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ワンタンかな?

 コユキのアホなバイクチャレンジの練習場に横たわってるひん曲がったバイクを左手に格納した。

 ガガガの工房に運ぶ為だ。

 ガガガの工房には壊れた部品取りバイクが一杯ある。


「ユキオ、店に来てくれ。ラララが待ってる」


「ラララが?」


「新メニューの報告があるそうだ」


「どんな?」


「それは行ってから自分で確かめてくれ。あ、俺も行くから」



 そしてラーメン屋にやって来た。


「ユキオ様」

 ラーメン屋で黒Tシャツのラララが待っていた。

 丁度コユキの門下生のお昼時間。ラーメン屋の中はがっつき系の食事風景。今日は本来の営業日ではないので満席ではないが、凄い量を消費しそう。


「ラララ。新メニューだって?」

「いらっしゃいませユキオ様、座ってお待ち下さい。今茹でますから」


 茹でますからと言うからには、麺類?

 俺とガガガは席につく。

 ガガガは何か知っている様だが語らない。

 厨房に引っ込んだラララが何やら細かく指示を出している。その相手は村長とボロエリ。


 ラララの姿。

 人に向かって自分から指示を出すとか要求をするとか、随分成長したなあ。

 しかも言葉が女らしくも気高い。



 漸く待っていると、ラララが料理を持って現れる。

 それは土鍋。

 ラーメンとは違う?

 煮込みラーメン?


 ラララはテーブルに重くて熱そうな土鍋を置く。そして小鉢と箸も。


 俺とガガガの間に置かれた土鍋の蓋をふきん越しでつかんで開けるラララ。

 ふわっと広がる湯気と共に中華スープの香り。

 鍋の中には半透明の中華スープに浮かぶ何か。


 水餃子?

 いや、ワンタンだ!


「ワンタンだ!」

「ワンタンと言うのですね。私達は小餃子と呼んでますの。中には兎肉、鳥、魚、野菜の組み合わせで五種類用意させていただきました。どうぞ、小鉢にとってお召し上がりください」


「よし、これだ!」

 その直後、ガガガが半立ちになり、鍋用のお玉で狙いのワンタンを掬う!


「え?」

「肉ゲット!」

 子供かよ。


「じゃ俺も」

 鍋から三つワンタンを掬う。日本のワンタンと変わりがないようだ。


 見るからに熱そうなワンタンを箸で掴んで頬張る、熱い!でもうまい!

 これは中身は魚。

 もうひとつ食べると肉!

 やっぱ肉うまい!

 しかし、肉ばかり食べると罪悪感が出て野菜入りも食べる。


「美味しいよラララ」

「有り難うございます。まだお腹に入りますよね?」

「ああ」

「俺もだ」

 ガガガまで。

 まあ、ガガガはいつも俺の倍は食べるしね。

 次のメニューがあると聞いて箸を止めた。これ以上ワンタンを食べると次の料理が入らなくなる。ガガガは構わずどんどん食べる。凄いなあ。


「ラララ、あれか?」

「はい」

 ガガガは知ってるのか。なんだろう。


 一度奥に引っ込んだラララが次の料理を持ってくる。

 鍋でもなく、どんぶりでもなく、皿にのる白い物体。


 それを俺とガガガの前に置く。



 うどん。




 真っ白い・・と言うには少し色づき粒が入ってるが、白いうどん。


「これはまさか」


「ユキオ様の好きなうどんですわ。ユキオ様は冷やしがお好きでしょうからこちらを」

 そういって、俺の目の前につけ汁が置かれる。


 完璧だ!

 これは食器こそザルではないがざるうどんだ!


「凄い!」


「まずはお召し上がりになってください」


 俺はうどんをつけ汁につけてから口に入れる。

 うどんだ。

 完全にうどんだ!

 つるりとして千切れず、置いておいても表面がボソボソと溶けない。ちゃんとしてる!

 俺はラーメンの玉と乾麺は左手から出して渡していたが、うどんは渡していない。うどんの人気が無かったからだ。


 しかし、ここにある。


「ひょっとしてこれを作ったのは?」


「お気づきになりましたね。女中頭の自信作ですわ。ユキオ様が村に来ると聞いて、昨日作ったのを頂いて参りました。それと、小餃子の包みを作ったのも女中頭ですわ」


「皮も!」


 そうだ!餃子は出しているが、一度も餃子の皮は出してない!


「凄い・・」


「小餃子も女中頭の発案です。ラーメンは美味しいですが、女中仲間の間ではいまいちでした。味は良いのです。ですが、箸使いが上手くないと食べにくく、食事マナーを重視する女達には辛いのです。そこでスプーンでもフォークでも簡単に美しく食べられる小餃子を思い付いたそうです。今、エチゴヤの女中の間で大流行してますの。みんなで具を工夫しあって大盛り上がりですわ」


「そうか。凄いなあ」


「これもウエアルから穀物が入ってくるようになったから出来るのだと女中頭は言ってましたわ。これは一晩寝かせたうどんです。女中頭はユキオ様はこのくらいが好みでしょうと言ってましたわ。如何でしょう?女中頭は一日寝かせたのが好きだと言っております」


 そこまで?

 確かにうどんは打った麺をどのくらい休ませるかで変わる。これは良い悪いではなく好み。それも女中頭は自力で突き止めたのか!


「凄いよあの人は」

「感想をユキオ様から直接聞きたいとおっしゃってましたわ」

「ああ、明日にでも行ってくるよ。有り難う」


 凄いよ女中頭。

 凄いよみんな。



 一方、ガガガはワンタンスープの残りに辛味突っ込んで自分の分のうどん突っ込んで、ひとりワシワシ食べてた。すげえ量だわ。



 そしてラララが変な事を言った。

「それにしても、これはワンタンと言うのですね。この店では餃子に似てるから小餃子と呼びましたが、エチゴヤでは『茹で八ツ橋』と呼んでます」




「女中頭・・・・それは違うよ・・・・」

餃子に比べて何が『小』なのかというと、『具』の量です。


うどん、作者は柔らか目が好き。

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