、意味がなかった。
子供が菌王の力に耐えられなくて、死んでしまった。
だが、このことが一縷の望みに繋がった。
同じ四天王の一人、植物族の女王に株分けをしてもらった。
その結果、望みの子供が生まれた。 菌王と植物王両方のスキルを持った子供が。
魔皇軍所属の鑑定司に、所持スキルを見てもらって確認した。 何度も何度もしつこく。
ただ、その時とんでもないことがわかった。
生まれてきた子供には、転生者のスキルもあった。
即刻、箝口令を言い渡した。
時間稼ぎにしかならないのは承知で。
転生者、転移者は勇者の証拠。 魔皇軍を何度も何十何百年も苦しめた、憎き勇者の証。
即刻殺すべきだ。
だが、ようやく生まれた子供を殺すのはしのびない。
今殺したら、次は何年かかるか分からない。
寿命が尽きている可能性のほうが高い。
それに、この子の未来を考えると、このままの方が良いかもしれない。
この子は、菌王と植物王の両方のスキルを受け継いでいる。
まっさらな子供が、力に呑まれずに生きていけるか。
側近や多くの部下は甘やかすだろう。 やっと生まれた子供だから。
兄や姉は不満が募るだろう。
だが、これは魔皇様がお決めになった事。
逆らうような事をしたら、罰が下る。
まあ、そんなバカは必要ないけど。
…累が及ばないように、一筆認めておこう。
それより問題は、そのバカどもとぶつかり、力で解決した場合、我儘を通す=暴力を振るうとなり、暴君になる可能性だ。
だが、転生者なら、ある程度の倫理観を持って生まれたなら、それを回避できるのではないか。
それに、生まれて数十年ほどなら、特化した兄、姉の方が断然強い。 何十人もいるから、力を合わせる可能性もある。
…やはり、このままの方がメリットが多い。
それなら、私がしないといけないことは…。
秘密裏に、魔皇様にこの事をお伝えする事だろう。 他の四天王から横槍が入らないようにするためにも。
………よし、後は、
「影の方、出てきてくれませんか?」 スッ
「応じていただき、ありがとうございます。
こちら、二代目菌王に関しての報告書です。
魔皇様に、御報告申し上げます。」 スッ
よし、これで多分、大丈夫だろう。
「ふぁ。」
…安心したからか、あくびまで出てきたな。
少し寝るとしようか。
この後、故菌王が起きることは無かった。
魔皇軍最古参の一人の葬式は、盛大に行われた。