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サクラ姫と孤児

 農家組合との会議のあとは倉庫屋と運輸業者との会議。


 その都度神子に指導されながら力の使い方を訓練した。結果、今日会った人の中で旧ギルド派を3人発見することができた。

 その3人は今のところ泳がせることにしている。

 これから悪に走るか普通にしているかで彼等をどうするか決める。こちらに寝返ってくれればいいのだが。


 人の感情を見抜く力。

 これは物凄い力。


 しかし扱いが難しく、使うにあたり暗記項目が多く、僅かしかない神力をずんずん消費する。

 神子が言うには本来持っていない筈の神力を使えるようにして、じわじわ貯めることも出来るように私の身体を改造したという。だが、貯まるより消費の方が多いことがよくある。


 神力とは?

 よく分からない。


 でも、私にとっては未知の力で強力な武器。

 昔からの物語に出てくる『魔力』と同じなの?と神子に聞いたら全否定された。口振りからして神子は魔力が嫌いらしい。

 そもそも私は魔力と神力の違いが分からないのに。


 神子はあれをしろとか、これをしろとか言わない。

 ただ、力と使い方を私に与えただけ。今日使った力の他にも別の力の使い方も教わった。これは本当に使い方を良く考えないといけない。失敗したら身を滅ぼす。


 恐らくは神子はコユキ姉様にも何かを与える筈。

 そして、神子を産んだラララには最大の力が与えられる。それは一体なんだろう? 私ですらこれだけの力を与えられたというのに。


『貴方は何をしたいの?』

『君達を見て楽しみたいだけだよ。娯楽さ』


『私が犯罪をしても構わないの?』

『犯罪とは? 犯罪とは自分達の社会で都合の悪いことを犯罪と呼んでるだけだよ。立場が逆なら全て変わる』


『本当に私のやりたいようにやっていいのね?』

『構わない。それより、もたもたしていると何もしないうちにお婆ちゃんになっちゃうよ。人はあっという間に歳を取るからね。今は僕も人間だけどね』


 力の使い道に制約はない。


『じゃあ、私が◯◯を始めても構わないのね?』

『面白い。見させて貰うよ』


 神子はまさかの放置宣言。

 ()()()絶対反対されると思ったのに。

 ならば勝手にやらせてもらいます。



 私は側近のヤシチを呼ぶ。

 ヤシチは故ウエアルの側近だった人。故ウエアルの部下も部屋もそのまま私が引き継いだ、居なくなった者も居るが。


「ヤシチ。ウエアル奉行四名全員召集しなさい。その時に奉行には各地の孤児台帳を持ってこさせなさい」


 私を悩ませていた問題を片付け、先に進もう。



 ウエアルの孤児。


 かつてウエアルギルドのせいで大量の孤児が居る。


 ギルド員はあちこちで下半身の求めるがままに婦女暴行をして、この町には孤児が溢れかえっている。しかもギルドは街をどんどん不景気に向かわせる。生活に困った女性や借金漬けの女性ををどんどん娼館に放り込んだ。そんな彼女らに子育ては無理だ。


 マトモな人に拾われた孤児はいい。マトモな孤児院に入れた子もまあいい。問題はギルド直営の孤児院やスラム暮らしの子。その子らは既に町人とは違う価値観と倫理観を持っている。

 ギルド直営の孤児院の子はギルドの価値観を徹底的に植え付けられていている。男の子は将来のギルド員として育てられ、女の子は娼婦やギルド館員に育てられる。

 そしてスラムの子は泥棒と戦闘で生き延びるのが当然な生き方をしてきた。

 欲しければ奪う。対価を渡すという発想はないし、理解できない。人を殴って何故悪いと思ってるくらいだ。

 そしてそれをどんなに時間をかけて説明しても不思議がっているだけで理解できない。


 この子らはもう町では暮らせない。今のところ孤児でありながら、まるで罪人のように施設に閉じ込められている。



『いっそ処分するか?』


 そういう案も有った。

 しかし、彼等も被害者と言えば被害者。しかも子供だ。


 殺したくはない。

 ならばやれることをやってしまおう。そのためならば悪魔にでもなろう。



「サクラ様。一体何を?」

「ヤシチ。部下が欲しいと言ってたわよね。信頼出来る部下が」


 そう。

 ウエアルは今人手不足で、公務員も人手不足。有能無能問わずに人が欲しい。だけれども、かつてギルドの配下同然だった公務員はイメージが悪くて新人が来ない。給料が安いのもあるのだけれど。


「え、ええ」

「うまくいけば大量に手にはいるわよ」


 そう。

 孤児を使()()のだ。





『へえ。本当にやるんだ』

『ええ。教えてくれたのは貴方じゃない。私はこの力を使うわ』

『見させて貰うよ』

『ひと芝居しなきゃね。衣装も要るわね』

『衣装ならユキオに用意させればいい。遠慮は要らない』

『ユキオ様に?』

『呼んであげよう』

『お願いします』





 私は教祖になる。


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