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ウエアル会議 ヤシチの失恋

 ウエアル城の会議室。

 位置としてはサクラ姫の執務室の真下。



 ウエアルの各役職の代表とサクラ姫の使徒代表とその他の要職代表の中から12人が集まった。俺も参加はしないけど座ってる。



 議題は人事。

 使徒の増加によって人材不足は解消した。

 無給で働く者が百人手に入ればそりゃまあ。しかもまだちびちびと増え続けてる。

 サクラ姫の護衛も使徒で整った。彼等は()()()()()だし、サクラ姫の命令には絶対服従だし、こんなに理想的な護衛は居ない。これで俺もサクラ姫につきっきりにならなくてもよくなりそう。


 事務方手伝いの使徒も増えたし、学習中、職業訓練中の使徒も控えている。未来は安泰である。


 各役場からの人材要求と調整のあと、サクラ姫は懸念を語りだした。


 それは使徒との職場恋愛。


 議題の発表と共に目を伏せるヤシチさん。


 使徒は恋に落ちる事は無いが、一般人が使徒に恋する事はありえる。口では言わないがヤシチさんの事も入っている。

 サクラ姫にもどうするのが正解かは判らない。



「まず、使徒はどんなに愛しても好きにはなってくれないと知って下さい」


 これを知らない人も居た。

 使徒はロボットではない。普通に笑うし苦しむし雑談もする。パッと見はおとなしい普通の人。普通の人との違いは恋をしないこと。


「くれぐれも女性使徒を押し倒すようなことはしないように。無抵抗だからといって合意では有りません。勘違いをしないように」


 サクラ姫は目の前の職員に釘を刺した。それはヤシチさんにも同じ事。

 今日はヤシチさんの恋の終わりの日。ヤシチさんの恋は何も成さず終わった。



 ーーーーーーーー



 会議後、サクラ姫の執務室にサクラ姫と俺の二人。

 ヤシチさんとキリさんは仕事で居ない。



「憎まれ役辛いですね」

「仕方ないわ」


 ヤシチさんの恋を強制終了させたサクラ姫。他にも潰した恋があるかもしれない。


「でも、これで終わりじゃないわ。きっと決まりを破る者が出るわ」

「つまり?」

「妊娠する使徒が出るわね」

「そうかも・・」


「昨日、キリに聞いてみたの。レイプされたらどうする?って」

「なんて?」


「報告する決まりなので報告して、それだけですって。強姦されることに悔しさも悲しみも持たないのね」

「なんていっていいのか・・」


「だから強姦されても私は平気なので悲しまないで下さいだって」


「そうすると話がおかしくなってきますね」


「そう。別に誰に犯されても平気だと。でもね、キリはその後恐ろしい事を言ったのよ」


「なんて?」


「もし子供が産まれたら、誰の子供だろうが愛せないって」


「それは!」


「そう、使徒は我が子にすら愛情を持たないのね。恐ろしい存在を作ってしまったわ。命令すれば育てるでしょう。でも愛はない。子供が好きな私の為に慈しんでと言えば丁寧に育てるでしょうね。でも、根本的に子供が可愛くて可愛がるのではなくて私の為」


「なんてこと・・」


「全くだわ。でも今更よね、自殺されるよりはましだしね」


「もう、使徒は増やせませんね」


「そうかも。でも、私もそう思って洗脳しない方向に切り替えて希望者達を説得することにしたらまた自殺者が出たの」


「・・・・」


「何が正解なのかしら」


「・・・・」


「実はね、酷い女と思われるかもしれないけれど、使徒に子供を産ませて出生率を上げる事も考えてたのよ。ウエアルは農業が主産業だから人手は要るの。余りにも多くの女性が使徒になって今後子供が減るかもしれない。バランスを取るには出産してもらうのが近道。でもこれじゃあね」


「愛情を持たない母親では悪手ですね」


「そうね」


「やはりキリさんも?」


「そもそもキリの意見よ。それとね、キリに聞いてみたの。もし、違う人生を生きてたら、洗脳されてなかったらヤシチを好きになる?って」


「そんなこと聞いたんですか!」


「答えはNO。かつての自分の好みとはかけ離れてるって。絶対好きにならなかったって」


「ああ・・・・」


「でもね」


「でも?」




「今ならいくらでもヤシチとセックスしても構わないって。何も感じないしなんとも思わないから」


「ああ・・・・なんていうか・・・・」



 なんという皮肉。





「あっ」


「なんです?」


「コユキ姉様から伝言よ」

 どうやらコユキから神子経由で連絡が入ったようだ。



「コユキ姉様、新しいバイク頂戴って」

 何台目だよ・・・・

 また壊したのか。一昨日もラララと車1台で来て、俺が新車のバイク出して乗って帰ったとこだぞ?


「コユキ、一体何やってんだか」

「直接聞いたら?」


「すまない、ちょっとオーリンに行ってくるよ」

「こっちは大丈夫だから」


「すまない」




ーーーーーーーーー





 そうして俺は久し振りにオーリンのリリイ村に。

 なんだかすっごく久し振りに帰って来た。

 ラーメン屋は変わってないけれど、その回りに新たに宿が出来て、既にコユキの門下生が合宿してる。


「随分人が増えたな」


「あ、ユキオ!」

「ガガガ、久し振り。調子はどうだ?」

「村は順調だぞ。ラーメン屋は四日に一日営業でうまく行ってるし、畑も順調だ。ニンニクの生産が間に合わん」

「足りなかったら出すから」

「有り難う。まあ出来るだけ地場産でやりたいからな。でも足りなくなったら頼む」


「ああ。ところでコユキは?」

「朝、鬼退治依頼来てで飛んでったぞ」

「そうか。新しいバイクくれって言われたんだが。この間も出したばっかりなのに。なんか知ってるか?」


「あー。ちょっと来てくれ」


 ガガガに連れられて村はずれの空き地に向かう。山の方ではなくて街道側。

 こっちは変な雑草が強いし、作物に病気が出やくすて使ってない空き地。



 そこに、土が盛られている。土の小山に道もついてる。

 かなーり高い。

 背丈より高い。


 そして、スコップや鍬と一緒に壊れたバイクがある。

 前輪が曲がってフォークも捻れてる。モトクロッサーって割りと丈夫な筈だけど?




「今な、コユキはバイクで後方宙返り(バックフリップ)の練習中なんだ。観光客に見せるんだってさ。今のところ成功率三割」



「・・・・」



「よく死なないよな」


「・・・・」


「今朝も鬼退治バイクで行ったしな。前足曲がったまんまで。車乗ればいいのに」


「どうやって!」


「前輪上げたまんま走ってったぞ、あいつ」



 マジですか・・・・



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