平井佳子、無免許運転する
拝啓、佐々木友弥様。
元気にしてますか?
私は元気です。
私は今、なんと異世界に居ます。この間魔法も見たよ!
慣れない異世界の田舎生活だけどなんとか頑張ってます。
毎日、畑仕事したり鶏の世話をしたり山に芋掘りに行ったりしてます。
そうそう、こちらにもラーメン屋が有ります。こっちの世界でたった一軒のラーメン屋が近所にあるとは幸せです。
じゃーん!
最近車を買って貰いました。免許なんて無いけどね。道交法ないからへーきへーき。
ユキオっていう偉い人から私とラーメン屋のリエさんに一台ずつ買って貰いました。
まさかの新車!
クロカンみたいな軽自動車です。色は白!
最初、コユキさんの使ってない車を貸して貰う予定だったのだけれども、コユキさんはすっごく車をピカピカにして大事にしているので、とても畏れ多くて乗れません!
同じ愛車でもバイクはボロッボロなのにね。
そしたらユキオさんが新車買ってくれました。でも、コユキさんがピカピカにする気持ちわかる!私も毎日綺麗にしてお掃除してます。リエさんの車と二台でお肉の買い出しに行くときは荷台にトレイ積んだりシート何重もしました!汁がでるんだもん!
そうそう、コユキさんは凄いです。オフロードバイクで宙返りするんです!
でも、良く失敗するんだけれど、その時がまた凄いの。ダメだと思った瞬間に空中でバイクを蹴り飛ばして自分だけ地面にスタって着地するの!バイクはガッシャンゴロゴロと酷いことになってるけど。
ここに友弥が居ないのは寂しいけれど居なくて良かったよ。だって絶対友弥はコユキさんに惚れるもん。あんな強くて綺麗な人居ない!
そしてまさかの子持ち!
ほぼ同世代だと思ったのに!
でも、今は独り身だそうで子供と旦那のこととかは怖くて聞けません。ユキオさんと夫婦だと思ったけれど違った。
子持ちと言えば、ラララさんも子持ち。しかももうすぐ子供に身長追い付かれそうなくらいよ?
ラララさん、私より年下なのに!
まあ、その子供というのはちょっと特殊なんだけれどね。そしてラーメン屋の女の人もバツイチだった。
そしてここには居ないけれどサクラ姫という仲間の人が快感だけで人を100パーセント虜にする無敵の床上手なんだそうです。しかも男女両方!
なんか『経験』が有るだけで自信持ってた私がしょぼく見えるわ。
異世界恐るべし。
それから最近、村にバスケットゴールを設置して貰いました。
空き地は狭いのでフルコートは無理だけれど、ワンゴールで1on1とか3on3ならやれます。
たまに村の人や子供達とボールで遊んでいます。コユキさんはゴールの上より高く跳ぶので参加禁止です。
取りあえず今はまだ帰れないので、元気に待っていてくださいね。泣いちゃダメだよ。
浮気は禁止です!
私もしないから。
佳子
◆◆◆◆◆
「平井君。送るメッセージは20文字までにしてくれない?それと秘密書きすぎだよ」
「ええ・・・」
ーーーーーーーー
「初めまして友弥君、私は麻生友子。離婚する前は村田友子」
この女性は麻生さんと言うらしい。年齢は俺の母親世代に見える。
夜にも関わらず高校生を公園に引き留める社会人はいかがなものだろうか。
しかし、俺は断れない、いや、断ってはいけない予感がした。
そして麻生さんは不思議な事を言い出した。
「友弥君は宇宙人は居ると思う?」
「いやそのちょっと・・」
「じゃあ、条件を変えましょう。佳子ちゃんが居ると言ったら信じる?」
「え?」
この人は佳子の名前を出してきた。俺と佳子との仲を知ってる?
佳子も失踪者なのは調べれば解ること。彼女と俺の関係はそんなには知られてないと思うけれど。
「友弥君は佳子ちゃんが超常現象に逢ったと言ったら信じる?」
超常現象?
簡単には信じられない。
でもあの事件は普通では考えられないこと。
答えはこうだ。
「佳子が取り戻せるならどんなことでも信じます。でもそれは帰ってくるならです」
「ま、そうよね。取り戻せるならなんだって良いわよね。じゃあ質問を進めるわ。佳子ちゃんが帰ってきたとして、彼女が悪いことや突拍子もないことをやり始めたら、貴方はどうする?勿論佳子ちゃんは貴方に一緒にいて欲しいと願ってる」
「願ってるって!」
「答えて頂戴」
今この人は佳子が願ってるって言ったのだ。
つまり佳子の現在を知っている!それも生きてるっぽい。
でもこの話の流れ、佳子は犯罪組織の一員にでもなったのか?
なんと答えるのが正解?
いや、そうじゃない。
そうじゃないんだ。
「佳子と一緒になれるなら俺は・・・・」
俺は最後まで喋りきれなかった。
「じゃあ、私から言わせて貰うわ。あの子は生きてる。そして帰ってくる。来たならあの子につきなさい。あの子の絶対無二の味方になりなさい。どんな険しい道でも絶対に手を離さないで」
麻生さんは強く言いきった。生きてると言った!
「それがあの子の願いよ。私の息子も貴方達を応援してる。私もね」
そういって麻生さんは俺に紙を差し出す。
手紙?
メモ?
そこには手書きで、
『友弥、絶対に帰るからね!待っててね!佳子』
「この文字起こししたのは私だから私の筆跡なんだけれどね。これから私の言うことを全部信じなさい。到底信じられない話をするけれど、貴方は聞かなければならない。でなければ佳子ちゃんはひとりぼっちになってしまう。貴方はあの子の安否だけを気にしているけれど、むしろ本当に辛いのはあの子が戻ってきてからよ。あの子は立派よ。運命を受け入れ、物凄い覚悟をしたんだから」
どういうことだ?
帰ってきてからの方が大変?この人の手書きの手紙で信じていいのか?
そして話は核心に。
「友弥君、この世には神様が実在したわ」
20文字と言ったのは神子の勝手です。
実は文字数制限はないのに勝手に制限してます。
それは未来、平井君が物不足の中でも生きるための訓練でもあります。なのに車買ってあげるユキオ・・・・